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「本当に、行ってしまわれるんですね。」


なんだかしんみりとしてしまって、思わずそう呟いてしまった。


「もー、シイラったら、そんな顔しないで。とりあえず、行ってみるだけだよ。3ヵ月後にはまた帰ってくるし。向こうに還る方法が見つかっても、みんなに挨拶しに来るし。勝手に還ったりしないよ。」


花音様は苦笑してそう言うと手を差し出して小指を立てた。


「?」


「約束するときに、こうやって小指と小指を絡ませるの。指切りげんまんってね!」


そう言ってシイラの小指に指を絡ませた。「ゆーびきーりげーんまーん」と単調な歌を歌い出す。


「いいですね。コレ。」


「そうでしょう?」


何がなんでも守らなきゃって感じがするよね。

そう言ってニコッと笑う花音様は晴れやかな顔をしていた。








あれから2週間。

隣国との交渉もまとまり、アルバートおよびロイドはパピノリアへ引き渡されることとなった。

アルバートに関してはドラゴニアで処刑を!という声も多くあったが、龍王様が「人は人の法で裁け」とその声を黙らせたという。

団長は「面倒になったのではないと思う。たぶん。…たぶん。」と遠い目をしていた。


彼は結局黙秘を貫き通した。

第1の尋問は騎士でも泣き出すと言われているのに、強靭な精神力だと思う。

最後まで、龍王様を殺したかった本当の理由はわからずじまいだ。ドラゴニアを欲したのか、他の理由があったのか。

いずれにせよ、王太子暗殺に聖女および獣人誘拐、その他恐喝やら番隠しやらで罪状は多い。自国での処刑は免れないだろう。


花音様に関しては、正式にドラゴニアに属する者として認められ身分が与えられた。そのうえで、召喚したパピノリアへ遊学へ行き、元の世界へ還る方法を探すことになった。残るか、還るか、それは方法を見つけてから彼女自身が決めることだ。

“浄化”の力の行使、および“聖女”としての活動はすべてドラゴニアの許可を得てから行うこと。

聖女召喚の儀は禁術とし、その方法が書かれた書物や魔法陣もすべてドラゴニアが保管するという。

たった2週間でそこまでの内容を締結させ賠償金をふんだくってきた文官たちには頭の下がる思いだ。


ちなみにシイラの謹慎は1週間追加され計2週間となった。禁止物となった番隠しの使用が名目だが、「騎士のクセに簡単に攫われやがって」というクロダイン副団長のお叱りも多分に含まれている気がする。

おかげで職務復帰1日目からアルバートの引き渡しおよび聖女の遊学というビックイベントだ。






「お気をつけていってらしてください。お帰りをお待ちしています。」


そう言って騎士の礼をとる。


「……シイラがライ、団長様の番だったのよね。ごめんなさい、嫌な気持ちにさせたよね。」


ふと、そう言った花音様は表情を曇らせ俯いた。


「いいえ、そのようなことは。隠していたのは私の方ですし」


せっかくもらった挨拶の機会を謝罪の場にしたくなかった。

花音様が責められることは何もないのだ。そう思って否定するが、花音様の表情は晴れない。


「……お茶が上手に淹れられるようになりました。」


「え?」


「花音様のおかげです。それに、いつも男だらけの中にいたので…こういっては失礼かもしれませんが、妹ができたようで楽しかったんです。」


その言葉に少しの間キョトンと大きな丸い瞳を見開いでいたが、やがて吹き出すみたいに笑った。


「ふふふふっ!お茶は私じゃなくてレーナのおかげね!絶対!」


「いえいえ。レーナさんの鞭に耐えられたのは花音様が褒めてくれる飴があればこそです。」


そう言って私も笑ってしまった。


「ふふふ。でも、そっか。よかった。シイラはまた侍女にならないの?」


その質問に首を振って答える。


「私は騎士ですから。」


「……団長様と結婚しても?」


「はい。」


「じゃあ、今度は私が騎士見習いになろうかな!」


「……それはお勧め致しません。」


第2のムサイ同僚達が花音様を囲む様子を想像してしまった。狼の群れに可憐な子羊を放り込むようなものだ。断固反対させてもらう。


そうしてもう一度吹き出して、最後に敬礼をして護送の列に戻った。

花音様が馬車に乗り込み、後にレーナさんが続く。パピノリアへの遊学に同行するそうだ。目礼を送るとまた、仕方ないというように頷いてくれた。


アルバートらを乗せた馬車の護衛を第2騎士団が、花音様達の護衛を第1騎士団が担う。

馬車と並走するように馬を走らせていくと国境にパピノリアの兵士達が敬礼して並んでいた。


同じく礼を返し護送車を引き渡す。

囚人用の馬車に乗せられたアルバートが一瞬見える。生気もなく疲れきったような姿はまるで別人のようだった。

彼の目的がなんであったかはシイラにはわからない。

それでも彼の話を聞いてくれる人がいたらよかったのかもしれない、

なんとなくそう思った。




次で最終話の予定です。

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