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19(裏)

ちなみに最終問題はただ一つだ。

あの、山のように積まれてある石の中の、たった一つの正解を引き当てるという、運ゲーだった。

挑戦者たちは、その中からこれまでの情報をヒントに、その背後に居る神を想像して、石を探す。

このゲームをやり込んでいる者達なら、もう誰が黒幕なのか分かっているはずだ。

とはいえ、彰が演じるニクラスが、その本人なのだとは思っているのかどうか、分からなかった。

真司が沈黙を貫く構えなので、要が言った。

《コノ モンダイハ 3カイ ノ チョウセンケンリ ガ アタエラレマス。ヒトツメノ スナガ オチキッタラ ヒトリ ダツラク。フタツメノ スナガ オチキッタラ フタリ ダツラク。サンニンメモ ダツラクト ナレバ チョウセンハ シュウリョウシ ゼンイン ショリ シマス。》

特に急いでいないので、要は落ち着いた様子で言った。

だが、湊が叫ぶようにミ=ゴに言った。

「分かった!それで、問題は何?!早く教えてくれ!」

だから、まだ説明の最中だから。

要は腕を振った。すると、画像がうるさそうにかぎ爪を振った。

《セツメイガ オワッテイマセン。マダ、チョウセンヲ オエテイナイ ヒトガ ヤルヒツヨウガ アリマス。チョウセンガ オワッテイナイ ヒトガ シッパイシタ バアイ ノコッタヒトニハ チョウセンケンガ アタエラレマス。》

全員がクリアしないと終わらない。

そうして、これが終わってしまったら、クリアの機会がないのでまだ資格が無い者は消されてしまう。

そして、他の部屋での試練をクリアしている二人も、これをクリアできなければ終わらないのだ。

「ここには、二人挑戦しなければならない人が残っているが、もし一人目で成功したらどうなるんだ?もう一人は?」

要は、特に何の感情もなく、答えた。

《ナシテイナイ ヒトハ ショリサレマス。ナシタ ヒトダケ アルジニ ネガウ ケンリガ アタエラレマス。》

湊は、理久と大河を見た。

「そんな…救いはないのか。」

元々そういうゲームなんじゃないのか。

要はそう思って、黙り込んだ。どうしようもなく理不尽な、そんなストーリーを好んでいるのは君達だろう。

「…やるしかない。」理久が、青白い顔をしながらも、言った。「どっちが先にやる?大河?」

大河は、迷っている。先にやった方が有利なのは確かだが、恐らくは問題が分からないので自分にとって何が有利か判断がつかないのだろう。

大河は、言った。

「とにかく、問題だ!問題を言え!砂が無くなる!」

そう、砂時計の砂が、もう三分の一ほど滑り落ちていた。

要は、答えた。

《サイダンニ アル イケニエノ イシノ ナカカラ タッタヒトツノ アルジノ イシヲ ミツケテ クダサイ。ソレヲ テニシタラ ソチラノ イケニ ナゲイレテ クダサイ。セイカイナラ スナハ トマリマス。》

運が勝負。だが、ヒントは出ていると思うが。博正さんが犠牲を免れる石があるってセリフを、間違いなく言っていたはずだし。

要は、じっと待っていた。

湊は、山と積まれた赤い石を見つめた。

「その石の、特徴は?!」

理久が叫ぶが、要は冷静に答えた。だから、ここまでいろいろ情報はあったし、君達はあの神について、とてもよく知っているんだろう?

《アルジヲ ココロカラ ウヤマイ タタエレバ カナラズ ソノハドウト カタチガ ワカリマス。》

「とにかく早く!まずは探しましょう!見てみないと分からないわ!」

美里が、急いでその、金の大皿へと駆け寄ると、少しためらってから、思い切ったようにその石の中へと手を突っ込んだ。

そうして、一個一個手の平に乗せて見ている美里に、理久も駆け寄って行って石を調べ始めた。

「おい…そんなの、分かるのかよ。」

大河が、戸惑っている横で、理久はじっと石を見ながら、頷いた。

「きっと分かる。諦めたら終わりなんだ。大河も、早く調べて。これだと思ったのを見つけられた方がから、先に池へ投げ入れるってことにしよう。恨みっこなしだ。」

大河は、慌てて石へと寄った。

「なんだって?!」

そうか、やっぱり自分の命が大事か。

要は、自然彰のような、嘲るような笑みを浮かべている自分に気付いた。

ハッとしてふと、隣りを見ると、彰は、そんな修羅場を見つめながら、声を出さずに皆を嘲笑していた。


そろそろ、時間だな。

要は、砂時計を見つめながら、思った。だが、教えてやるという親切なことはしない。何もしないで見守るのが、シナリオで決まっていた。

すると、やはり勘が良いのか湊が顔を上げた。

…砂が!

