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第二十話 PvA(Another) Part-2

すみません。エリスとプレイヤーキャラでは無くなった、レイジとの会話シーンに違和感がありましたので、修正させていただきました。

従者の台詞を少し追加しました。(7月22日修正)

プレイヤーキャラクターのEFについての説明を追加し修正しました(7月23日修正)





 イカルガ・トウヤ。


 三年前まで、日本の某所にあるマンションで一人暮らしをしていた男。年齢は26歳。

 本人曰く、血筋と家柄が良すぎる為に周りから疎まれ、友達が一人もいない人生だった。

 大学受験に失敗し、親から与えられたマンションから予備校に通うふりをして、CULOにハマりこんでいた。

 毎月20万円の仕送りがあるらしく、悠々自適な貴族的生活をしていたらしい。

 これがイカルガ・トウヤが、この世界に来るまでの半生だ。


 イカルガはCULOからこの世界に来て、既に3年半が経過していた。

 その間、帝国領内の東西南北と広範囲に魔の手を展開させ、点在する集落や小さな町を襲っていたということ。

 何故、帝国や諸侯はイカルガを討伐しないのか?と訊いたが返ってきた答えは、荒唐無稽なものだった為、とりあえずレイジはイカルガの顔面に拳を叩き込む。


 イカルガは時折、感情的になり声を荒げ叫び出したが、そのたびにレイジが殴り、オヤジウスがなだめるという茶番が展開された。

 無駄話を極力避ける為、脱線しそうになると殴り、意味のない言動が増えるとその都度殴った。

 おかげで短時間で情報を収集することができたのである。




「これまで、おまえが帝国領民に非道な行為をやってきたのは理解できた。その中で気になることがあってな。それを聞きたい」


「な、なんだで、でしょうか?」


「おまえは、この世界で女性を何人も手籠めにしたそうだな?」



 イカルガが目を伏せながら答える。



「は、はい。経験豊富なほどにです!」


「イキがるな、バカ!単刀直入に訊く。()()()()()()()()()()()()()()()()に戻った?


 

 レイジの質問に疑問を抱くオヤジウス。

 この訊き方だと、イカルガは最低でも一度は元の姿に戻ったことになる。何故、この状態から元の姿に戻らないといけないのか?これほど快適な姿なのに。

 この質問に答えるレイジ。



「下品で申し訳ないがね。お前さ自分の()()を弄ってみろ、毎晩自家発電しているみたいにな」

「下品な!週一回しかやっとらん!それもジェントルにだぞよ!!!」


 そう言いながらも渋々……ではなく、割と乗り気で()()を弄ろうとするオヤジウス。


 ナニに触れようとしたとき、平静を取り戻したエリスがオヤジウスの行動に気付いたらしく、顔を真っ赤にしつつ両手で顔を覆った。

 だが、ちゃっかり指の間からオヤジウスの股間を凝視していたのを、オヤジウスとレイジは見逃してはいなかった。



「ふむ、オオン!うん!ふん!?あ、あれ?!なんでえ?!こんなの絶対おかしいよ!なんで?!

 まさか!?この歳でED!?実戦未使用のままでですか?!」



 取り乱すオヤジウスだったが、レイジがすぐさま抑えるように言う。


「オヤジウスよ、いや桜野よ。この身体な、よくできているけど人の肉体じゃない。よくできているけど違う。俺も隅々まで調べたが、プレイヤーキャラクターの身体は例えるなら着ぐるみだ。精巧に人の身体に近く作っている着ぐるみ」


