憂鬱雨空
君と喧嘩した。
「もっと見てよわたしのこと!わかってよ!」
「いくら分かろうとしたってお前のことなんか分かんねぇんだよ!自分のことで精一杯のやつがもの言ってんじゃねよ!」
気づけば暗い部屋でその事をはっきりと思い出していた。
「うぅ。ごめんなさい。私が悪かったの。ごめんなさい」
「なんで自分のこと責めんだよ。そういうとこ、1番分からねぇんだよ」
そういってドタドタと玄関へ向かって家から出ていった君は、未だに返って来ていない。
同棲して1年。もう君のこともほぼ知り尽くしたつもりだった。仲がいいって評判で喧嘩なんかあまりしなかったのに。
お互いにホンネは隠すタイプだった。
それでもたまには本音を話した。
「俺にならなんでも言っていいから」
「全部俺が受け止めてやるから」
そう君は言っていたはずなのに、本音すら言えなくなった。
「あー。もうやだ!」
私はそう叫んでベットに身を投げ、ぬいぐるみを力いっぱい抱きしめた。
君はどこにいるのかさっぱり見当がつかない。
外は雨が降っているのに、帰ってくる素振りもないし、連絡ももちろんない。
かなりの時間そうしていたきがした。
雨もどしゃ降り。その音さえも聞くのが嫌で音楽で耳を塞いだ。大好きな恋愛ソング。
その曲さえも今は辛く悲しいものに聞こえた。
そうやって一日がまたすぎた。
君はまだ帰ってこない。
ほかの女でも、探しに行ったのかな。
私はもう捨てられたのかな。
どこいったんだろう。
考えても考えても君のことばかり、心配になっていくばかりで、それさえもつらい。
「自分でしたことさえ責任持てねぇのかよ」
君はそんなことも言っていた気がする。
そうね、私は確かにそうだった。
反論した時の君の顔は傷ついたように歪んでいた気がする。
最初からもっと、いい子だったら変わっていたのかな。そんなこと考える度に私の目からは涙が流れるばかりだ。
そんなわたしに何となく腹が立って。
自暴自棄になった。
空は雨が止んで曇っていた。
ベッドに預けてしまったからだは、体勢をかえることすら億劫になった。
閉じた目も涙で潤っている。
音楽で耳を塞いで歌詞に心を寄せて。
3日ほどたった。
雨はまたどしゃ降りだった。
でも、何となく寂しくて涙が止まらなくてガンガンと頭痛がした。
君はまだ帰らない。
「さみしい、さみしいよ…ごめん、ごめんなさい」
そんなことを呟くようになって。
君がいなくなってはっきりと気づいた。
私には君が必要不可欠なこと。
そう思った瞬間からだは玄関に向かって歩いていた。
なにかの衝動に駆られたように。
ガチャ。
ドアを開けるとそこには目を赤くした君がいた。
そして不意に抱きしめられた。
夢なのかなと思った。
「ごめん、ごめんな。」
君はそういって私をぎゅっと抱きしめた。
息が詰まるくらい。
「分かってあげたい。でも分からない俺をどうか許してくれ。もっと言い方があったのに、おんな言い方しかできない俺を許してくれ。」
そういってびっしょびしょのあなたは私の顔に触れた。
「私…こそ…ごめんなさい、ごめんなさい!」
私は君を見て泣きわめきました。
でも…そこで話は終わりじゃなかった。
「でも…遅いよ。」
私の意識はそこで途切れて…。
きっと辺りは血まみれだったでしょう。