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アルバート殿下は龍王様に話をすると言っていた。

返事は早い方がいいだろう。


賓客を訪ねるには遅すぎる時間だが今日中にしっかり伝えておきたい。


シイラは、城内の使用人たちが使う食堂へ急いだ。

お目当ての人はいるだろうか。


料理人に聞くとまだ姿を見せていないというので入口で待ってみる。


「レーナさん!!」


お目当ての人が廊下から歩いてくるのが見えて大声で呼びながら駆け寄った。


「シイラさん」


少し驚いたように足を止めたレーナさんに、駆け寄った勢いのまま思いっきり頭を下げる。


「この度は本当に申し訳ありませんでした!!!」


真っ直ぐ90度の礼で謝罪する。と、急に腕を引っ張られ、空き部屋に押し込まれた。レーナさんは意外と力が強いらしい。


「いきなり何ですか?目立ってしまうでしょう!」


珍しく声を荒げて怒られる。


「す、すみません。その、今回の作戦でご迷惑をおかけしたので…」


「それは、私も話していませんでしたので。それに結果的に犯人は確保できたのですから。」


そう言ってフォローしてくれた。自分が疑われたのに、レーナさんは優しい。


「そうは言っても、盗み聞きして勘違いしたのは私です。それにせっかくレーナさんが頑張ってくれた作戦も台無しにしてしまいました。改めて、本当にすみません。」


なおも謝るとふうとため息をついて受け入れてくれた。


「それより、あんなところで謝罪される方が困ります。私は何も知らなかったということになっているんです。」


「あ、すみません。」


そうだった。レーナさんが龍王様直属というのはほとんどの人に知られていない。

団長・副団長、それに花音様と私くらいだろうか。


「それで、怪我の方は大丈夫なんですか?」


私の包帯をチラッと見ながらそう聞いてくれるレーナさんは優しくて、なんだかんだと面倒見がいい。

やっぱり裏切ったりするような人じゃないよね。


「はい。数日で復帰できると思います。」


疑ってしまった自分を恥ずかしく思い、苦笑しながら答える。


「そうですか。……それで?」


「え?」


「わざわざ謝罪のためだけに私を待っていた訳ではないでしょう。」


レーナさんは冷静にそう指摘した。

正式な謝罪であれば謹慎が明けてから職場の上司を伴って、という形になる。

最も、レーナさんはロイドの誘拐計画は知らず、花音様の提案で丘に行っただけ、という設定なのでシイラが謝罪する名目はないのだが。

だからこそ、一番謝りたかった人でもある。疑ってしまったのは事実なのだ。


「……すみません。でも謝りたかったのも本当です。」


「わかっています。」


「実は、アルバート殿下にお会いできないか、と思いまして。」


「アルバート殿下ですか?」


レーナさんが怪訝そうに聞き返した。


「その、ロイド卿の件をうけて私を護衛騎士に誘ってくださったのです。もう一人の兄のような人を庇ってくれたから、と。

その場できちんとお断りできなかったので、しっかりお伝えしておきたくて。」


「アルバート殿下があなたを……。わかりました。貴賓室の前にご案内します。」


レーナさんは少し考える仕草をしたが、すぐに顔を上げ歩きだした。慌ててその後を追う。


「もう一人の兄のような、というのはロイド卿のことですか?」


歩きながらレーナさんが不思議そうにそう聞いた。


「はい。アルバート殿下がそう言ってました。」


「……」


「レーナさん?」


「失礼しました。ロイド卿が口にしていた殿下との関係はだいぶ違っていたので。」


「違っていた?」


「ええ。詳しくは話していませんが……憎んでいるようにも見えましたね。」


「王太子の護衛騎士だと言っていましたから。敵対するようになったんですかね?」


やはり王位争いがあるのだろうか。

兄のように慕っていた人が敵になるとは悲しいことだ。


「そうかもしれませんね。それにしても、わざわざ敵を庇ったんですか?」


レーナさんが腕の包帯をチラッと見ながら呆れたようにそう言った。


「え、あ~~。無意識で、つい。」


ははは、と笑って誤魔化すとレーナさんは仕方ないという風にまたため息をついた。







「ここでお待ちください。」


貴賓室前の応接室に案内され、そう言われた。レーナさんが扉前の護衛に取次ぎを頼んでくれる。こういったやり取りは上手くないためお任せしていると、少し話してから、困ったような顔で戻って来た。


「アルバート殿下は寝支度を始めたところだったようで、応接室ではなく私室でもいいか?とのことです。」


ようするにパジャマだから部屋でいいか?ということか。

こっちとしては服なんてどうでもいいが高貴な身分になるとそうも言ってられないのだろう。


「ええ。大丈夫ですよ。」


「しかし、夜分に私室でお二人にするのは…」


レーナさんが迷うように考え込む。


「ああ、女の数にも入らない身ですし大丈夫ですよ。私が騎士だということはみんな知っているので噂にもならないでしょう。」


むしろ私が襲いに行ったとか言われそうである。

冗談めかして笑うとレーナさんは真剣な顔に変わった。


「用件が済んだらなるべく人目につかないように戻ってください。変な噂になっては困ります。」


「わかりました。」


女騎士が他国の王子を襲った、など国際問題だ。

自分で言った冗談だったが、本当に言われる可能性を考えるとレーナさんの真剣さも頷ける。

気を引き締めていこう。


レーナさんと別れアルバート殿下の私室に向かった。






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