「理久!大河!」湊は、叫んだ。「もう、一個目の砂時計の、砂が無くなる!」

湊が、こちらを見ているのが見えたが、恐らくは黙って見ているだけで教えてくれなかったとでも思っているのだろう。

焦った理久が、ふと皿の底へと目を止めた。

そこには、他の石とは違い、表面が角ばっていて、多面体になっている石が、ひとつ転がっているのが見えた。

多面体…トラペゾヘドロン!

理久は、それを叩くように掴み取った。

「あ!」

大河が、声を上げる。

理久は、それを手にして、叫んだ。

「トラペゾヘドロンだ!」

…ああ、それか。

要は、モニターのこちらで苦笑した。輝くトラペゾヘドロンは召喚する黒い石だろうが。そうクリスが言っていたぞ。オレは、主の石、って言ったのに。召喚する石はただの道具だろうが。

だが、それが正解だと思い込んでいる理久は嬉々として池へと走る。

大河という男が、それを絶望の眼差しで見送っているのが見えた。

「石をここへ投げ入れるんだな?!」

理久が言うので、要が答えた。

《ハイ。》

理久は、そこへ一瞬ためらった後にその石を放り込む。

「さて、ハリー、また出番だ。」

ハリーは、頷いた。

「ただのロボットアームを醜悪な触手に見せることは出来るかどうか。今のところ、ミ=ゴでは上手く行っているようだが。」

全員が、その波があるゆらゆらと揺れる水面を、固唾を飲んで見つめた。大河は、悲壮な顔をしている…これが正解なら、大河はミ=ゴが言う、処分の対象となってしまう。

水面が、ゆらゆらとした揺れを大きくした。

「うまく掴めよ。」

そこで、彰が口を出す。

隣りでそれを操作している者が、真剣な顔で頷いた。

ロボットアームが、触手の映像と重なって水面から飛び出た。

「きゃー!!」

美里が、声を上げる。

「理久!!」

湊が、必死にその手を掴んだ。

こちら視点では、ガッツリとロボットアームが理久を掴み、引き込もうと引っ張っていた。

実はあの池は、すぐに裏へと繋がっていて、そこへ引っ張り上げる事が出来るのだ。

「あああああ!湊!どうして…トラペゾヘドロンじゃないのか!」

美里は、後ろで茫然と座り込み、ガクガクと震えてそれを見ていた。

「理久…!駄目だ、力が強過ぎて…!」

湊の腕が、悲鳴を上げている。

腕の付け根から、持って行かれそうな力だった。

「結構頑張るな。」彰が、横から別のアームを操作し始めた。「濡らしたら滑るんじゃないか。」

彰が操作しているアームは、器用にその腕を這い上り、そうして腕をその滴る水で濡らして行った。

画面の中の、理久が叫んでいる。

「湊!湊離さないでくれ!こいつが、足を掴んでるんだ、体も!」と、触手が腕に巻き付いた。そのぬめぬめの粘液のようなものが、腕に絡みついて来る。「ああ滑る!湊ーー!!」

ズルン、と、腕は滑って抜けた。

「ああああああ!!」

「よし、無事回収だな。」

彰は満足そうだ。

理久の悲鳴と共に、触手は理久を巻き込んで派手な水しぶきを上げて、池の中へと引きずり込んで消えて行った。

「理久ーー!!」

湊は、叫んだ。だが、理久の姿が浮かび上がって来ることは、なかった。

それは当然で、薬で意識を失っている理久は、無事に回収されて穴のこちら側で担架に乗せられ、移動させられて行くところだった。

それを見送ってから、要は言った。

《ツギノ チョウセンガ ハジマリマス。ダツラクシャハ アトデ カイシュウシテ ショリシテ オキマス。》

サッサと次に行かないと。

外は暗くなり、涼しくなったがそれでも早く終わらせて休みたい。上手く行けば、しっかり睡眠をとる時間を取れるかもしれない。

要はそう思っていた。

《スナヲ ナガセ。》

要の声が、無情に言った。

二つ目の砂時計がクルリと回り、そうして、また砂が落ち始めた。

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