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その獣道は、下っても下っても下へとたどり着かない、無限に続くのかと思わせるほどの長さだった。

途中、下るばかりではなく登っているような箇所もあり、もうかれこれ一時間以上はこうして歩いているだろうか。

すると、先頭を歩いている、大河がいきなり、ピタリと立ち止った。

「…なんだよ、着いたのか?」

湊が疲れ切って言うと、大河は、茫然として、言った。

「…オレ達、あの道を真っ直ぐに来たよな?」

理久が、同じように疲れた様子で、大河に歩み寄った。

「今さらなんだよ、何があったんだ?」と、大河の横に並んで、固まった。「…え?」

美里が、後ろから言った。

「どうしたの?」

理久は、振り返った。

「村だ…あの、オレ達が出て来た、村なんだよ。」

「ええ?!」

美里も弥生も、驚いて駆け寄る。

本当に、そこはさっき出て来た村だった。

湊は、最後尾から皆に追いついて、それを見てから、言った。

「…やっぱり、やめよう。嫌な予感がしたんだよ。なあ、もうこの道はやめとこう。真っ直ぐに降りてここなんておかしいじゃないか。ほんとに、あのまま道を真っ直ぐに来たじゃないか。戻った記憶なんかない。」

美里も、さすがに不安そうな顔をした。

「ねえ、私もそう思うわ。こんなの、おかしいじゃない。戻った記憶もないのに、ここへ戻って来るなんて…。道は真っ直ぐだったのよ?それとも、どこかでつながってて気付かなったの?」

理久が、ハアと息をついた。

「そうだね。もう疲れちゃったし、ここはひとまず諦めて宿へ帰る?なんか異様に腹減ったんだけど、オレだけかな。」

確かにすごく腹が減っている。今の今まで気付かなかった。

「オレも。」湊は言って、腕に巻いている、ニクラスからもらった時計を見た。「時間も…。」

そこで、また停まった。

村へと向かったのが、9時。

そして、村まではそんなに歩いた記憶はない。せいぜい、10分ぐらいだろう。

それから、村人とほんの数分話して、あの道を一時間ぐらいさまよっていたのだと思っていたのに…。

「どうした?時間?」と、理久は、時計を見た。「げ!もう14時?!って昼の二時?!」

大河が、仰天したように言った。

「二時って、待てよオレ達、四時間以上歩いてたってことか?!」

五人は、顔を見合わせた。四時間…いくらなんでも、そんなに経っていないと思う。

だが、実際に時間は経っているのだ。

「…もう、来た道を通って宿へ戻ろう。」湊が、言った。「やっぱりおかしい。何かがおかしい気がする。とにかく、戻って昼ご飯食べて、ちょっと休もう。洞窟のことは、また後で考えよう。」

さすがの大河も、もう何も言わず、皆がそれに従って、村の南側にある、元来た道を使って、五人は宿へと向かった。

いったい、何がどうなっているのか分からなかったが、かなり堪える空腹感と、歩き回った異常な疲れで、今はただ帰って何か食べて休みたいと気持ちだけだった。


疲れ切った体でやっとのことで宿へと戻ると、要が飛び出して来て五人を迎えてくれた。

「皆さん、おかえりなさい。時間が掛かりましたね、食事を温め直します。」

みると、座敷には膳が五つ並べてあった。

湊は、首を振った。

「もう、あれでいいです。お腹が減って仕方がなくて。」

大河も理久も、もう靴を派手に撒き散らして脱ぎ、さっさとお膳に取り付く。

要は、苦笑した。

「分かりました。とにかく食べてください、お茶を淹れて来ます。」

女子達が、脇に置いてあったお(ひつ)から、冷めて生暖かい米を皆についでくれる。

湊は、何も考えずに、とにかく食べた。

雑木林の中とはいえ、夏の日差しの中を四時間も歩き回ったので、喉も異常に乾いていて、持って行っていたペットボトルのお茶も一気飲みして尽きていたので、要が持ってきてくれた、氷の浮くお茶はありがたかった。

「大丈夫ですか?」要が、気遣わし気に言う。「熱中症にでもなってるのかと心配しました。でも、腕輪から送られてくるデータは元気そうだし、そのうちに戻るだろうとニクラス教授がおっしゃっていたので。」

湊は、ハッとした。そうだ、これで場所と自分たちの心拍は伝わっていたのだ。

「オレ達、どこに居ましたか?」

湊が問うと、別の声が答えた。

「ずっと、村の南西の雑木林の中に。」ニクラスが、いつの間にか降りてきていて、そこに立っていた。背後には、デニスも居る。「おかしな事を聞くな。君達は自分たちがどこに居るのか分からずにさ迷っていたのか?同じような所に居たので、迷っているのではないなと、放置していたのだ。ちなみに君達のことは、私の1の腕輪で全部把握出来ていたのだがね。」

