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ライオネル・ダンデリオン(6)





ドラゴニア王国の龍王、ゼファニロス・ドラゴニアは玉座にふんぞり返るようにして座っていた。

その姿と全く同じ姿を、ついこの間も見た気がする。


そう思いながらライオネルはため息を吐きだした。


「報告は以上です。アルバート・フォン・パピノリアの身柄引き渡しに関しては、別途、第1から報告があるかと。」


そういって臣下の礼をとる。


「………金獅子を使った龍殺し、ね。」


龍王は何も言わずにライオネルを見下ろしている。

その瞳が子どもを揶揄うとき時のように怪しく光っていることは、気づかないふりをしたい。


「荒唐無稽な妄想でしょう。」


ライオネルが一刀両断する。しかし、龍王は楽しそうに目を細めて笑った。


「そうでもないだろう。金獅子の“咆哮”は強力だ。そして、お前はまだ全力で咆えたことがない。」


獣性抑制剤はライオネルの威圧を和らげるために常用しているものだ。

それを飲んでいる限り、“咆哮”は全力とは言えない。


「それでも、狂戦士化など無理ですよ。」


「……リミッター解除ね。本当に、あのチビッ子は。」


はああと珍しく大きなため息を吐きだし、手をひらひらと振った。

扉前の護衛騎士が礼をして下がる。


「これで堅苦しいのはなしでいいな。」


さっきから堅苦しさのかけらもなかった気がするが…。

そう思いながらライオネルも姿勢を崩した。


「なんだっけ。そうそう。お前の“咆哮”な。それで狂戦士を作り上げることは可能だ。」


「!!」


いきなり何を…


「お前の“咆哮”は獣人にも人間にも効く。なかでも、かつて猛獣と呼ばれていた奴らには特によく効く、そうだろう?」


「知ってたのか。」


「それをお前の親父に教えたのは俺だからな。」


思わず脱力した。

本当に、この龍は。


「だからなんだ。脅威は消しておくか?」


ライオネルが投げやりに聞くと、ゼファ二ロスは肩をすくめた。


「まさか。逆だ、逆。魔銃でなんぞ撃たれやがって。今回は番が絡んでたから仕方ないが、次はないぞ。お前は誰より生き残れ。」


「?どういう意味だ?」


「獣人は番を失えば狂う。それは龍とて例外でない。いや、むしろ酷いと言ってもいいな。」


「ああ。」


ゼファニロスの番至上主義はよく知っている。

かくゆう自分もシイラのためならそうなるだろう。そう思えば以前のように呆れる気はしなかった。


「狂った龍を討てるのは、同じく狂った者たちだけだ。」


「!!それはっ」


「金獅子は世界の保険だ。龍に番が現れる時、金獅子もまた現れる。狂った龍が世界を破壊しきることのないように、な。」


「………」


「そんな顔するなよ。小さいお前に会った時、嬉しかったんだぜ?龍人にとって、金獅子は番が現れる確証だ。福音といっても過言じゃない。」


重要な話をまるで軽い口調で話すのはこの王の癖だ。

飄飄としたその態度の裏で一体どこまで―――――


「……狂うのか?」


「クレスティーネがいる限り、それはないな。」


間髪入れずにそう言うゼファニロスにほっとする。

王でありながら兄のようで、そして騎士たる自分の主である。

自分は彼を討ちたくない。


「お前の番は(プラン)らしいな。」


急に話が変わった。シイラのことを聞かれ思わず訝しむ。


「そうだが…?」


「俺がティーネを見出した時、彼女は孤児院のシスターだった。」


「ああ。」


ゼファニロスが番であるクレアスティーネ王妃を見出した時のことは、よく知っている。

孤児院を半壊させ、破落戸を消し炭にした彼の後始末を騎士団総出でしたのだから。


「俺がティーネのもとに行くまで、破落戸を足止めしたのは雪豹の子どもだったらしい。」


「それはっ」


「この国でもめったにいない獣人だ。足止めがなければ、俺は間に合わずに番を失っていたかもしれない。そうなれば、狂った俺を討つのはお前だ。ライオネル。」


ライオネルは声が出なかった。

あの日、孤児院近くの教会に避難させた孤児たち。

最後まで破落戸に抵抗し続けていたという、その子の髪は何色だったろうか。


心からの敬意と感謝を送った


あの小さな子は



「俺にとっての幸運は間違いなくティーネの白金だ。そして、お前にとっての幸運は――――――」











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