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最終決戦 - 指導者との対峙 運命の螺旋、父と子の宿命


アヤが起動させた『装置』から放たれた眩い光は、翔たちを包み込み、一瞬にして彼らの姿を掻き消した。次に彼らが目を開けた時、そこは先ほどまでの母親の研究室ではなかった。


「ここがクロノスの本拠地」


翔は周囲を見回しながら呟いた。そこは、巨大な金属の壁に囲まれた無機質な空間だった。天井は遥か高く、所々に設置された人工照明が冷たい光を放っている。


「まるで、巨大な要塞の中みたいね」


アヤは緊張した面持ちで言った。


「気をつけて。敵がどこから現れてもおかしくないわ」


エレーヌは周囲を警戒しながら、静かに、しかし力強く言った。


「ピィ」


プチも不安げな鳴き声を上げ、アヤの足元にぴったりと寄り添った。


「よし、行くぞ!」


翔は光の剣を構え、仲間たちに声をかけた。その声には、決意と覚悟が込められていた。

彼らは慎重に歩みを進めた。しかし、その静寂はすぐに破られた。


「! 敵襲だ!」


翔が叫んだ瞬間、前方から無数のクロノス兵が姿を現した。彼らは重武装で身を固め、一斉に翔たちに攻撃を仕掛けてきた。


「くっ!」


翔は光の剣を振るい、敵の攻撃を弾き返す。


「アヤ!後ろ!」


エレーヌが叫び、アヤの背後から襲いかかろうとしていたクロノス兵を、素早い回し蹴りで撃退した。


「ありがとう、エレーヌさん!」


アヤはエレーヌに感謝の言葉を告げ、『魂の笛』を構えた。


「ピィ!」


プチも小さな体を震わせながら、敵に威嚇の鳴き声を上げた。

しかし、敵の数は圧倒的だった。翔たちは徐々に追い詰められていく。

その時だった。


「翔!アヤ!」


どこからか、リョウの声が響いた。


「リョウさん!?」


翔は声のする方を見た。そこには、リョウを先頭に、レジスタンスのメンバーたちが突入してくる姿があった。


「無事だったか!」


リョウは翔たちに駆け寄り、安堵の表情を浮かべた。


「ああ!それより、リョウさん、これは?」


翔は周囲を見回しながら尋ねた。


「俺たちは地上部隊だ!お前たちの突入を支援するために、陽動攻撃を仕掛けている!」


リョウはそう言うと、手にしていた大型ライフルを構え、敵に向かって発砲した。


「よし、これで少しは楽になったな!」


ケンタも軽快な身のこなしで敵を倒しながら、翔たちに合流した。


「ありがとう、リョウさん、ケンタ!」


アヤは二人に感謝の言葉を述べた。


「礼を言うのはまだ早い!敵はまだいくらでもいるぞ!」


リョウはそう言うと、再び戦闘に戻った。


「俺たちも行くぞ!」


翔は光の剣を力強く握りしめ、仲間たちに声をかけた。


「ええ!」


アヤとエレーヌも力強く頷いた。


「ピィ!」


プチも小さく鳴き声を上げ、戦闘態勢に入った。

翔たちはレジスタンスと合流し、再び、クロノスの精鋭部隊と激しい戦いを繰り広げた。


「はああああ!」


翔は光の剣を自在に操り、敵を次々と斬り伏せていく。その太刀筋は、以前よりもさらに鋭く、力強くなっていた。


「翔!こっち!」


アヤが叫び、翔に『魂の笛』を高く掲げた。その笛の音に呼応するように、どこからか恐竜たちの咆哮が聞こえてきた。


「恐竜たちが来てくれたのね!」


アヤは微笑みを浮かべ、さらに力強く笛を吹き鳴らした。

すると、壁を突き破り、巨大なティラノサウルスが突進してきた。その雄叫びは要塞全体を揺るがし、クロノス兵たちを恐怖に陥れた。


「今だ!皆、続け!」


リョウの号令の下、レジスタンスのメンバーたちと恐竜たちが一斉に突撃を開始した。


「うおおおおお!」


「負けるな!」


「未来を掴むんだ!」


レジスタンスのメンバーたちは雄叫びを上げ、クロノス兵に襲いかかる。


「すごい!」


エレーヌは、その光景に圧倒され、思わず感嘆の声を上げた。


「ピィ!ピィ!」


プチも目を輝かせ、興奮気味に鳴き声を上げた。

しかし、クロノスの戦力も侮れなかった。彼らは最新鋭の兵器を駆使し、レジスタンスと恐竜たちに反撃を開始した。


「くっ!奴ら、まだこんな兵器を!」


リョウは苦々しい表情で吐き捨てた。


「負けるな!希望を捨てずに戦い続けろ!」


翔は光の剣を振るいながら、仲間たちを鼓舞した。


「翔!アヤ!先を急げ!」


リョウは翔たちに叫んだ。


「ここは俺たちに任せろ!お前たちは指導者を倒すんだ!」


「でも!」


翔はリョウたちをこの場に残していくことに、躊躇を覚えた。


「早く行け!俺たちを信じろ!」


リョウは力強く言った。その瞳には、翔たちへの深い信頼と、未来への希望が宿っていた。


「わかった!必ず戻ってくる!」


翔はリョウの想いを受け止め、力強く頷いた。


「アヤ、エレーヌ、プチ、行くぞ!」


翔は仲間たちに声をかけ、先へ進もうとした。


「翔!アヤ!」


リョウは最後に二人を呼び止めた。


「クロノスの指導者に気をつけろ。奴は時間操作の能力を持っている。並大抵の攻撃では通じない」


「ああ、わかってる」


翔はリョウの忠告に力強く頷いた。


「アヤ、お前の力が鍵だ。恐竜たちと心を一つに」


リョウはアヤに視線を向け、静かに、しかし力強く言った。


「はい!必ず!」


アヤは決意を込めて頷いた。


「頼んだぞ!未来を!」


リョウはそう言うと、再び戦場へと身を投じた。


「行きましょう!」


アヤは翔、エレーヌ、プチを促し、先へ進んだ。

激しい戦闘の音が遠ざかっていく。しかし、彼らの心はまだ熱く燃えていた。

翔、アヤ、エレーヌ、そしてプチの四人は、レジスタンスたちの壮絶な援護を受けながら、ついにクロノスの本拠地である空中要塞の最深部へと辿り着いた。そこに待っていたのは、漆黒のローブを纏い、仮面で顔を覆い隠したクロノスの指導者……翔の父親と目される人物だった。


