第十七話 PvP(ランクマッチ) Part-7
「#%&*!!!逃げろぉぉぉ!!!!」
零司という本名を叫んでしまった為、暗号が付与されたかのような音声が飛ぶ。
「やめろおおおお!!!!!!!!!!!」
視界の中で起きていることが、スローモーションになったかのような錯覚を覚える。そして、その光景を明確に見てしまった。
イカルガの大杖から放たれた猛き灼熱の断絶刃は炎の剣となって、ジスエクスの身体を斜めに切り裂いた。更にトドメを刺すかのように、逆の方向から斜めに炎の刃が襲い掛かる。
ジスエクスの身体に、光の亀裂が十字に走る。
「あ、が…………。そんな…………いつ…………どうやっ…………て…………」
ジスエクスの身体から白色に輝く粒子が溢れ出し、やがて収束した光がジスエクスの身体を包み込んだ。
「#%&*ィィィ!!!!!!!!!」
俺は叫んだ!叫び続けた!
脳は現実を理解していた。
だけど感情はソレを受け付けない。
そして、ジスエクスの肉体は崩壊していきながら消失した。
それはCULOのプレイヤーキャラクターが、死亡判定を受けた際の演出と同じものだった。
そして消失した瞬間、ジスエクスが消滅したその場から、閃光と共に人影が出現した。
それは徐々に人間の形へと構築されていった。
すべての構築が終わり、まばゆい光が消えると同時に視界に映った光景にオレは安堵した。
いや、安堵してしまったんだ。
目の前にはオレが良く知った人間が現れる。
新瀬零司だ。一日ぶりだろうか、その姿を見るのは。
「あ、あれ?生きてる?あれ、俺に戻ってるじゃん」
零司の姿を捉えたと同時に、オレは次に展開されるであろう事態に恐怖し、零司を守る為、【テクノプリースト】のジョブスキル【触れられざる聖域】を使用し起動させる。
でも、わかっていた…………。スキルの作動が間に合わないということが…………。
【触れられざる聖域】はスキル発動準備中も移動が可能だ。
オレは零司に駆け寄ろうとする。自分の肉体をもって盾になる為に!
「レイジぃぃぃ!!!!!!!!!逃げろぉぉぉ!!!!!」
「アハァ、ざんね~ん。おっそ~い♪」
イカルガは、手をかざしレイジに向けて火焔槍を使用する。
その際、スキル発動前に生じるはずの、スキル使用準備エフェクトである魔法陣は、一切足元に出現することは無かった。
火焔槍が、レイジの肉体に至近距離から直撃する。
レイジの肉体を強烈な炎が焼き尽くし、人の形を保ったまま吹き飛ばされた。
物理現象を無視したありえないほどの強烈な炎は、大の字になり倒れたままのレイジ肉体を燃やし続けていた。
「うあああああああああ!!!!!!!!!!!
あ…………そ…………んな……………………。」
体が脱力していく…………。親友が目の前で死んだ…………。事実を感情が否定する。
俺はその場から崩れ去った。
何も考えられない…………。
どうしてこうなった?何を、何処で、如何して間違ったのか……。
そうだ…………。そもそも俺が誘わなければ…………。俺がCULOをまたやろうなんて言わなければ…………。
俺のせいだ…………。
俺の責任だ……………………。
俺が悪い…………………………………………。
「あれぇ~どうしたのぉ~オトモダチが死んじゃったねぇ~でもぉ~すっごい奇跡が起きたよぉ~」
「あ…………。え…………?」
「ほらぁ、みてごらんよぉ~オトモダチの死体をさぁ~バラバラになってないでしょう?」
レイジの遺体は人の形留めたまま、煌々と空に向かって燃え続けている、姿の詳細が分らぬほどに…………………………………………。
「いっつもならさぁ~火焔槍食らった人間ってさぁバラバラになっちゃうんだよねぇ!!!あ、そうそうCULOの火の魔法ってさぁ、思ったほど延焼能力が少なくてさぁ?この森だってあれだけ焼いたのに山火事とかにはなってないでしょう!!!