「隅々って……くっそお!!!オレも女キャラで作ればよかった!一生の不覚!!」


「こんなことで一生とか言われてもなあ……」



 いつものバカバカしいやり取りを、再びやれることに内心喜びを覚える二人だった。

 だが、こんなことをいつまでもやっている場合では無いのだ。

 それでも情報は得なければならない。これからの事を考えるのであれば……。



「言え、どうやって……あ、ちょっとまったエリスさん、オヤジウスのそばに行って、できれば後ろに回ってくれ」


「???え?何をいっているんですか?」




 どうやらエリスはレイジの言葉が理解できないようだ。日本語で話しかけた為、通じないらしい。

 記憶の書庫を無理やりひっくり返しながら、レイジは実に17年ぶりに()()()()()()()で話しかけた。



ぼら、だっどぜい(ほら、さっさと立て)エリスざばよ(エリスさん)、オヤジウスばの後ろざ行げや、早ぐすんべざ』


「え?え、オヤジウス様の後ろに行けばいいんですね?」


『ぞだ、早う』


 聞き取りづらく、それもえらく訛っていて、恐らく地方いや辺境あたりの方言だとエリスは推察する。

 妙に思いながらも、指示に従うエリス。

 エリスはオヤジウスの後ろについた形となる。

 

 レイジはオヤジウスとエリスから少し離れていき、丁度イカルガを挟み込む位置につく。


 イカルガに向き直り、再び訊く。



「で、どうやってプレイヤーに戻ったんだ?教え……」



 言い終わる前だった。

 消沈していたはずのイカルガが、勢いよく立ち上がり絶叫すると同時に大EFスキル(大魔法)をぶっ放したのだ。


 

「しねぇぇ!!!!!死にぞこないがぁぁぁ!!!!!!!!!!!」



 イカルガがレイジに向けて放った大EFスキル(大魔法)

 【灼熱(カリドゥム)暴風(ウェルテクス)


 スキル使用から発動まで、長い時間(チャージタイム)がかかるが、発動すれば圧倒的な威力を誇る。

 CULOにおいて、すべての攻撃スキルの中で破壊力に着目して選び出すとすれば、3本の指に入る技である。


 それは炎が収束した巨大な熱風が、地を這う巨大な蛇の如く、レイジに向かって放たれた。

 自然界ではありえない程の膨大な熱量が、通過上の障害物をすべて巻き込んでいく。


 そこに遮るものは何も無かった。

 巨大な木も、草も地面も、生きるものそうでないもの全てを巻き込み、焔の暴風はそれなりの大きさを持つであろう、この森を飛び越え別の森と丘まで到達し、大地を穿った。



「あは……アハァ!!!すげえ!すげえ威力!!!初めて使っちゃったぁ!!!()()()()()()()()いままで遠慮してたのにぃ!!!

 はは!!あーEFゲージは空になっちゃったけどぉ!すっごい威力だぁ!!もっと早くに、()()()にもつかっておけばよかったぁ!!!

 すごーい!ボクってやっぱ最強!!!

 アハは!は……ごヴぅっ?!!!!!!!」



 ごく僅かな時間、勝ち誇ったらしいイカルガだったが。

 いつのまにか、側面にいたレイジに殴られる。

 その衝撃は潰れかけていたイカルガの顔面を完全に砕き、彼の顔面は青い光と同じ色で発光する物質をまき散らしながら破砕された。


 強烈な閃光を発しながら、イカルガの肉体は消滅していき、やがて光は収束していく。


 光は徐々に収束していき、その光の弱まりに同調するかのように、男の姿が明確になっていく。



 やがて、男の姿が完全にその場に現れた。


 イカルガ・トウヤの()()()のお出ましだった。


 

 中から出てきた人間は、意外にも身なりのいい格好をしていた。

 癖っ気のある黒髪だが、丁寧に切りそろえてあり、服装は貴族が着ているような仕立てのいいもので、この世界で手に入れたモノだろう。



「いやはや、その姿になれば、実演できるな?丁度良かったじゃないか」



 レイジは事も無しにいいのける。

 イカルガは、ぼう然といった表情でレイジに問う。



「ど、どうしてっ?!何故僕が撃つタイミングが分かったっ?!」



 自身の身体に付着したホコリを払う仕草をしながら、レイジは答える。

 それは幼児に、ごく当たり前の常識を説明するように。




「俺たちプレイヤーキャラクターが使用するEF(エーテルフォース)ってのがあるだろ?もちろんそれはCULO(ゲーム上)の話なわけだけど。

 この世界でも俺たちはEFスキルを使ってる訳だけどさ。

 アレな、動力源はEFじゃないんだよ、仙気を使ってるんだよ」


「な、なんの話だよ?!ボクが訊いているのは……」


「まあ待てよ、俺の前世は【仙技使い】だからな。仙気の流れや動きを察知するのは商売上の必須だ。つまりどういうことかと言うとな……。

 感じるんだよ。おまえらから仙気をビンビンとな。

 プレイヤーキャラクターじゃなくなった、今なら特に!

