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第四話 襲撃 PART-1

 目を覚ましたら、自分が作ったゲームのキャラクターになっていて、知らない世界に来てしまっていた。

 そんなことまともな人間なら信じないだろう。常識で考えれば当然のことだ。

 だが、俺の場合は違った。目を覚ました瞬間に感じていたのだ。

 地球という星の日本という国で生を受ける前ならば、ごく当たり前に感じていた()()()()を。

 日本で新たに生を受けて17年。俺はいつの間にか平和ボケしていたのだ。幼き頃、日本人は平和ボケしている云々と、ハゲ散らかした有識者だか評論家だかがテレビで偉そうにの賜っていた。

 『のんびりした民族だな。』当時、()()()()()()()()()()の俺は嘲笑した。


 だが、今はどうだ?目の前に映るのは大切な妹が、けだものに牙を突き立てられ鮮血を撒き散らされている光景だ。

 

 「いやあああっっ!!!痛いっ!いたいいっっ!!!」


 「莉亜ッツ!!!」


 オオカミは莉亜の背後から襲った。人の急所である首筋を狙えなかったのは、単純に莉亜のすぐ斜め後ろに毒島武子が居たせいで首を狙いづらかったからだろう。毒島は頑丈そうなほとんど肌が露出していない防具を装備をしていた為に狙われなかったのかもしれない。

 オオカミは莉亜の左肩に喰らい付いた。牙が喰らい付いたまま、彼女は前のめりに倒れる。

 恐らくだが、その場にいた6人の中で一番小柄だったからこそ莉亜を狙ったのだ。畜生の本能というのは理に適っているのだ。

 


 その光景を見た俺が最初に感じたのは怒りだ。脳から分泌されたアドレナリンが全身を駆け巡り全身に力が滾っていき、俺は妹に喰らい付いているオオカミに向かって飛び掛かった。


「離れろおォォッツ!!!」


 俺の声に反応したからなのか、それとも莉亜を絶命させる為に急所を攻撃する為なのかは不明だが、オオカミは一瞬だけ彼女を牙の拘束から解いた。

 その時、俺とオオカミの眼が合った。既に至近距離と言っていい間合いに入り込んでいた俺は殺気を全開で開放する。

 そして、ただ怒りに任せて拳を狼の頭部に叩きつける。殴る、ではなくめり込ませるように叩き込んだ。

 もし、蚊帳の外からこの光景を見ている者がいたとしたら。俺の行動は無駄で意味のない行動だと思っただろう。

 何せ今の俺の外観は特別体格がいいわけでもない若い女性であり、それどころかしなやかな肢体をしているのだから。


 だが、俺の拳はめり込むどころかオオカミの頭蓋骨を砕き、血と脳漿が炸裂しオオカミの頭部は地に撒き散らされた。

 平時ならば自身の力に驚き惚けたかもしれない。だが、そうはならず次に起こるであろう展開を予測し戦闘態勢を継続する。


「オヤジウスッ!ブスジマッ!元に戻った二人を守れッッ!!!更に敵は来るぞっ!気をつけろ!!」


 俺は咆哮するかのようにオヤジウスに命じる。オヤジウスとブスジマは莉亜の前に立ち背を向けると敵のほうに向きあう。

 

 咆哮に呼応したかのように、突如出現したかの如く茂みの中から3匹のオオカミが姿を現した。さらに何匹もの気配が辺りを支配している。


「おい!モモちゃんっ!前衛をやれ!お前本来の仕事をこなせ!」


 オヤジウスはMOMO(モモちゃん)こと従者(サーヴァントシステム)に命令を下す。

 MOMOはどこからともなく大きな(シールド)を取り出すと盾を構え、茂みから出てきたオオカミに向かって雄たけびを上げながら突撃していく。


「いくわよおッツ!!!」


 オオカミは2メートルを超す巨大な男が予想を裏切るスピードで突撃してきたのに対し衝撃を受けたのかは分からないが一瞬だけ動きが止まってしまう、それが命の分かれ目だったらしい。

 まるでダンプカーに弾き飛ばされたかのように3匹のオオカミが宙に舞った。

 強烈な衝撃で血肉が飛び散り、3匹のオオカミはボロ雑巾のように地べたに転がった。その内の一匹は臓器が露出していた。


 気が付けば俺たち6人はオオカミ達に包囲されていた。10匹くらいはいるのだろうか?

 そのオオカミたちの中でひときわ目立つほどに大きい個体が目に入った。

 周囲のオオカミと比べて二回りどころではない程に大きかった。他の個体は灰褐色のような体色をしていたが、この超大柄なオオカミは銀白色をしておりある種の美しさを放っていた。

 


 恐らくはこの群れのボスだろう。……コイツだ。

 コイツが部下に命じて俺たちを……莉亜を襲わせたのだ。

 

 ボス狼と視線が交差する。

 他のオオカミとは比べ物にならない程の圧力と殺気だった。


 ああ……そうか、おまえが……おまえが莉亜を……。


 殺す。必ず殺す。


 日本人に転生して17年ぶりに抱いた本物の殺意だった。


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