俺ねぇ~調べたんだよぉ~CULOの火魔法ってさぁ燃える効果よりも衝撃力っていうか爆発力?破壊力かなぁ?そっちに比重を傾けてるらしいのだよねぇ!!!ふしぎだねぇ!!!!
アハァ!!まぁ何が言いたいかっていうと…………。」
イカルガは一息ついてから、言った。
「オトモダチの死体がぁ!!!!大の字でぇ!!!!人の形をしたまま燃えてるっていうのわさぁぁ!!!初めてのことなんだよぉぉぉ!!!!!!!すごいと思わない?!いっつもバラバラバララ!!!!なのにぃ!!!!すご~い!!!!!ママぁ~ほめてほめてぇ!!!!やっぱりボクは選ばれた子なんだってぇ!!!ボクを認めてぇ!!!やっぱそうなんだってぇ!!!!!!!!!!!!!」
イカルガは絶叫し、破顔し、喜びに打ち震えているようだった。
オレは怒り狂い、悲しみから嗚咽し、顔をぐしゃぐしゃにして、ヤツに向かって喚き散らす…………そんなことはしなかった。
やったところで事態は何も解決しないのだから。
自分がそういうタイプの人間ではないことは、以前から理解していた。
だが、いざそういう場面になってしまうと、なんと人間味がないのかと自分で自分を卑下したくなる。
悲しむのは後からでもできる。仮に死んでも、あの世が本当にあるとすればそこで詫びよう。
自分の中にあるのは深い悲しみと静かな怒り。
やるべきことはひとつ、このイカルガという友の仇を滅する事だけだった。
俺は決意を持って立ち上がる。脳裏を数々の思い出がよぎっていく……。
振り払うように意を決する。感傷的になってはダメだ。冷静にやるんだ……。
「エリス、エリス!立てるか?今すぐここから逃げるんだ!!!」
俺はエリスに向かって立ち去るよう催促する。
「ぐすっ、ら…………。だ、だめです…………。腰が……ぬげでじまっで…………」
目の前で起きた常識離れした惨劇を目撃し、恐慌状態になってしまったのだろうか。
可憐な彼女の顔立ちが、涙と鼻水でひどい事になっていた。それでも嗚咽しながら答えてくれた。
「わ、わだしの事はほおっておいて…………逃げて下さい…………」
彼女はこの世界で初めて出会った人間ではあるが、正直なところを言えば、命をかけて守るだけの関係にあるわけではない。
それでも、彼女を守る。それはやってのけなくてはいけない事だと思った。
レイジの為に、やってのけるのだ。
【触れられざる聖域】
効果時間はEF残量に依存。ドーム型の防壁フィールドの耐久性能は物理、EF攻撃を一定以下のダメージ量なら無効化、それ以上なら軽減。
この世界での仕様だ。
俺はEFスキル使用待機時間が過ぎ、使用可能になった【触れられざる聖域】を作動させる。
視界内に表示されたカーソルをエリス・エリアスに合わせようとする。すると自動でカーソルがオートセレクトされた。
どうやら彼女はレイジの妹とは違い、認識されているらしい。
【触れられざる聖域】が発動し、地面にへたり込んでいるエリス・エリアスの周囲を包み込むように、ドーム型の緑色に発光した防壁が展開される。
これでいい。俺には必要ない。自分を守るために二つもジ・サンクチュアリを展開させればEFゲージが、ガソリンタンクに穴が開いた車のように消費しつづけるだろう。
俺はイカルガに向き直る。イカルガはにやにやと下種な笑みを浮かべている。
俺は冷静にヤツを倒す為の方法を思索する。
脳裏に浮かぶのは、ヤツを倒せる可能性がある、唯一の手段。
【聖なる一撃】
通常攻撃に属するEFボール以外で、唯一の遠距離攻撃手段であり、それは上位に属するEFスキルである。ただし、大スキルではない。
この上位EFスキルは、相手が放った大魔法及び大スキル以外の遠距離攻撃を、1.7倍の威力を持つ聖属性の光弾に変化させて相手に返す技である。
スキル発動後、任意のタイミングでカウンター防壁を発動させ、相手の遠距離攻撃を受け止めた後、こちらの攻撃として光弾を撃ち放つ。
もちろんリスクはある。