 イカルガよ、お前がレアアクセサリー?の効果でスキル使用エフェクトの有無をごまかしても無駄だ。

 わかってたんだよ。

 ()()()()()()()()()()()()()ときからな」




 再度、茫然自失となる元イカルガ某。

 その顔には一太刀浴びせて逆転!等という野望は残されてはいなかった。


 オヤジウスは先程から気になったことがあった為、レイジに問う。



「なあ、聞きたいんだけどさ。

 センキってなに?あとレンセンコウとかなんか、いろいろ説明してほしいのだけれど」


「ああ、仙気(せんき)ってのはこの世界の大気中に含まれている、動力(ちから)のことだ。

 で、仙気ってのを自分の体の中で使えるようにするためにやる作業が仙錬(せんれん)、仙錬してつくりあげた動力(ちから)錬仙(れんせん)だ」


「んっ!わかりにくい!ちゃんとおせーて」


「あとで莉亜のところへ戻る途中で、走りながら教えてやるよ」



 オヤジウスに我慢するよう、促しながら答えるレイジ。





「さて、時間も無いな。もう一つ訊きたいのだがな。お前の本名……まぁ、それはどうでもいいや。

 改めて訊く。

 おまえは何故ここにいたんだ?どうしてこの森にいた?

 これまでの話から何となく想像はできるが……。答えろ」



 口を開け自我喪失に陥っている、元イカルガ某に威をもって迫るレイジ。

 喪失されかかっていた自我は、あっさりと元イカルガ某へと帰還した。




「は、はいいい。日課ですっ!従者(サーヴァントシステム)と共にこの辺を見回りしていましたっ!!!

 朝、昼、晩。レーダーに反応があったら向かわせるようにしているんです。

 あ、ぼ、ボク、い、いくつか帝国領内に拠点を持っていまして、そこに一体ずつ配備しているんです。ハイ」


 

 かなり重要な事をサラッと漏らす、元イカルガ某。



「何ぃ?お前が連れている従者(サーヴァントシステム)は何体いるんだ?!」

「さ、3体です。この辺りに1体配置しているんです。は、はい」




 その時だった。何者かが、草藪の中から飛び出した。

 飛び出した場所はそれなりに距離があった為、正体を見定めるのは容易だった。



「ご主人様から離れろっ!!変態パンツ!!!」



 感想か表現かは分からないが、その言葉が指す意味が自分であることに、微かな衝撃と驚きを隠しつつ対峙するレイジ。



 飛び出して来たのは少女だった。


 黒髪のツインテールが美しく映える、小柄な体格が印象的だった。

 装備は戦士系(ウォーリア)の定番である重装アーマーを着ている。

 

 彼女の装備を見て、レイジの記憶に偶然思い当たる。

 その装備は、CULOの課金アイテムカタログで見たことのあるものだ。



「この世界を統治するであろう、偉大なる帝王!その名はイカルガ・トウヤ様!!!

 その偉大なお方に使える、忠実な雌奴隷こそがこの私!!!」


  


 レイジは頭が痛くなってきた。主人がコレならば従者(サーヴァントシステム)もアレかもしれない。



「ご主人さまぁ!今のうちにぃっ!!!お逃げくださいっ!!!!!!!」



 少女は主人の戦線離脱を促す為、がなり立てる。

 そして、その場にいた者たちに対して、己の存在を誇示するかのように、声を嗄らして叫んだ。

 

 少女の声は、見た目に合わぬ少々かすれたハスキーボイスで、どことなく色気を感じさせる。

 

「よぉく聞くがいいぃ!!!私の名はぁスズメ!!スズメちゃんとお呼びっ!私を恐れ!その強さを敬い!!

 そして……

 

 死ぬがいいわ!変態パンツとその一味め!!!!」



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