「よくぞここまで辿り着いたな、タイムトラベラーども」


指導者の声が部屋全体に響き渡る。その声は、どこか人工的で冷たく、感情を一切感じさせない。しかし、その声には微かな歪みが混じっているようにも聞こえた。


「お前が、クロノスの指導者だな!」


翔は光の剣を構え、指導者に対峙した。その瞳には、強い決意と同時に、父親かもしれない人物と戦わなければならない葛藤の色が浮かんでいた。


「『プロジェクト・ニューエデン』の真の目的を教えろ!」


アヤが指導者に問いかける。その声には、強い怒りと未来を救いたいという切実な願いが込められていた。


「真の目的、だと?愚かな。私にそのような下らない質問を、するとは」


指導者は嘲笑うかのように、鼻で笑った。


「私は救世主だ。この腐敗し、歪みきった世界を破壊し、新たなる理想の世界を創造する。それが、『プロジェクト・ニューエデン』だ」


指導者の口から語られたのは、狂気に満ちた理想だった。


「世界を破壊するだと?それが救世主のすることか!」


翔は怒りに身を震わせ、叫んだ。


「破壊なくして創造はあり得ない。古き世界を滅ぼし、新たなる世界を築き上げるのだ。そのために、多少の犠牲は必要不可欠」


指導者は冷酷なまでに言い放った。


「犠牲だと?恐竜たちを絶滅させることも、必要な犠牲だと言うのか!?」


アヤは指導者の言葉に、激しい怒りを覚えた。


「そうだ。あの愚かな生物たちは、新世界には不要。それともお前は、過去の恐竜たちへの贖罪のために、私に逆らうというのかね?」


指導者はアヤを挑発するように言った。その言葉は、アヤの心の奥深くに突き刺さった。


「私は」


アヤは言葉を詰まらせた。彼女の脳裏に、恐竜使いたちの悲痛な叫びが蘇る。


「裏切り者!」


「お前のせいで!」


彼らの怒りと憎しみに満ちた言葉が、アヤの心を締め付ける。


「アヤ、負けるな!奴の言葉に惑わされるな!」


翔がアヤを励ますように叫んだ。


「ええ。でも、私は償わなければならない」


アヤは苦しげな表情を浮かべながら言った。


「償いだと?そのようなものは必要ない!」


指導者はアヤの言葉を遮るように言った。


「お前は私の理想を理解できるはずだ。さあ、私と共に来るのだ。新たなる世界を共に創造しようではないか」


指導者はそう言うと、アヤに向かって手を差し伸べた。その手は、まるで悪魔の誘惑のように、アヤを闇へと誘っていた。


「アヤ!」


翔はアヤを心配そうに見つめた。アヤは今にも指導者の誘惑に負けてしまいそうな危うさを秘めていた。


「私は」


アヤは指導者の差し出された手を見つめ、迷いを見せた。

その時だった。


「ピィ!ピィ!」


プチがアヤの服の裾を引っ張り、必死に何かを訴えかけるように鳴き声を上げた。


「プチ?」


アヤはプチの様子にハッとし、我に返った。


「そうね。私は迷っている場合じゃない」


アヤはプチを優しく抱きしめ、決意を新たに言った。


「私は恐竜たちを、そして未来を守る!そのために、あなたと戦う!」


アヤは指導者に対してきっぱりと、言い放った。その瞳には、もう迷いはなかった。


「愚かな。ならば仕方ない」


指導者はアヤの拒絶に小さく呟き、ゆっくりと戦闘態勢に入った。


「お前たちには、ここで消えてもらう!」


指導者はそう言うと、両手を大きく広げた。すると、彼の周囲の空間が激しく歪み始めた。


「! 時間操作!」


翔は指導者の能力に気づき、警戒を強めた。


「来るぞ!」


翔が叫んだ瞬間、指導者は超高速で移動し、翔に攻撃を仕掛けた。


「ぐっ!」


翔は咄嗟に光の剣で攻撃を受け止めた。しかし、その衝撃は凄まじく、翔の体は大きく吹き飛ばされた。


「翔!」


アヤが翔の名を叫び、駆け寄ろうとした。しかし、その前に指導者が立ちはだかった。


「お前の相手は私だ」