自身へ飛来する遠距離攻撃を、直撃寸前のタイミングでカウンター防壁を作動させなければならないのだ。
更に、難しい要素がもう一つあるのだが……。
実のところDULOにおいて、【聖なる一撃】を俺は結局ほとんど使用しなかった。あまり意味がない技だと判断したからだ。
そもそもテクノプリーストは防御型支援特化の職業である。
パーティプレイ中の主な働きは、自身の防御力の高さを利用し、通常のプリーストよりもラインを上げて最前線に近い場所で防壁&回復フィールドを生成したりなどして支援するのが仕事である。
攻撃する暇があれば支援に回ったほうが効率がいいのだ。余計なことができるのは敵が雑魚のときぐらい。
どうであれ。本物の実戦で使うのは今回が初めてだということ。
いいさ、怖いものはない。レイジの為にもやってやる。
来いよ、キツイのを一発ぶち当ててやる。
その為にはひとつ芝居を打たなければならない。
臆病者のヤツに、強力な一撃を撃たせるのだ。できるだけ強力なスキルを。
「ねえ、ひとつ聞きたいんだが?」
俺は涙をぬぐい、努めて明るく振る舞う。強気で行け。
「お?なんだね?命乞いの方法かなぁ?」
ニヤニヤと醜い笑みを絶やさないイカルガ。
イカルガはエリクシードを取り出し、使用した。
無くなっていた下半身が閃光を放ちながら再構成されていく。
ホント、この身体は人間のとは違い過ぎる。
「オマエの火焔槍あるじゃないか?思ったより凄い技なんだが?あれって下位スキルに属するだろ?フォルティスマギカならもっと効率のいい技があるだろう?だのに火焔槍ばかり使うし、何か理由があるのか?」
イカルガの表情が変わる。食いついたようだ。
「おお……。よく気付いたな。そうだボクの火焔槍は普通のとは違う。無論、10段階の個別スキル強化はしてる。それでも普通はここまで使える技にはならない。燃費もたいして良くない、威力もイマイチ、ただぁ……遠距離攻撃としてのリーチはそこそこあるかなぁ……」
イカルガは話を継続する。
「ボクが単に火焔槍を気に入っているというのもある、できるだけ火炎系列のスキルで固めたいというのも理由だ。だけどぉ、一番の理由は【スキルジョブレベル】が遠距離攻撃の中で一番低いということかなぁ?」
「どういうことだ?」
イカルガはフフン、と勝ち誇るかのような仕草をすると。左の中指にはめられた指を見せつけた。
「いいかあ?この指輪はねぇ【威厳のリング】といってねえ、PvPでマスター階級に到達すると貰えるアクセサリーアイテムなんだよぉ。効果はどれでも好きなEFスキルを一つだけ強化できるんだぁ。強化内容は、EFスキルの消費量が9%減少、攻撃力が5%アップ、射程が5%アップとぉスキル使用から発動までのスキル使用待機時間が8%減少だったかなぁ?ほかにもあったとおもうけどぉ~
でもねえぇ?このアクセサリーには隠し要素があってねぇ~」
ヤツは俺を見下すようにして話を続ける。
「【威厳のリング】に設定したEFスキルの【スキル習得時に必要だった最低限のジョブレベル】と使用者、つまりボクだねぇ、のトータルジョブレベルに差があればあるほど効果が増幅するんだよぉ~
火焔槍はジョブレベル5で覚えられる技だ。現在のトータルジョブレベルは115だ。わかるかなぁ?それだけの差が効果を増幅させるんだよぉ~」
なんてことだ……。下級スキルは上位職になれば使い物にならなくなることは珍しくない。だが、そんなものがあるなんて……。
一体どれだけの効果アップ率なのか。
「ふふん、詳しいデータはボクも知らないよ。でもねえ、かな~りいい感じだよぉ」
「……なるほど。わかった。もう一ついいか?」
「なにさぁ、はやく殺したいんだよぉ~もういいでしょー」
「まぁ、そういうなあと一つだから
何故おまえのEFスキルは先ほどと違い、スキル使用から発動までのスキル使用待機時間に発生する魔法陣、つまり待機エフェクトが表示されなかったんだ?
