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テディベアが時空を超える時  作者: Gにゃん
白亜紀の真実編
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忌まわしき技術 - 悔恨の涙、お母さんの愛、未来への誓い



長老の語りは、アヤにとって、あまりにも衝撃的なものだった。自分が遠い未来からこの時代へやってきたこと。恐竜たちを絶滅から救おうとしていたこと。そして、「古代植物」と呼ばれる神秘のエネルギーの存在……。


しかし、それらの真実は同時に、彼女にとって重い責任を突きつけるものでもあった。


「信じられない。そんな、大事なことを、忘れてしまうなんて」


アヤは頭を抱え、その場にしゃがみ込んだ。失われた記憶の中にこそ、真実が隠されている。しかし、それが永遠に失われたままであれば、全てが無意味になってしまう。


「無理もない。それほどの衝撃を受ければ、記憶を失うこともあるだろう」


長老はアヤの肩にそっと手を置き、優しく言った。


「でも、あなたは全てを思い出す必要がある。この時代を、そして未来を救うために」


「私に、そんなことが本当にできるのでしょうか?今の私には、自分が何者なのかさえ、わからないのに」


アヤは弱々しい声で言った。その瞳には深い不安と絶望の色が浮かんでいる。


「できるさ。お前の中には、まだ力が眠っている。それを目覚めさせるのだ」


長老は力強く言った。その言葉はアヤの心の奥底に静かに、しかし確実に響いた。


その時だった。


「長老、その技術は、私がもたらしたもの、なのですね?」


アヤはゆっくりと顔を上げ、長老に尋ねた。その声は微かに震えていた。「恐竜使い」の技術、恐竜と心を通わせ、操る技術、それが自分自身の研究成果である可能性に、アヤは気づいていたのだ。


長老はアヤの問いかけに、静かに頷いた。


「そうだ。お前は恐竜たちと心を通わせる独自の技術を開発した。そして、それを我々に教えてくれたのだ」


「私が」


アヤはその事実に大きな衝撃を受けた。自分が開発した技術、それが今はクロノスに悪用されている。


「でも、私は、そんな、悪用されるために技術を」


アヤは悔しさに唇を噛み締めた。


「違う!」


長老はアヤの言葉を遮るように言った。


「お前は恐竜たちを救うためにその技術を開発したのだ。そして、その技術は確かに恐竜たちとの絆を深める助けとなった」


長老の言葉に、恐竜使いたちも静かに頷いた。


「だが、クロノスはその技術を悪用し、恐竜たちを兵器として利用しようとしている」


長老は悔しそうに顔を歪めた。


「私が愚かだった。技術というものは、使う者によって善にも悪にもなる。それを見抜けなかった」


アヤは深く頭を垂れた。その瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。


「そんな、あなたのせいでは」


翔がアヤを慰めようと言葉をかける。


「いいえ、翔。これは私の責任。私がもっと慎重になるべきだった」


アヤは首を横に振り、涙を拭った。


「長老、一つ教えてください」


アヤは決意を込めた眼差しで長老を見つめた。


「翔のお母さん。彼女はなぜクロノスに協力しているのですか?」


アヤの問いかけに、長老は一瞬言葉を詰まらせた。しかし、すぐに静かに口を開いた。


「あの方は全てを犠牲にしてでも、守りたいものがあったのだ」


「守りたいもの?」


「あの方はよくこう言っていた。『全てはあの子と未来を救うため』だと」


長老は遠くを見つめるような目で言った。


「あの方はクロノスに協力することで、その目的を達成できると信じていた。そして、そのために自ら時間移動装置で過去へ向かったのだ」


「過去へ?」


アヤは長老の言葉に息を呑んだ。翔の母親は自らの意思で過去へ旅立った。その目的を果たすために。


「彼女は自分のなすべきことを理解している。そして、それを成し遂げるためにはどんな犠牲も厭わない。そういう女性だ」


長老の言葉に、アヤは翔の母親の強い意志と深い愛情を感じ取った。


「あの子って、もしかして」


アヤはそこでハッとした。翔の母親が言っていた「あの子」とは、翔のことではないだろうか?


「翔」


アヤは翔の顔を見つめた。翔もまた、母親の真意に気づき始めていた。


「母さんは、俺のために」


翔はそう呟くと、顔を伏せ、肩を震わせた。母親の深い愛情が彼の心を激しく揺さぶっていた。


アヤは翔の母親の想いを知り、自分のなすべきことを見つめ直した。彼女は恐竜たちを救うために未来からやってきた。そして、その想いは今も変わらない。


「長老、私にできることはありますか?」


アヤは決意を込めた眼差しで長老に尋ねた。


「お前の中にはまだ力が眠っている。それを目覚めさせることができれば」


長老は静かに、しかし力強く言った。


「私に、できるでしょうか?」


アヤは不安げに尋ねた。


「信じるのだ。己の力を。そして、恐竜たちへの愛を」


長老は優しく微笑みかけ、アヤの背中をそっと押した。


それは未来への希望を託す、優しい激励だった。そして、同時にアヤにとって新たなる戦いの始まりを告げるものでもあった。


アヤは深く息を吸い込み、ゆっくりと立ち上がった。その瞳にはもう迷いはなかった。彼女は失われた記憶を取り戻し、恐竜たちを、そして未来を救うために戦うことを決意したのだ。


その決意は、彼女の中で静かに、しかし確かに燃え上がる希望の炎となっていた。

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