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転生したら記憶喪失だった件 2

 空は木に覆われていて少し薄暗い。


 長い草が生えているところは、骨を使いかき分けて進む。

 普通に歩けるところのほうが多そうなので、拾ってきた骨の使い道は思った以上に少ないかもしれない。


 植物や木の実など食べれそうなものはある。

 しかし、何一つどういうものか知らないので、食べれるか判断がつかないな。


 どうやら魔術に関連しない知識は期待出来なさそうだ。

 欠落したのか、もともと知らないのかは謎である。


 魔物の気配を感じた。

 大木の陰に身を隠し、見つからないように顔を出す。

 四足歩行の大きな獣。

 牙をむき出しにして、ゆっくりと歩いている。

 あの牙に噛まれたら間違いなく死ぬだろうな。


 気配を殺していると、魔物は通り過ぎていった。


 さて、この森にはこういう魔物が多く生息しているのだろうか。

 だとすると安全な場所、拠点となるところは自分で作らなければいけない。

 上を見上げて木の長さを確認する。


 これなら拠点を作っても問題なさそうだ。


 紙に術式を書いて、木の根元に持っていた魔石と一緒に設置する。

 そして同じ術式と新たな術式を二つ書く。

 一つは木の上に登るためのもの。

 空間魔術と風魔術の応用したものである《飛行》だ。


 魔力を流し、《飛行》を発動させ木の上まで飛んでいく。

 そしてもう一つの魔術を使い、いくつかの大木の幹を変形させ、床を作り上げる。

 これに魔術名は無い。

 たった今、考えついたこの事象を起こすためだけのものだ。


 作った木の床に術式を書いた紙と魔力石を設置。

 こうすることによって、上と下での移動をスムーズに行うことが出来る《座標転移》の魔術だ。



「これで拠点は作れたな。あと必要なのは水と食料か」



 道中にあるものを見つけていたので、水はすぐに確保できそうだ。

 術式を書き、木の幹を変形。


 木の容器を作製。


 服の中から小石を取り出す。


 これは魔力を吸収する石。

 いわば魔石となる前の状態の石だ。

 これが道中で見つけたものである。


 それを容器の中に入れて、また術式を書く。


 術式に魔力を流すと、水が流れる。


 容器に水がいっぱいになったので、魔力を流すのをやめる。

 あとは待つだけ。


 魔術によって作られた水は魔水と言って、魔力を含んでいる。

 魔水は飲み水として使用出来ない。


 ……が、容器に入っている石が魔力を吸収してくれるため待てば飲み水となる。


 ついでに結界を張ることにした。

 飲み水の副産物で出来た魔石をエネルギーにする。

 魔水に含んでいる魔力など微々たるものなので燃費の良い結界にしよう。


 術式を書き、木の容器に貼り付ける。

 すると、木の上の床一帯を包み込む少し白みがかった半透明の結界が出来た。

 これは視覚妨害の作用があり、結界の外からではこの拠点が認識出来ない。



「あとは食料か」



 魔物って食えるのだろうか。

 さっき見たヤツとか結構美味そうだけど、いけるのかな。


 魔水は飲めないと知っていた。

 それは魔術に関することだからと考えていいだろう。


 魔物にはそれが無い。

 焼けば食べれるかもしれない。

 ちょっとだけ食ってみて、身体が受け付けないようなら辞めておけばいいか。


 《座標転移》を使い、地面に降りる。

 術式を書き、《索敵》の魔術を発動。

 周囲にいる魔物はさっきのやつだけのようだ。

 場所も特定できた。


 自分魔力が尽きる気配は一向に現れないので、節約することより楽を選ぼうと思う。

 魔石も十分に持ってるし、魔力の無駄遣いしても問題はないはずだ。


 《身体強化》の術式を書く。

 魔力を身体能力に変換してくれる術式で身体強化って名前より能力変換とかに改名した方がいいんじゃないか?

 身体強化はメジャーな魔術なので改名とか不可能だろが。


 魔力を身体能力に変換させているが、一向に魔力が減らない。

 どうなっているんだ?

 身体能力は間違いなく強化されているというのに……。


 まぁいいか。

 魔力が多くて困ることは一つもない。

 むしろ良いことしかばかりだ。



「こんなものかな」



 ある程度、魔力を身体能力に変換した。

 アイツを見失う前に行動に移したほうがいい。

 俺は森の中を駆け出した。


 風の気持ち良さを感じる間もなく、お目当ての魔物を見つけた。

 魔物もいち早く俺に気づいたようで、毛を逆立てて戦闘態勢に入る。


 どう仕留めるかだが、身体能力が高くなったところで魔物をワンパンで倒したりは出来ない。



 俺は魔術師であって格闘家ではない。



 攻撃の手段は魔術に限られてくる。


 炎魔術は森の中だし辞めておいた方がいい。

 それなら風魔術だな。

 あらかじめ術式の書かれた紙を2枚取り出す。

 1枚は《ウィンドブレイド》という魔術。これに魔術を流すと風の刃が魔物を斬り裂いた。



「グオオオオン」



 急所を狙ったのだが、魔物はそれをかろうじてかわし、致命傷を避けた。

 そして攻撃に転じる魔物は俺に飛びかかってきた。



「魔術師に飛びかかってくるのは半分正解で半分不正解だ」



 距離を詰められると魔術師は不利になる。



 しかし、俺は自身の弱点を補完できる手札を何枚も持っている。



 もう1枚の紙に書かれている術式は名前のない魔術。

 俺のオリジナルだ。



 焦ることなく魔術を使用。


 飛びかかってきた魔物は突如現れた数十もの風の刃に斬り裂かれた。

 身体がバラバラになり、大量の血が飛び交うが、風の力によって俺まで届くことはない。


 この魔術、大量の魔力を使うので燃費がめちゃくちゃ悪い。

 だが、自分の魔力が減ったようには感じられなかった。



「さて、この肉どうしようか」



 大きな魔物を仕留めたため、かなりの量の肉が手に入った。

 拠点に持って帰るのは、肉のにおいに釣られて魔物がやってくる危険性が生じる。

 ここに置いておくのも拠点からあまり遠くないところなので、同じく危険だ。


 勿体ないけど食べる分だけ持っていくことにした。

 余った分は空間魔術を使い、次元の狭間に捨てておいた。


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