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温かくて、いい匂いがする。

自然と喉がゴロゴロ鳴って

まるで小さい子どもみたいだと思うのにやめられない。


うっすらと目を開けると金色が視界に広がって

お日様みたいだなぁなんて思いながらスリスリとぬくもりに擦り寄る。


すぐ近くで自分のそれより少し低いゴロゴロという音が聞こえてきて

シイラは幸せな気持ちでもう一度目を閉じた。










ベチンッ!


額に物凄い痛みを感じてシイラは飛び起きた。


「な、なにごとっ?!」


おでこを両手で抑えるが何もない。血は出ていないし、おそらくデコピンだ。

ホッとして息を吐くと鋭い赤色の瞳と目があった。


「よぉ。シイラ·ローゼン。やっとお目覚めか。」


ラビオリ先生だ。

何故か物凄く怒ってる。


「ええ~と……おはようございます?」


「うるせぇ!!昼過ぎだ!!」


「ええーー??」


あれから半日以上経っているらしい。最近こんなのばっかりだ。


「まぁまぁ、ラビオリ先生。」


穏やかな声が自分のすぐ隣から聞こえてパッと横を向いた。


「だ、団長っ?!」


なぜ、横に?

え?ちょっと待って、まさか一緒のベッドで寝てたの?

えええ?どいうこと?何も覚えてない!!


混乱しながら記憶を呼び覚まそうと必死になっていると


「俺には言ってくれないのか?」


団長が残念そうに言ってコテンと首をかしげた。


くはっ!!


普段は厳しく冷静なのに、何ですかその可愛いらしいのは!

あざとい、あまりにあざとすぎる。

白いシャツが眩しい。寝起きの頭には刺激が強すぎる。


「オ、オハヨウゴザイマス」


思わずカタコトで返すとふっと息だけで笑って、チュッと額に口付けられた。


「おはよう。」


····えっと、今日世界が終わるんだろうか?


シイラが混乱しているとチッというラビオリの舌打ちが聞こえてきた。


「病室でイチャつくな。ライオネルも、ほどほどにしないとそいつ知恵熱出すぞ。」


顔を超えて首まで赤くなったシイラを指差す。知恵熱なんて子どもじゃない、と言いたいがあながち否定できなかった。だってこんなの、絶対熱が上がる。


「気をつけます。」


言葉とは裏腹ににっこり笑う顔は、全然気を付けそうに見えなかった。


うん。笑顔が眩しい。

格好いいので良しとしたい。


「はぁぁぁ、これだから獣人は…」


ラビオリ先生が深いため息を吐き出した。自分だって獣人なのに。


「最終確認だ。ほら、腕出せ。」


そう言いながら血圧や体温を測られる。その間、団長にずっと肩を抱かれていた。たぶん脈拍は大変なことになっている。


「身体はだいぶ落ち着いたみたいだな。」


ちょっと据わった目をしながらラビオリ先生が診察を終えた。


そうですよね、すみません。

そして全然落ち着いてないです、先生。


シイラの無言の訴えを無視してラビオリが息をついた。


「ローゼン、お前どこまで覚える?」


「え、えっと応援が到着したところくらいです。あ、そういえば“魔力暴走”は?」


「魔力暴走?」


ラビオリが怪訝な顔をしたため、シイラはアルバートが番隠しについて話していたことと、攫われている間の症状を話した。


「……なるほど。“魔力”の反動ね。んで、獣化したら死ぬと。」


ラビオリ先生の言葉に、シイラの肩に回されていた手がピクっと反応した。


「アルバートはそう言ってました。まあ実際生きてますし、違ったんでしょうけど。」


はあああああ。

と、腹の底からため息を吐きだしたラビオリ先生はなぜか団長の方を向いた。


「異論は認めん。」


「……お願いします。」


そんな二人のやり取りの後、肩の手が外れていき…


――――ザシュッ


「~~~~ったい!!!!」


頭が切られたと思うくらいのチョップをお見舞いされた。


「この馬鹿野郎が!!!番隠しなんつー粗悪品に手出しやがって!!」


「す、すみませんでしたぁ!!」


大声で怒鳴られ、反射的に謝罪する。耳がキーンとしたし、気のせいじゃなければたんこぶを狙ってきた。すごく痛い。

それでも、ラビオリ先生が怒るってことはそれだけ無茶をしたということだ。


「アルバートってのが言ってたのは本当だろうよ。寝ながら獣化と人型を繰り返してたしな。今回はたまたま特効薬が側にあったってだけだ。」


「特効薬?」


首をかしげると顎でシイラの後ろを示された。


「獣性の暴走なら特効薬は番だ。側に置いときゃそのうち鎮まる。」


「ええええ?」


「うるせえ。だから一緒に寝かしてやったんだろうが。感謝しろ。」


「あ、ありがとうございます?」


ちょっと雑すぎる気もするが確かに団長が側に来た途端、眩暈もグラグラした熱も治まった。

釣られてその後も諸々も思い出してしまい、どんどん頬に熱が上っていく。多分、顔真っ赤だ。


そんな様子をどう思ったのか、団長に手をそっと握られた。

ああ、これはダメだ。たぶん顔の赤みは当分引かないだろう。

それでも手を握ってくれたことが嬉しくて、シイラもそっと握り返した。


「とりあえず、記憶の混濁等もなさそうだな。クロダインを呼んでくるから待ってろ。」


そう言ってラビオリ先生は病室を出て行った。

どうでもいいが、いつもの大部屋じゃなくて個室だった。

団長もいるから、そりゃそうか。











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