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運命の番は聖女の婚約者でした  作者: 岳
番外編
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夜会(1)




なんとか蜜月休暇を終え、通常の業務に戻ったと思いきやいきなり龍王様に呼び出された。

この国のトップ、実力・権力ともに最高峰の御方が平騎士なんぞになんの用だろうか。


団長の番として認めない、とかだったらどうしよう。

もちろん、その時は認めてもらえるための条件を聞き出し、なんとしてもそれを達成してみせる所存ではあるが。


龍王様に反対されるのは、流石に辛いな。


そんなことを考えつつ望んだ謁見は、予想と全く反するものだった。


「お披露目、ですか?」


「そうなのよ。ダンデリオン将軍に伴侶ができたことを内外にしっかり知らしめないと、と思ってね。ゴチャゴチャ言う子たちもいるでしょう?この際スッパリ黙らせないと。」


クレアスティーネ様が両手を合わせ、ニコニコしながら言った。

その笑顔が若干怖い。可笑しい、いつも通り神々しい程に美しいのに、なぜ迫力を感じるのか?


「余もティーネの意見に賛成だ。何より先日の夜会はティーネを着飾らせることができなかったからな。口実はいくらでも欲しい。」


龍王様が気持ちいいほどハッキリと言った。

口実って言いましたよね?今。


「せめて建前くらい取り繕って下さい。」


横の団長が呆れたように龍王様にそう言って、ため息を吐いた。


「そうよ。夜会に出れなかったのはゼフィのせいでしょう?」


クレアスティーネ様がじろりと恨めし気に龍王様を睨む。そんな顔しても美しいなんてすごい。

そして龍王様は悪びれる様子もなく「すまんすまん。ティーネが可愛すぎたんだ。」なんて言って笑っている。

えっと、何の話でしたっけ?


「まあとにかく、金獅子の番が見つかったことを広めておかねば。先日のように狙われる可能性もある。早急に立場を整え、手出しできないよう周囲を固めておく必要がある。」


クレアスティーネ様に本格的に睨まれたせいか、龍王様は真面目な顔に戻ってそう言った。

冷やりと背中に汗が流れる。

立場を整え周囲を固める、それは騎士団を辞めろという事だろうか。


いつかはそうすべきだとわかっている。

けれど、団長に何も言われないのをいいことに、その選択肢を先延ばしにしていた。

まだ、もう少しだけ騎士でいたい。


グッと拳を握り俯くと、背後から優しく肩を抱かれた。

見上げると優しい紫と目が合う。


「立場というなら、彼女には騎士という立派な役職があります。ダンデリオン家は弟が継ぎますし、無理に急がせるつもりはありません。」


団長がそう言って龍王様を見上げる。

番と知ってから伴侶として大切にしてもらっていることはわかっていた。

けれど、騎士としての自分も認めてくれているのだ、そう実感して胸がポカポカと暖かくなる。


「そんなことはわかってんだ。番の側には番を、無理に離すつもりはない。だがな、全員が全員、そう考えるわけじゃない。あわよくば、なんつーバカもいるんだよ。」


「それは……」


龍王様の言っていることは正しい。

現に団長の番だという噂が広まってから、分不相応だ、ダンデリオン様が可哀想、身を引くべきだ、そういった声は少なからず聞いていた。直接言ってくるならまだ可愛いもので、嫌がらせのような手紙や物が見知らぬ相手から届くことも珍しくない。


黙ってしまったことで何かに気づいたのか、団長の手に少し力が入った。なんだろう、威圧が洩れてるような……


「そう殺気立つな。だからこそ夜会だろ。しっかり伴侶の存在を知らしめて、お前と同等の身分にあることをアピールしてこい。ああ、それと、ダンデリオン家は弟でも構わんが、お前のこれまでの功績のせいで褒賞が渋滞してんだ。そのうち適当な爵位は賜ってもらうぞ。」


それだけ言うと龍王様は立ち上がり、クレアスティーネ様を抱えあげる。


「さぁ、そうと決まればティーネを着飾る準備をしなけければ。」


「ちょ、ちょっとゼフィ!謁見中よ!」


顔を赤くしたクレアスティーネ様が声を上げるが、龍王様は鼻歌でも歌い出しそうな程ご機嫌で離す様子はない。

こうなれば私達はお邪魔虫だろう。団長と二人、礼をとって退室したが、果たして龍王様は気づいただろうか?








―――――


「よかったの?」


2人が退室していった扉を眺めてティーネがポツンと呟くように聞いてきた。


「うん?何がだ?」


「私の小さな騎士さんのことよ。てっきり騎士を辞めろって言うのかと思ってたわ。」


「番の側には番を。それに、番の誇りを勝手に挫いてみろ。それこそ金獅子に食い殺される。」


「まぁ!ふふふ」


「それに…まぁ心配ないだろうよ。ライオネルは優しい面して頑固だからな。番が危険に晒されると思ったらすぐにでも退役させるだろう。それも、番自身が納得するやり方でな。」


「え?」


「……あれだけマーキングしてるんだ。この子の侍女か護衛か、まぁどちらにせよ近いうちに候補ができるだろうな。」


「!!気づいていたの?」


「当たり前だ。ティーネが3日間も果物しか食べていない、そんな報告を受けてじっとしていられるか。パピノリアがどうのよりよっぽど大事件だぞ。ラビオリを追い立て問い詰め今朝聞いた。」


「まぁ!それで先生ったらあんなに顔色が悪かったのね。」


「人の心配をしている場合か。いいか?しばらくは絶対ひとりで歩かせんからな。」


「夜会でも?」


「無論だ。本当ならそれも禁止したいくらいだが、『女は体型が変わる前におしゃれを楽しみたいものだ』と母上も言っていたからな。ティーネの思うままに着飾るといい。……ただし腹に負担をかけず露出も控えめで。」


「ふふふ。注文はつけるのね。」


「………心配しているんだ。」


「わかっているわよ、ありがとう。でも、その前に聞きたい言葉があるわ。」


そう言って微笑む(ティーネ)はこの世で一番美しい。

今朝からずっとこの胸に溢れている喜びと愛しさを全て伝えるにはどうしたらいいのか。世界を管理するよりずっと難解だ。






龍王様たちのお話はまた別で書きたいなと思っています。

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