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テディベアが時空を超える時  作者: Gにゃん
白亜紀の真実編
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指導者の影 - 拭えぬ既視感、未来への不安


アヤは深く瞑想状態に入り、自身の記憶の奥底を探っていた。母親の真意、そして「プロジェクト・ニューエデン」の謎を解く鍵……。それらは全て、彼女の失われた記憶の中に隠されているはずだ。


「もう少し……もう少しで、思い出せる……」


アヤは心の中で自分自身に言い聞かせるように呟いた。彼女の額にはうっすらと汗が滲み、その表情は真剣そのものだった。


すると、アヤの脳裏に再び、あの薄暗い空間での母親とクロノスの指導者とのやり取りの光景が浮かび上がってきた。


『これで、契約は成立だな』


指導者の声がアヤの脳内に響く。その声はどこか人工的で、感情が読み取れない。


『ええ、約束は守るわ』


母親は、決然とした表情で答える。その瞳には強い決意と、同時に深い悲しみの色が宿っていた。


(この声……どこかで……)


アヤは指導者の声に微かな既視感を覚えた。しかし、それが誰の声なのか、どうしても思い出せない。


(もっと……はっきりと……)


アヤはさらに深く、記憶の奥底へと潜っていこうとした。


すると、不意に指導者の姿が大きくクローズアップされた。その顔はまだ闇に包まれており、はっきりとは見えない。しかし、そのシルエット、そして、その纏う雰囲気に、アヤは強烈な既視感を覚えた。


(この人……私は、この人を知っている……!……だけど、誰……!?)


アヤは必死に記憶を手繰り寄せようとした。しかし、その記憶はまるで霞のように掴みどころがなく、彼女の指の間をすり抜けていく。


「うっ……!」


アヤは突然頭に激しい痛みを感じ、思わず声を上げた。


「アヤ! 大丈夫か!?」


翔がアヤの異変に気づき、彼女の肩を支えながら声をかけた。


「だ、大丈夫。でも……もう少しで何かが……」


アヤは額に汗を浮かべ、苦しげな表情で答えた。


「無理はするな! ゆっくりでいいんだ!」


翔はアヤを心配そうに見つめながら言った。


「ううん。今、思い出さないと!」


アヤは首を横に振り、再び目を閉じた。彼女はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。


アヤの脳裏に、再び指導者の姿が浮かび上がる。今度は先ほどよりも少しだけ鮮明にその姿が捉えられている。


(この立ち姿……この声……)


アヤはその指導者の姿を、必死に記憶に焼き付けようとした。


そして、その瞬間だった。


アヤの脳裏に、まるで稲妻のような衝撃が走った。


「まさか!?」


アヤは目を見開き、驚愕の声を上げた。


「どうしたんだ、アヤ!? 何が見えた!?」


翔がアヤに詰め寄り、その答えを待った。


「クロノスの……指導者……。あの人は……」


アヤは震える声で言葉を紡いだ。その瞳には恐怖と絶望の色が浮かんでいた。


「未来で……私たちの……」


アヤはそこで言葉を詰まらせた。その先を口にすることがどうしてもできなかった。


「私たちと、どう関わっているんだ!? 教えてくれ、アヤ!」


翔はアヤの肩を強く揺さぶり、答えを迫った。


「私たちの……敵……」


アヤは絞り出すような声で、ようやくそう答えた。


「敵!? どういうことだ!?」


翔はアヤの言葉に、混乱を隠せない。


「まだ……はっきりとは……思い出せない……。でも……確かに……あの人は……私たちの……敵……」


アヤは断片的に蘇る記憶を繋ぎ合わせようと、必死に言葉を続けた。


「私……思い出した。あの人を見たことがある」


「どこで!?」


「未来……私たちのいた研究所……」


「研究所!? まさか!?」


翔はアヤの言葉にハッとした。そして、彼の脳裏にある人物の顔が浮かび上がった。


「そんな……嘘だろ……!?」


翔は信じられないといった表情で、首を横に振った。


「翔……? どうしたの?」


アヤは翔のただならぬ様子に不安を覚えた。


「いや……まさか……そんなはずは……」


翔は混乱した様子で、言葉を濁した。


「ピィ……? ピィ……?」


プチも何が起こったのか理解できず、不安そうに鳴き声を上げた。


エレーヌは何も言わず、ただ静かに二人を見守っていた。彼女の瞳には深い憂慮の色が浮かんでいた。


アヤは翔の様子から、何かただならぬ真実が隠されていることを感じ取った。


「翔……教えて。一体何が……」


アヤは翔の目をまっすぐに見つめ、真実を告げるよう促した。


翔はしばらく葛藤していたが、やがて観念したように重い口を開いた。


「クロノスの指導者……。その正体は……」


翔はそこで言葉を切り、深く息を吸い込んだ。


「俺たちの……いや、俺の……」


そして、彼は意を決して、その衝撃の真実を告げた。


「俺の父親……なのかもしれない」


その言葉は、まるで重い鉛のようにその場に沈み込んだ。


アヤ、エレーヌ、そしてプチ……。その場にいた全ての者が言葉を失った。


静寂が辺りを支配する。その静寂を破ったのは、遠くで響く恐竜たちの鳴き声だけだった。

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