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テディベアが時空を超える時  作者: Gにゃん
白亜紀の真実編
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長老の語り - 失われた真実、目覚める力、そして未来への希望



長老の言葉は、その場にいた全ての人々の心を揺さぶった。特に、アヤにとっては、自身の存在意義を根底から揺るがすような、衝撃的な言葉だった。


「私が、『恐竜博士』…?」


アヤは、長老の言葉を反芻するように呟いた。しかし、失われた記憶は依然として闇の中であり、その言葉の真意を理解することはできなかった。自分がそのように呼ばれていた過去があることすら想像できない。


「信じられないかもしれぬが、これが真実だ」


長老は静かに頷き、アヤの過去について語り始めた。


「お前は遠い未来からやってきた。この時代に、絶滅の危機が迫っていることを知り、それを回避するために」


長老の言葉に、アヤだけでなく、翔やエレーヌ、そして恐竜使いたちも息を呑んだ。


「恐竜絶滅を、回避…?」


翔は長老の言葉をオウム返しに尋ねた。


「そうだ。お前は優れた科学者であり、恐竜たちへの深い愛情を持つ、心優しき女性だった」


長老は遠い過去を懐かしむように目を細めながら続けた。


「お前は我々、恐竜使いの一族に協力を求め、共に恐竜たちを救う方法を模索していた」


「私が恐竜使いと…?」


アヤは驚きを隠せない。自分が恐竜使いたちと協力関係にあったなど、想像すらしていなかったのだ。


「お前は恐竜たちと心を通わせる特別な能力を持っていた。そして、その能力は『古代植物』と共鳴することで、さらに強化されることを突き止めたのだ」


長老はそこで言葉を切り、アヤの顔をじっと見つめた。


「『古代植物』…?」


アヤはその言葉に微かな既視感を覚えた。しかし、それが何なのか、どうしても思い出せない。マックスがいれば、この感覚が何なのか解析してくれたかもしれない。しかし、今はそれも叶わない。


「そうだ。この時代の生態系を支える神秘の植物。そして、時間軸にも影響を与える特別なエネルギーを秘めた存在」


長老はそこで一呼吸置き、言葉を続けた。


「お前は『古代植物』のエネルギーを利用して、恐竜たちを絶滅から救おうとしていた。しかし…」


長老はそこで言葉を詰まらせ、苦渋の表情を浮かべた。


「しかし、何があったのです?」


アヤは長老のただならぬ様子に不安を覚え、先を促した。


「時空の歪み、そしてそれを引き起こした者たちの妨害。それによって、お前は」


長老は重い口を開いた。


「記憶を失ったのだ」


「私が、記憶喪失」


アヤは自分のことであるにも関わらず、どこか他人事のように呟いた。記憶を失う前の自分がどのような人生を歩み、何を考えていたのか、全く想像がつかない。


「そして、お前は『恐竜博士』として、この白亜紀で生きることになったのだ」


長老は静かに話を締めくくった。


「そんな」


アヤはその場にへたり込みそうになった。あまりにも衝撃的な真実に、頭がついていかない。


「しかし、なぜそのことを今まで黙っていたのですか?」


翔が長老に問いかけた。もし、アヤがそんな重要な存在ならば、なぜもっと早く真実を告げなかったのか?


「記憶を失ったお前に真実を告げても、混乱させるだけだと判断した。それに」


長老はそこで言葉を切り、アヤを見つめた。


「お前は、恐竜たちと心を通わせる能力を失いかけていた。『古代植物』との共鳴も弱まっており、その状態で真実を知ったところで、なす術がなかったのだ」


「私が、能力を…?」


アヤは自分の手のひらを見つめながら呟いた。恐竜と心を通わせる能力。そんな力が自分に宿っているとは、到底信じられなかった。


「だが、希望は失われていない」


長老は力強い声で言った。


「お前の中には、まだ力が眠っている。それを目覚めさせることができれば」


「私の中の力…?」


アヤは長老の言葉を理解しようと、必死に考えを巡らせた。しかし、失われた記憶は依然として闇の中であり、その力の正体は掴めないままだった。ふと、彼女の脳裏にマックスの姿が浮かんだ。彼との出会い、共鳴、そして、別れ。


「どうすれば、その力を目覚めさせることができるのですか?」


アヤは長老にすがるような眼差しを向けた。


「『古代植物』。そのエネルギーと再び深く共鳴することだ。それにはお前の強い意志と、恐竜たちへの愛が必要となる」


「私の意志と、恐竜たちへの愛」


アヤは長老の言葉を噛みしめるように呟いた。


「恐竜使いたちよ。今こそ過去の因縁を乗り越え、共に戦う時だ」


長老は恐竜使いたちに呼びかけた。


「クロノスは『古代植物』のエネルギーを狙っている。彼らの野望を阻止しなければ、この時代は、いや、全ての時代が消滅してしまう」


長老の言葉に、恐竜使いたちは複雑な表情を浮かべた。彼らはアヤを「裏切り者」と呼び、激しく憎んでいた。しかし、長老の言葉、そしてアヤのまっすぐな瞳に真実を見出しつつあった。


「私たちに、できることがあるのでしょうか?」


恐竜使いたちの一人が不安げに尋ねた。


「希望は必ずある。アヤよ。お前が鍵なのだ」


長老は静かに、しかし力強くアヤに告げた。


「私が、鍵」


アヤは自分自身に言い聞かせるように呟いた。失われた記憶、恐竜と心を通わせる能力、そして「古代植物」のエネルギー。


全てが繋がり始めた今、彼女は運命の大きな渦の中に巻き込まれようとしていた。そして、その渦の中心で、彼女自身が未来を切り開く鍵となる。


彼女は意を決して顔を上げ、長老を見つめた。その瞳には不安と戸惑いが混在していたが、同時に微かな希望の光も宿っていた。


「私に、できるでしょうか?」


アヤの震える声が静寂を切り裂いた。


「信じるのだ、己の力を。そして、恐竜たちへの愛を」


長老は優しく微笑みかけ、アヤの背中をそっと押した。


それは未来への希望を託す、優しい激励だった。


アヤは深く息を吸い込み、ゆっくりと歩き出した。その足取りはまだおぼつかない。しかし、その瞳には確かに未来へ向かう強い意志の光が宿っていた。

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