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テディベアが時空を超える時  作者: Gにゃん
白亜紀の真実編
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アヤの覚醒 - 愛が奏でる、共鳴の旋律



『古代植物』との共鳴を始めたマックス。しかし、その儀式は、クロノスの『観測者』によって中断されようとしていた。3機の観測者は、古代植物とマックスを破壊すべく、祭壇へと接近していく。無機質な金属の足が、聖域の静寂を冷酷に踏みにじる。


翔とエレーヌ、そしてプチは、観測者の攻撃を阻止しようと必死に立ち向かう。しかし、相手はクロノスの最新鋭の兵器。生身の人間が敵う相手ではなかった。


翔は金属棒を巧みに操り、観測者の攻撃を弾き返す。しかし、観測者から放たれる高出力のエネルギー波は、彼の金属棒を徐々に蝕んでいく。金属が軋む音が、翔の焦りを増幅させる。


エレーヌは得意の格闘術で観測者に接近戦を挑む。しかし、観測者の装甲は硬く、彼女の攻撃は有効打とはならない。蹴り、打撃を加えるたびに、硬質な装甲に反発され、エレーヌの拳や足に痛みが走る。


プチは小さな体を活かし、観測者の周囲を素早く動き回り、かく乱する。しかし、観測者のセンサーは非常に高性能であり、プチの動きを正確に捉えていた。その小さな体では、攻撃を回避するだけで精一杯だった。


「くそっ……!このままじゃ……!」


翔は追い詰められ、焦りを感じていた。このままでは儀式は中断され、マックスは破壊されてしまう。額から流れる汗が、目に入って沁みる。


その時、アヤの奏でる『魂の笛』の音色が変化した。それまでどこかおぼつかなかった旋律が、徐々に力強さを増し、一つの明確な意志を持ち始めたように感じられた。それは、まるで荒野に咲く一輪の花のように、過酷な状況の中でこそ、その真価を発揮するような、力強い旋律。


「アヤ……?」


翔はアヤの変化に気づき、彼女の方へ目を向けた。アヤは目を閉じ、一心不乱に笛を吹き続けている。その表情は苦しげだが、同時に、強い決意に満ち溢れていた。


「恐竜たちを……救いたい……」


アヤは心の中で強く念じていた。恐竜たちが自由に生きられる世界を取り戻したい。その強い想いが、彼女の内なる力を呼び覚まそうとしていた。失われた記憶の彼方から、何かが湧き上がってくるような感覚があった。


「お願い……!私に、力を……!」


アヤの願いは音色となって『魂の笛』から放たれる。その音色は洞窟全体に響き渡り、まるで空間そのものを震わせているかのようだった。それは、彼女の心の叫びであり、魂の旋律。


すると、『古代植物』がアヤの音色に呼応するように、さらに激しく脈打ち、光を放ち始めた。その光はアヤを包み込み、彼女の体全体を淡い光で覆っていく。光はまるで、彼女の内なるエネルギーが可視化されたかのようだった。


「これは……!」


翔はその光景に目を見張った。アヤの体から溢れ出るエネルギーは、明らかに今までとは違っていた。それは、生命の輝き、希望の光。


「ピィ……!」


プチもアヤの変化に気づき、驚きの声を上げた。その小さな瞳には、驚愕と希望の光が映っている。


次の瞬間、アヤの体から眩い光が放たれ、洞窟全体を白く染め上げた。


「うわあああ!」


観測者たちが苦しげな電子音を上げ、怯んだように動きを止めた。その光は、彼らの機能を一時的に麻痺させているようだった。


光が収まると、そこには先ほどとは別人のように、神々しい雰囲気を纏ったアヤの姿があった。その瞳には強い意志と優しさが宿っている。そして、彼女の手には『魂の笛』がしっかりと握られていた。その姿は、まるで戦士と巫女の両方の側面を併せ持っているかのようだ。


「私……できる……!」


アヤは力強く呟いた。その声には確かな自信が満ち溢れていた。もう、迷いはなかった。


アヤは『魂の笛』を再び唇に当て、ゆっくりと息を吹き込んだ。


すると、今度は先ほどとは比べ物にならないほど力強い音色が洞窟内に響き渡った。その音色はまるで生き物のように空間を駆け巡り、やがて洞窟の外で機能を停止させていた恐竜たちへと届いた。


