2桜の舞う頃
私、鈴木魅桜。魅了持ちのとってもモテている女子です。モテすぎていると言っても過言では無いです。今はもう、モテすぎて困るという事はありません。力を制御できるようになりましたから。でも、モテます。ちなみに、自意識過剰ではありません。小さな頃は本当に大変でした。少数の魅了が効かない人達と、力を封じることができる人達の助けが無ければ、私は生活できていなかったでしょう。
小中学校はそう言った特殊な力を持った人と、人以外が通っていました。その学校には力が効かない、無効化という特殊な力を持った人はいなかったのです。そもそも無効化や無力化、本人のみ効かないという力は、能力として認められていなかったり、持っている人物が見つけ難い、秘密を明かす必要性が感じられないという事で、探し出されることもなく、学校に通うことも必須では無かったのです。その当時は絶望しましたが、卒業した今となっては関係無いでしょう。
そんな私は魅了持ちという事もあって、友達という者が長い間いなかったのです。でも友人がいない期間は、佐藤華絵が現れた事により、魅了持ちの人が経験する平均期間より短かったのです。両親談と平均ですから自分の感じ方としては長かったような気がしますが、もう友人が出来てからの方が長いので忘れてしまいました。
同じ年の華絵と会ったのは小学校に上がる頃。登校への備えとして、鈴木家が引っ越したことが切っ掛けでした。
「みーちゃん。ママとパパ、お隣に引っ越しの御挨拶に行ってくるわね」
「・・・うん」
小さな頃は対策をしないで外出すると碌な事にならないので、とても大人しい子だったのです。対策しても変な人はホイホイ寄って来て迷惑していましたが・・・。
挨拶に行った両親がすぐさま戻って来たので、疑問に思っていると私も一緒に挨拶をと言うのです。
「みーちゃん。あのね。お隣に同じ年の女の子がいたの。一つ上の男の子も」
魅了持ちのいつまでも綺麗なままのママが言う。
「・・・うん」
「何かと顔を合わせることもあるだろうから、最初だけ御挨拶しよう」
「きっと大丈夫よ」
魅了持ちで何処でもモテるパパまでそう言うので、魅了を抑えるお守りを首から掛け挨拶に行く。ママとパパは勿論、魅了の力を抑えられるけれども、モテるオーラは抑えきれないのか何処でも見られるし、声を掛けられる。そんな二人が大丈夫だろうと言うので、挨拶しに行った。
「娘の魅桜です」
「まあ、とっても可愛らしいお嬢さんで」
優しそうなお隣のお母さんが、穏やかに声を掛けてくれた。
「ありがとうございます」
ママが返す。
「葉太―、華絵―」
二人を見た時に桜吹雪が舞ったような気がした。
子供は力を素直に受けやすい。後は欲望に満ちた大人も駄目だ。だけど、二人はそっくりな顔で私に笑い掛けた。
「はじめまして」
「すっごく可愛いね!」
「華絵、ビックリするくらい可愛いのは分かってるけど、御挨拶」
「あ、そっか。こんにちは」
この時、極々普通の対応に私の方が落とされた。佐藤家はちょっと可愛い子が引っ越しの挨拶に来たというだけの反応だった。私は衝撃的過ぎて、何か言葉を返せたのか覚えていない。
「みーちゃん。どうだった?」
ママが聞く。
「・・・お友達に、なれるかな?」
私は胸をときめかせた。
「うん。大丈夫だよ」
パパが嬉しそうに言った。
少しだけ期待した小学校は散々だった。結局、まともに通えなくて自宅学習になったのだ。ママとパパとオンライン授業だけしかなかった。
けど、友達は出来た。
「魅桜ちゃーん。あそーぼー」
「うん!華絵ちゃん」
華絵ちゃんと遊んでいる時は外で遊んでも大丈夫。華絵ちゃんの友達と一緒でも大丈夫。皆、仲間に入れてくれた。楽しい。普通の友達。それでも、気を付ける。
パパとママは学校に通えなくなった私に話してくれた。
「みーちゃん。外で遊ぶ時は華絵ちゃんと離れないこと」
「うん」
「お隣の佐藤さんは皆、私達の力を抑えてくれるみたいなの」
「みーも華絵ちゃんと学校行ける?」
「それは難しいかな」
「ごめんね、みーちゃん。華絵ちゃんのお家にお話するのは駄目だったの」
「・・・そう」
「本当に、ごめんね。でも、華絵ちゃんといっぱい遊ぼう」
「今度、合同でキャンプとか旅行を企画しましょう!」
「お出掛け!?」
「そうしよう!!」
こうして鈴木家と佐藤家は順調に交流を重ねた。
「お兄ちゃんと!」
「うん。実は、佐藤家には魅了が効かないみたいで、そうなると私の魅力だけで勝負できるでしょ!燃えたー!!」
私は佐藤葉太君と結婚して、佐藤魅桜になりました。