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第1章の1 不良だけど悪くはないよ

コメディーとシリアスと半々くらいで進行していきます。

まあ、作者計画では長い作品となりますのでゆっくりつきあってください。

 秋の空は高く澄み、時折吹く冷たい風は迫りくる冬を知らせていた。

 大通りの木々は枯れ葉を惜しげなく降らし、春日かすが 勇輝ゆうきの足の裏で小気味いい音を立てている。


 同じ制服を着た学生が早足で、もしくは駆け足で追い抜かしても、勇輝はのんびりと歩いていた。同じ制服とは言っても着方は多少違う。勇輝はカッターシャツの中に柄シャツを着て、少し前を開けている。学ランのボタンも全ては留めずに開放していた。

 周りの生徒は勇輝を見ると、少し距離を取り始め、ちらりと視線をむける。

 その中を勇輝は気にもせずにのんびりと歩いていた。

 そんなものだから勇輝が学校に着くのは、遅刻ギリギリである。


 勇輝の通う高校は私立でも底辺に位置し、校舎は長い歴史を感じさせる重みがある。悪く言えば古い、ぼろい。そして、特に目を引くのがガラスのはまっていない窓。

 一日に数枚、ノルマを達成するかのように割られていくので、教師たちは直すのも放棄してしまった。

 校内はかろうじて少数のまともな女子によって清潔に保たれてはいる。そんな状態だった。


「よう、相変わらずおせぇな」


 勇輝が教室に入り席にかばんを置くと、隣の席の森本歩もりもと あゆむが声をかけてきた。

 色とりどりの髪色がいるこの教室で数少ない黒髪であるが、白のメッシュが入っている。

 制服の着方もかなり適当で、学ランの中は柄シャツだけだ。


「うるさい、朝は弱いんだよ」


 歩が勇輝に近づき、勇輝はやや見上げて歩を見る。勇輝は平均的な男子と比べて頭一つ分は低い。

 そこがまた勇輝を不機嫌にさせる。


「俺の前に立つな」


「なんだよそれ、後ろなら分かるけどなんで前なわけ? あ、あれですか、コンプレックスですか?」


 わざとらしい口調で歩はからかう。

 勇輝の中で怒りがふつふつと込みあがった。背が低いだけならまだしも童顔であり、スカートを穿かせたら駅前でナンパされてもおかしくない容姿なのである。


「悪い?」


 勇輝は歩をにらみ、拳を握る。


 だがそれも歩から見たらキュンとくる上目づかいでしかなく、そもそも勇輝をからかうのが好きなのだからおもしろくてしかたがない。


「別に?」


 歩は笑いをこらえ、それだけ言った。だがそれがまた勇輝の神経を逆なでる。


「そんなに文句があんなら拳で勝負だ!」


 勇輝は喧嘩っ早さには定評がある、このあたりで名の知れた不良だ。

 今までもからかってきた相手を片端から殴り飛ばしてきたのだった。そのたびに名があがる。

 そして歩も不良であり、勇輝とは中学からの付き合いで数々の修羅場をくぐってきた。


「やだよ。お前とやったって楽しくねぇし、それに俺お前に手なんてだせねぇよ」


 かわいいその顔に傷をつけたくねぇし、と心の中でそっとつけたす。


「あっそ、つまんないの」


「は~る~ゆ~き~おはよ!」


 勇輝がふてくされて自分の席に着くために体を反転させようとした時、明るい声が飛んで来て、背中に衝撃を受けた。

 ちなみにはるゆきとは彼女がつけたあだなで、春日の“はる”と勇輝の“ゆき”をとったらしい。

 勇輝はなんとか踏みとどまりゆっくり後ろを向く。


「あ、彩……おはよう」


 そこには勇輝の彼女である桜田彩さくらだあやがいた。

 少し背の高い彼女を見上げながら勇輝は彩がいつになく上機嫌なこと気がついた。


(これは……嫌な予感がする)


「ねぇ、はるゆき。これあげる」


 と手に握らされたのは1枚の紙。


「楽しみにしてるね」


 うふふふっと、彩は怪しげな笑みを残して自分の席へと戻っていった。


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