プロローグ
西暦2045年。
かつて青く輝いていた地球は、もはや灰色に染まり、砂嵐が吹き荒れる荒野と化していた。乾いた風が吹き抜けるたびに、地表の砂塵が舞い上がり、太陽の光を遮る。かつて緑豊かだった森は枯れ果て、生命の気配はほとんど感じられない。
人々は地下シェルターに身を隠し、わずかな資源を分け合いながら、絶望的な日々を送っていた。かつて地上を自由に歩き回っていた日々は、遠い昔の夢のように思える。
そんな世界で、一人の科学者、ショウタロウは、最後の希望を託した研究に没頭していた。薄暗い研究室の中で、彼は、モニターに映し出されるデータや図形を、真剣な眼差しで見つめている。その顔には、深い悲しみと、わずかな希望が入り混じっていた。
彼の研究室の片隅には、一体のテディベアが置かれていた。それは、愛する息子、翔へのプレゼントとして、彼が自ら作り上げたものだった。
だが、このテディベアは、ただのぬいぐるみではなかった。
ショウタロウは、自らの知識と技術のすべてを注ぎ込み、高性能AIを搭載した、特別な存在へと作り変えていたのだ。
「翔、未来を救えるのは君しかいない。君ならきっと、この危機を乗り越えられる。過去へ行き、歴史を変え、未来を救ってくれ。」
ショウタロウは、テディベアに語りかけるように、未来へのメッセージを込めた。
彼は、テディベアの小さな体に、膨大なデータと、未来への希望を詰め込んだ。
そして、時空を超える能力を備えたそのテディベアは、「マックス」と名付けられ、過去へと旅立つ。
翔のもとへ。
未来を救うために。
その頃、10歳の翔は、地上に残されたわずかな緑地で、一匹の蝶を追いかけていた。