だからこそ、レイジも俺も気が付かなかったんだが」
「ああ~それねぇ、それはこいつさ」
じゃーんとセルフ効果音を付与しながら、イカルガは右の中指にはめられた指輪を見せつけた。
「よぉ~く見ろよぉ~これはねぇ!PvPでグランドマスターという最高峰の階級に到達するとぉ貰えるアクセサリーなんだよぉ!!!
アイテムの名称は【隠遁のリング】全EFスキルの使用から発動までの間に発する待機エフェクトが無くなる上、全ステータスとスキル能力が1%アップするんだぁ!!!しょぼい!!!
ふぅ~でもコイツの本当の力はこの世界に来てからわかったよぉ~」
イカルガは息を吸いなおすと、くわっと目を見開いてから絶唱するかのように叫ぶ。
「こいつを付けてEFスキルを使うとぉ~いきなり撃たれたと思うらしくてさぁ!!!!!!!!!!この世界の連中全然反応できねぇでやんのぉぉぉぉ!!!!!!!!!!
みんなぁ!!!『どうして?何故?』ってな感じでぇ!!!!死んじゃうのよぉぉ!!!!!!!
この世界の連中はぁぁ!!!!雑魚ぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!
詠唱とかいうのをやらないとぉぉぉ!!!!魔法を使えない!!!!!!!!!!
ボク様ぁ!!!!さいきょおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
お前だって魔法陣が出なくなるだけで、詠唱みたいなシークエンス処理はしてんだろ?と俺はひとりごちる。
この身体の内部ではそういった処理をしているのかもしれない。こっちはEFスキルの使用する為の操作をするだけだが。
「ねぇ!!!もういいでしょぉぉ?!いいよねぇ!?そろそろ殺したいなぁぁ!!!!いいよねぇ!!!!!」
イカルガは火焔槍を放つ。なんの前触れもなく破壊の焔が俺に向かってくる。
ダメージを減らすべく基本操作の一つである、EF防御を作動させたが、膨大な火炎の力が、こちらの防御をものとせず俺の身体を焼く。それよりも厄介なのが衝撃力だ。
身体が後方に飛ばされる。ヤツが説明した以上のバフ効果があるらしい。
初めてEF防御で防いだ時とは威力も性能もまるで違っていた。
キツイ……。
EF防御はPvPにおいて駆け引きを促す為の要素のひとつとして導入されたとレイジは言っていた。
だが、こいつはどうだ?!やつは先ほどの戦いの時とは、威力がまるで違う。
先程までアクセサリーを付けていなかったときの下位スキルの威力とは、別次元だった。
くそ、どうすればいい?スキルを使うか?いや、ダメだ。【聖なる一撃】の為に残しておかなければならない。
「なぁ~?エリスちゃんに使っているEFスキル解除すればぁ?そうすりゃもうちょっと生きれるかもよぉ」
イカルガは浮遊スキルを使用して、上空から撃ってきた。
俺はとにかく動き、直撃を避けるよう努める。
イカルガの戦法は、発生の早い下位スキルを徹底的に強化した上で弾幕を張り、距離を詰めさせない。
戦術的には正しいだろうさ、装甲が薄いのが魔法職だからな。
このままではジリ貧になる。
やはり、煽るしかないだろう。
猛き灼熱の断絶刃を奇襲でしか使えなかったヤツだ。イカルガの本質は臆病者だ。俺は確信する。
「おい!遠距離からパシパシ撃つだけかよ?空を飛んでいるんだ。もうちょい威力のあるスキルを使ったらどうだ?」
「ボクはこの技が好きなんだもーん!!!!」
煽りが足りないらしい。もう少しアタマに来るやつをお見舞いしよう。
以前、零司から聞いた話と合わせて脚色してぶちかましてやる。
「なあ、グランドマスターってどういう条件でなれるんだ?」
「な、なにぃ!?こんな時にかっ……。フハハ!知りたいのかっ?!