「グルルル……」


ティラノサウルスがゆっくりと身を起こした。その瞳には、先ほどまでの虚ろな光はなく、確かな意志の光が宿っている。野生の王者の威厳が戻ってきた。


「ガァァァ……」


プテラノドン、ヴェロキラプトル、コンプソグナトゥス……次々と恐竜たちが目を覚まし、立ち上がった。彼らはアヤの奏でる笛の音色に導かれるように、ゆっくりと洞窟内へと入ってきた。


「来てくれたのね……!」


アヤは恐竜たちを見つめ、優しく微笑みかけた。恐竜たちもまた、アヤを見つめ、友好的な唸り声を上げている。


「すごい……!アヤが、恐竜たちと……!」


翔はその光景に驚きを隠せない。アヤは本当に恐竜たちと心を通わせることに成功したのだ。


「ピィ……!アヤ姉ちゃん、すごいピィ……!」


プチも目を輝かせながらアヤを見つめている。


「さあ、みんな……!力を貸して……!」


アヤは恐竜たちに呼びかけた。その声には優しさと同時に、強いリーダーシップが感じられた。


恐竜たちはアヤの言葉に応えるように、一斉に咆哮を上げた。その咆哮は洞窟全体を揺るがし、まるで大地の怒りのように響き渡った。


「行くわよ……!」


アヤは『魂の笛』を高く掲げ、観測者を指差した。その姿は、まさに戦士のようだった。


恐竜たちはアヤの指示に従い、一斉に観測者へ襲いかかった。


ティラノサウルスがその巨大な顎で観測者に噛みつき、プテラノドンが鋭い爪で空から攻撃を仕掛ける。ヴェロキラプトルとコンプソグナトゥスは、地上から観測者の足を狙い、その動きを封じ込めようとする。


アヤは『魂の笛』を奏で続けながら、恐竜たちを巧みに指揮していく。その姿は、まるでオーケストラの指揮者のようだった。


「負けるな……!みんな……!」


翔も金属棒を手に取り、恐竜たちと共に戦う。


エレーヌも得意の格闘術で観測者に立ち向かう。


プチも小さな体を活かし、観測者の攻撃をかわしながら果敢に攻撃を仕掛けていく。


「ピィ……!ピィ……!」


プチの攻撃は観測者にとって大きなダメージにはならないが、その勇敢な姿は翔たちの士気を高めるのに十分だった。


アヤと恐竜たちの見事な連携により、観測者は徐々に追い詰められていく。


「今だ……!ティラノサウルス……!」


アヤは『魂の笛』をさらに力強く吹き鳴らし、ティラノサウルスに指示を送った。


ティラノサウルスはアヤの指示に従い、大きく口を開け、観測者に噛みついた。そして、そのまま力強く頭を振り、観測者を地面に叩きつけた。


「やったか……!?」


翔は息を呑んでその様子を見守った。


しかし、観測者はまだ完全に機能を停止してはいなかった。彼らは再び立ち上がり、最後の力を振り絞って攻撃を仕掛けてくる。


「しつこい奴らね……!」


アヤは観測者のしぶとさに舌打ちをした。


しかし、その時、アヤはふと気づいた。恐竜たちを単に操るのではなく、彼らの意思を尊重し、共に戦うことの重要性に。


「みんな、もう無理はしないで……!あとは、私が……!」


アヤは恐竜たちに呼びかけ、自分一人で観測者に立ち向かうことを決意した。


「アヤ……!?」


翔はアヤの行動に驚き、制止しようとした。しかし、アヤは翔の制止を振り切り、観測者の前に進み出た。


「私はあなたたちを倒す……!だけど、それは恐竜たちの力を借りてじゃない……。私自身の力で……!」


アヤはそう言うと、『魂の笛』を力強く握りしめ、観測者に向かって走り出した。その手には、もう『魂の笛』は構えられていない。


その姿は、まるで恐竜たちと共に未来を切り開く、一人の戦士のようだった。


アヤと観測者の最後の戦いが、今まさに始まろうとしていた。

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