指導者はアヤを冷たく見下ろし、言った。


「くっ!」


アヤは『魂の笛』を構え、指導者に対峙した。


「プチ!エレーヌさんを!」


アヤはプチに指示を出し、エレーヌの元へ向かわせた。


「ピィ!」


プチは小さく鳴き声を上げ、エレーヌの元へ駆け出した。


「さあ、アヤ。お前の力、見せてみろ!」


指導者はアヤを挑発するように言った。


「望むところよ!」


アヤは決意を込め、『魂の笛』を力強く吹き鳴らした。

すると、どこからか恐竜たちの咆哮が聞こえてきた。


「!?」


指導者はその咆哮に、一瞬、驚きの表情を見せた。


「まさか、この要塞に!?」


次の瞬間、壁を突き破り、巨大なティラノサウルスが突進してきた。そして、それに続くように、プテラノドン、ヴェロキラプトル、トリケラトプス、次々と恐竜たちが姿を現した。


「アヤ!お前!」


指導者はアヤの力に驚愕し、目を見開いた。


「言ったはずよ!私は恐竜たち、そして未来を守るために戦うと!」


アヤは力強く宣言し、『魂の笛』をさらに激しく吹き鳴らした。

恐竜たちはアヤの笛の音に導かれ、指導者に一斉に襲いかかった。


「ぐっ!おのれ!」


指導者は恐竜たちの猛攻に、さすがにたじろいだ。しかし、すぐに体勢を立て直し、時間操作能力を発動させた。


「時間よ、歪め!」


指導者が叫ぶと、周囲の時間が歪み始め、恐竜たちの動きがスローモーションのように遅くなった。


「! 時間操作!」


アヤは指導者の能力に、危機感を覚えた。


「だが、この程度では私を止めることはできんぞ!」


指導者は余裕の表情を浮かべ、アヤに接近してきた。


「くっ!」


アヤは『魂の笛』をさらに力強く吹き鳴らし、恐竜たちを援護しようとした。しかし、時間操作の影響下では、その効果も限定的だった。


「はあああ!」


その時、翔が光の剣を手に指導者に斬りかかった。


「!?」


指導者は咄嗟に身をかわし、翔の攻撃を回避した。


「邪魔をするな!」


指導者は翔に向かって、強烈なエネルギー波を放った。


「ぐあああ!」


翔はエネルギー波を直撃し、吹き飛ばされた。


「翔!」


アヤは翔の危機に悲鳴を上げた。


「無駄だ。時間操作の前では全てが無力」


指導者は冷酷な笑みを浮かべ、アヤに再び攻撃を仕掛けようとした。

その時だった。


「翔!しっかりして!」


エレーヌが、翔を抱き起こしながら叫んだ。


「エレーヌさん」


翔は意識が朦朧とする中、エレーヌの声に反応した。


「アヤを助けて」


エレーヌは翔に懇願するように言った。


「ああ、わかってる」


翔はエレーヌの言葉に力強く頷き、再び立ち上がった。その瞳には、強い決意の光が宿っていた。


「まだ諦めんか。ならば!」


指導者は翔に向かって、再び時間操作能力を発動させようとした。

しかし、その時、指導者の動きが一瞬止まった。


「!?」


指導者は驚きの表情を見せた。


「何だ!?この感覚は!?」


指導者の周囲の空間が、微かに揺らぎ始めた。


「今だ!翔!」


アヤが叫んだ。エレーヌの歌声が時間軸に干渉し、指導者の時間操作能力を一時的に弱めているのだ。


「はあああ!」


翔はその一瞬の隙を逃さず、光の剣を力強く振りかぶった。


「光の剣!真の力!今こそ!」


翔の全身から眩い光が溢れ出し、光の剣に集まっていく。そして、その光はやがて一つの巨大な光の刃となり、指導者に向かって解き放たれた。


「ぐああああ!」


指導者は光の刃を直撃し、悲鳴を上げた。その仮面が弾け飛び、素顔が露わになる。


「!?」


翔とアヤは、その素顔を見て息を呑んだ。そこにあったのは紛れもなく


「父さん」


翔は力なく呟いた。その声は、深い悲しみと絶望に満ちていた。




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