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テディベアが時空を超える時  作者: Gにゃん
白亜紀の真実編
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古の伝承 - 時間軸を揺るがす、神秘のエネルギー



アヤの決意に満ちた瞳を静かに見つめ、長老はゆっくりと頷いた。


「お前たちの行くべき道は決まったようだな」


長老の深く、どこか温かみのある声が静寂を切り裂いた。


「はい。私にできることがあるのなら……」


アヤは力強く答えた。その瞳にもう迷いの色はない。


「では、伝えよう。この地に古くから伝わる『古代植物』の真実を……」


そう言うと、長老はゆっくりと歩き出し、洞窟の奥へと翔たちを導いていった。


「『古代植物』……」


アヤはその言葉を反芻するように呟いた。どこか懐かしい響きが感じられる。しかし、記憶の扉は固く閉ざされたままで、その正体を思い出すことはできない。


洞窟の奥は、外の荒廃した世界とは打って変わって神秘的な雰囲気に包まれていた。壁面には見たこともない植物の壁画が描かれ、仄暗い空間の中で微かに光を放っている。


「ここは……?」


翔が周囲を見回しながら尋ねた。


「我々、恐竜使いの聖域。代々の長が『古代植物』の真実を受け継いできた場所だ」


長老は厳かな声で答えた。


「さあ、こちらへ」


長老は一同を洞窟の最奥部へと案内した。そこには、ひときわ大きな壁画が描かれており、その前には祭壇のようなものが設けられていた。


「この壁画に描かれているのが『古代植物』」


長老は壁画を指差しながら言った。壁画には巨大な花のような植物が描かれており、その周囲には様々な恐竜たちが集まっている様子が描かれていた。


「『古代植物』はこの時代の生態系を支える重要な存在だった。そして、それ以上に……時間軸に影響を与える特別なエネルギーを放出していたのだ」


「時間軸に影響を……?」


アヤは長老の言葉に息を呑んだ。時間軸に影響を与えるエネルギー……。それこそが、クロノスが狙っているものではないのか?


「そうだ。『古代植物』のエネルギーは、恐竜たちの進化にも大きく関わっていた。そして、そのエネルギーを制御することができれば、時間軸を操作することも不可能ではない」


「そんなことが……」


翔は衝撃を受けた。時間軸を操作する……。それは神の領域に踏み込む行為ではないのか?


「クロノスは『古代植物』のエネルギーを利用して『プロジェクト・ニューエデン』をさらに強化しようと画策している」


長老は苦渋に満ちた表情で言った。


「『プロジェクト・ニューエデン』……」


アヤは、その言葉を反芻した。クロノスが進める謎の計画……。その全貌はまだ明らかになっていないが、それが恐るべき陰謀であることは間違いない。


「そして、お前たち……いや、翔の母親、そして、アヤ……お前たちは、『古代植物』のエネルギーを完全に覚醒させる方法を知っていた」


長老の言葉に、翔とアヤは目を見開いた。


「母さんが?」

「私が?」


二人は同時に声を上げた。


「そうだ。お前たちは、『古代植物』のエネルギーを制御するための特別な儀式を知っていた。そして、その儀式には、アヤ、お前の恐竜と心を通わせる能力が必要不可欠だったのだ」


「私が持つ……能力……」


アヤは自分の手のひらを見つめた。恐竜と心を通わせる能力……。確かにその片鱗は感じたことがある。しかし、それを完全に使いこなすことができるのだろうか?


「しかし、儀式にはもう一つ、必要なものがある」


長老はそこで言葉を切り、翔の腕の中で休止状態にあるマックスを見つめた。


「マックスの未知のエネルギーだ」


「マックスが?」


翔はマックスを見つめながら言った。マックスのエネルギー……。それは時間制御能力のことだろうか?


「そうだ。マックスの持つ未知のエネルギー。それが『古代植物』のエネルギーと共鳴することで、儀式は完全なものとなる。しかし……」


長老はそこで言葉を詰まらせ、悲痛な表情を浮かべた。


「しかし……マックスは今……」


アヤは長老の言わんとすることを理解し、悲しげに言った。マックスは今、深い眠りについている。彼が再び目覚める保証はどこにもない。


「希望はまだある」


長老は静かに、しかし力強く言った。


「『古代植物』のエネルギーを直接マックスに注ぎ込むことができれば……あるいは……」


「『古代植物』のエネルギーを?」


翔は長老の言葉に一縷の望みを見出した。


「しかし、それは危険な賭けだ。『古代植物』のエネルギーは強大すぎる。下手をすれば、マックスは……」


長老はそこで言葉を切り、翔を見つめた。その瞳には深い憂慮の色が浮かんでいた。


「それでもやるしかない!マックスを、このままにはしておけない!」


翔は決意を込めて言った。マックスは大切な仲間だ。彼を救うためなら、どんな危険も厭わない。


「翔のお母上も同じことを言っていた。『あの子とマックスを信じる』と」


長老は遠い過去を思い出すように目を細めながら言った。


「母さんが……」


翔は母親の言葉に胸が締め付けられる思いだった。母親は自分とマックスを信じて未来を託してくれたのだ。


「長老、『古代植物』はどこに?」


アヤが長老に尋ねた。


「『古代植物』はこの洞窟のさらに奥深くに存在している。しかし、そこへ行くには試練を乗り越えなければならない」


長老は重々しく言った。その言葉には、これから翔たちが直面するであろう困難の大きさが示唆されていた。


「試練……?」


翔は不安を覚えた。


「そうだ。だが、お前たちならきっと乗り越えられる。そして、『古代植物』の真の力を目覚めさせることができるはずだ」


長老は静かに、しかし力強く言った。その瞳には翔たちへの深い信頼と、未来への希望の光が宿っていた。


翔とアヤは顔を見合わせ、力強く頷いた。彼らはまだ知らない。この先に待ち受ける試練がどれほど過酷なものであるかを。そして、その試練の先に隠された真実が、彼らの運命を大きく変えることになるということを。



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