五人は、顔を見合せた。

「…それが、あまり話が聞けなかったので。」美里が、おずおずと言った。「洞窟の、教授達に合流しようということになって。まだ、10時にもなっていなかったと思います。そこから、村の脇の道を降りて行ったのです。」

ニクラスは、怪訝な顔をした。

「あの道は一本道で、洞窟までは20分も掛からないとデニスが言っていたが、君達は来なかった。迷う要素などない道だったのでは?」

デニスは、頷く。

「はい。道は枝分かれもありませんしね。雑木林で何か見つけたのか?」

それには、理久が首を振って答えた。

「違うんです、オレ達はずっと真っ直ぐに降りていたのに。途中、登ったり降りたりはあったんですけど、結構歩いて、気が付いたらまた、村に戻っていて。」

ニクラスは、眉を跳ね上げた。

「村に?真っ直ぐ歩いていたのに?」

湊は、頷く。

「はい。しかも、歩いたとしても一時間ぐらいだと思っていたのに、村についてからあんまり疲れてるし時計を見たら、もう二時で。びっくりして、洞窟に行くのはやめて、戻って来たんです。」

ニクラスとデニスは、顔を見合わせる。

確かに、おかしなことを言っているのだ。普通に考えたら、頭がおかしくなったと思うだろう。

しばらく黙ってから、ニクラスは言った。

「…雑木林の中とはいえ、この暑さだ。歩いていて朦朧としていたのかもしれないしな。どこかへ足を踏み込んでしまっていて、真っ直ぐに行ったのだと思い込んでいるのかもしれない。心拍は乱れていなかったのだが…これからは、同じ場所に長い時間留まって居ると思ったら、見に行くようにしよう。よく脱水症状が出なかったものだ。」

美里が、横から訴えるように言った。

「でも、頭はハッキリしていたんです。本当に、真っ直ぐ歩いていたのに!」

しかし、ニクラスは苦笑するだけで、踵を返した。

「脳というのは、結構曖昧なのだ。集団で幻覚でも見たのかもしれない。とにかく、何事も無く戻って来れたのだから良いではないか。では、私はこれで。」と、デニスを見た。「デニス、聞いて来たことの報告を聞いておいてくれ。修三はまだ部屋に籠っているし、また夕食の時にでも今日調べて来たことを話そう。」

そう言って、ニクラスは二階へと戻って行ってしまった。

本当のことを言っているのに。

湊は、信じてもらえないのに歯がゆい思いだった。美里もニクラスのそっけない対応に傷ついたようだったが、普通に考えたらおかしなことを言っているのを分かって居るので、何も言えない。

デニスが、同情したような顔をして、皆を見た。

「さあ、じゃあ聞いて来たことの報告を聞こう。」

湊は、自分達の名誉のためにも、真実だと信じてもらいたくて、デニスに訴えた。

「デニスさん、本当なんです!オレ達、夢を見ていたとか朦朧としていたとかありません!本当に、一時間ぐらい一本道を並んで歩いていただけなんです!それなのに、村に戻っていて、すごい時間が経ってたんです!」

デニスは、そんな湊をなだめるように言った。

「ああ、嘘を言っているとは思っていないよ。ニクラス教授だって、嘘だとは言わなかったじゃないか。ただ、ここは島だからマシとはいえ、今日は暑いからね。君達が思っているより時間が経っていたのは事実だし、村に戻ってしまったのも事実だ。でも、今はここに無事に戻った。だから、いいじゃないか。これからは、一緒に行動しよう。いいね?」

諭されるように言われたが、やはり自分達が経験した事は、暑さによる脳の異常とでも思われているようだ。

まだ何か言おうとした湊の肩を叩いて黙らせ、理久が言った。

「分かりました。明日からは、教授たちと一緒に行動できるんですね?じゃあ、洞窟にも行けるんだ。」

デニスは、ホッとしたように頷く。

「ああ、多分洞窟に行くんだと思うよ。だから、君達も今日のことは忘れて、とにかく村で聞いて来たことを教えてくれ。私もいくらか聞き出してはいたが、君達が新しいことを知っていたら聞きたいから。」

理久が、頷いてメモを取っていた弥生を見ると、弥生が、急いでメモ帳を取り出す。

要が膳を片付けるのを横目に見ながら、五人は弥生を中心にデニスに向かって、今日聞いて来たことを伝えたのだった。

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