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クロノスの罠 - 絶望の淵、差し迫る刻限



作戦会議を終え、それぞれの役割を確認した翔たち。しかし、彼らに残された猶予はほとんどなかった。突如、地響きのような轟音が辺り一帯を揺るがす。振動は足元から這い上がり、彼らの体全体を貫いた。


「な、何だ……!?」


ケンタが驚きの声を上げ、外を指差す。その視線の先には、信じられない光景が広がっていた。


空を埋め尽くさんばかりの、クロノスの戦闘機が編隊を組み、こちらへ向かってきている。その数は、以前遭遇したどの部隊よりも多く、明らかに総攻撃を仕掛けてきていることが伺えた。漆黒の機体が太陽の光を鈍く反射し、威圧感を放つ。


「くそっ! もう動きを察知されたか!」


リョウは苦々しい表情で吐き捨て、歯ぎしりをした。


「皆、戦闘準備! 敵の狙いはおそらく時間稼ぎ! その間に『プロジェクト・ニューエデン』の最終準備を進めるつもりだ!」


リョウの指示が飛び、レジスタンスのメンバーたちは一斉に戦闘態勢に入る。緊張が一気に張り詰めた。


「翔、アヤ、エレーヌ、プチ! お前たちはここを頼む!」


リョウは翔たちに拠点防衛を託し、自らも愛用の大型ライフルを手に取り、最前線へと駆け出した。その背中は、決死の覚悟を物語る。


「ああ、任せろ!」


翔は力強く頷き、光の剣を構えた。剣身が青白い光を放ち、周囲を照らす。


「私たちも、できることを!」


アヤは決意を込め、『魂の笛』を手に取る。その手は微かに震えていた。


「エレーヌ、歌を!」


アヤはエレーヌに視線を送る。


「ええ、わかってる!」


エレーヌは静かに頷き、目を閉じた。


「ピッ、ピッ!」


プチは不安げな鳴き声を上げながらも、アヤの足元にぴったりと寄り添い、彼女を守るように身構えた。


次の瞬間、クロノスの戦闘機部隊がレジスタンスの拠点に攻撃を開始した。無数のレーザー光線が空を切り裂き、地上に降り注ぐ。爆発音が轟音となって大気を震わせ、砂塵が舞い上がる。


「うわあああ!」


「くっ! 持ち場を離れるな!」


レジスタンスのメンバーたちは必死に応戦するが、圧倒的な火力差に徐々に押され始めていた。


「このままじゃ、持たないピィ!」


プチが悲痛な叫び声を上げた。


「翔! 何とか奴らの注意を引きつけて!」


アヤは翔に叫んだ。彼女は『魂の笛』を奏で、恐竜たちとの交信を試みようとしていた。しかし、この激しい戦闘の最中では、精神を集中させることが難しい。


「わかった!」


翔は光の剣を手に取り、敵の戦闘機部隊へと突撃した。剣を振るたびに、青白い光の軌跡が宙を舞う。


「エレーヌ!」


アヤはエレーヌに呼びかける。


「ええ!」


エレーヌは深く息を吸い込み、そして、歌い始めた。その歌声は戦場の喧騒を切り裂き、希望の光のように響き渡る。それは、戦士たちを鼓舞し、絶望から救い出す、聖なる調べ。


エレーヌの歌声は徐々に力を増し、周囲の空間に不思議な影響を及ぼし始める。


「何だ? この歌は!?」


クロノスの戦闘機のパイロットたちは、エレーヌの歌声に戸惑いを隠せない。


「機体に異常発生! 制御が!」


戦闘機の一機がふらつき始め、やがてバランスを崩し、地上へと墜落していった。爆発の炎が黒煙を上げて立ち上る。


「エレーヌの歌が時間軸に!?」


アヤはその光景に目を見張った。マックスが言っていた通り、エレーヌの歌声は時間軸に影響を与える力を持っているのだ。


「すごい! エレーヌさん!」


翔もエレーヌの歌声の力に驚愕する。


エレーヌはさらに力強く歌い続ける。その歌声は戦場に響き渡り、レジスタンスのメンバーたちを勇気づけ、そしてクロノスの兵士たちを混乱させていく。


しかし、クロノスの戦力は圧倒的だった。エレーヌの歌声だけでは、戦況を覆すまでには至らない。


「くそっ! どうすれば!」


翔は光の剣を振るいながら、焦りを募らせていた。


その時、アヤが叫んだ。


「翔! 恐竜たちを! 恐竜たちを呼んで!」


「恐竜たちを!?」


翔はアヤの言葉に一瞬戸惑った。しかし、すぐにその意図を理解した。


「そうか! アヤ、お前!」


翔はアヤの覚悟を感じ取り、力強く頷く。


アヤは『魂の笛』を力強く吹き鳴らした。その音色はエレーヌの歌声と共鳴し、さらに力強く戦場に響き渡った。


すると、遠くから地響きのような音が聞こえてきた。


レジスタンスのメンバーたちも、クロノスの兵士たちも、その音に気づき動きを止める。


そして、次の瞬間、地平線の彼方から巨大な恐竜たちの群れが姿を現した。


ティラノサウルス、トリケラトプス、ステゴサウルス、ブラキオサウルス……。


様々な種類の恐竜たちが、アヤの笛の音に導かれ、戦場へと突進してくる。


「恐竜たちが!?」


リョウはその光景に驚愕の声を上げた。


「アヤが呼んだのか!?」


ケンタも目を丸くしてアヤを見つめる。


恐竜たちはクロノスの戦闘機に果敢に攻撃を仕掛けていく。ティラノサウルスが巨大な顎で戦闘機を噛み砕き、トリケラトプスがその巨大な角で敵を薙ぎ払う。


「今だ! 皆、反撃開始!」


リョウは恐竜たちの出現に好機を見出し、レジスタンスのメンバーたちに指示を出した。


レジスタンスのメンバーたちは再び士気を取り戻し、クロノスの部隊に反撃を開始した。


「アヤ! すごい!」


翔はアヤの活躍に感嘆の声を上げた。


「まだよ! これから!」


アヤは息を切らしながらも、力強く言った。その瞳には強い決意の光が宿る。


しかしその時、アヤはふと気づいた。空の様子がおかしいことに。


「空が……歪んで……」


アヤが見上げた空は、まるで巨大な渦のように歪み始めていた。不気味な光が空を覆い、地上に不穏な影を落とす。


「まさか、これが!?」


アヤの脳裏にマックスの言葉が蘇る。


『クロノス……『プロジェクト・ニューエデン』……最終段階……移行……』


「時間がない、急がないと!」


アヤは焦りを感じながらも、『魂の笛』をさらに力強く吹き鳴らした。


恐竜たちはアヤの笛の音に導かれ、さらに激しく戦う。しかし、クロノスの戦力もまた強大だった。


戦いはさらに激しさを増し、戦場は混沌と化していく。硝煙と土埃が舞い上がり、視界を奪う。怒号と悲鳴が戦場に木霊する。果たして、この戦いの先に希望の光は見出せるのだろうか。

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