いいだろう!教えてやろう!
バトルポイント50000以上になるとグランドマスターになるのだっ!!!」
にやり、食いついたな。おまえはCULOがすべてだった、とか言っていたもんなあ?
あと、レイジの言っていた通りだ。そう、一定のポイントに到達すると、そのポイントに合わせた階級へクラスチェンジするんだった。
「なあ、バトルポイント50000以上ってのはPvPでもトップのことなのか?おまえはそうなのか?」
「な、何?!当然だろう!ボク様が世界最強だぞ!なんたってグラマスなんだぞ!最高峰だぞ!世界ランキング一位だぞっ!!!」
それは違う、それぞれの階級にはポイントさえ到達すれば何人でもなれるのだ。
レイジが言うには最高階級のマスターは何人もいて、ありがたみがないと言っていた。
「昔から最高峰だったのか?一年前は?マスターが最高ランクだったときだよ、国内ランキングは一位だったのか??俺ランクマやらないからさぁ~知らないのだよね~」
「決まってるだろ!ランキング一位だよ!!!ボクはβテスト時からやってるんだ!!最初から最後まで最高峰なんだぁ!!!!」
「ほう?プレイヤーネームは【イカルガ・トウヤ】で登録してるんだよね?あれ?おかしいなぁ」
「な、なにがだっ?」
「俺の友達が一年前までやっていてマスターに到達してな。世界ランキング446位、国内ランキングは35位だったそうだ」
「そ、それがどうしたっ」
「イカルガ・トウヤなんて名前、無かったってさぁ?おかしいねえ国内ランキング50位にも入っていなかったって?」
「なっ!?」
イカルガは顔面蒼白になっている。やがて顔が真っ赤になりだした。
「な、何かの間違いだっ!そ、それにいまはっ!国内ランキング34位だぞっ!これは間違いないぞっ!」
「なるほど、何かの間違いかもな。いまはランキング34位、なるほど」
「そ、そうだっ!ボクは最強なんだっ!」
「あの、ランキングトップじゃなかったの?」
少々バカ臭くなってきたが、キチガイ相手だからしょうがない。
「結果的には一位になるはずなんだっ!これは決められていることなんだっ!!!
CULOが終わるからいけないんだっ!でもこの世界に来たっ!ボクはここで最強になるんだっ!!!」
イカルガは喚き散らす。こいつにマトモに対応するとアタマが痛くなってくる。
イカルガは俺を見下ろしながら睨む。その目は狂気に染まっていた。
「あのさぁ、思うのだけどね。
CULOは丁度一年前から人が急激に減り続けて、そして急なサービス終了のお知らせになったわけだけどさ。
ランクマもそうじゃないのか?」
「な、なんだとうっ?」
俺は続けて言葉を紡ぐ。
「トップランカーの人たちがごっそり抜けたって、俺の友達が言っていたんだよ。それでそいつも辞めたんだ。丁度一年前にな。
おまえ、その空いたところになんとか入り込んだだけじゃないの?
いわば空き巣だね」
「ち、ちがうっ……」
イカルガの眼が血走ってきた。目には怒りが浮き出ているようだった。図星かな。
「それも国内ランキング34位?すごいようで微妙だよね?世界ランキングは?どのくらい?ん?どうした?おしえてよ」
「だ、だまれっ!」
イカルガの血走った目をにらみつつ、俺は更に煽りを入れることにする。
「あのさぁ、前にフォルティスマギカ使いのトップランカーの試合動画を見たんだよね。有名なプロゲーマーの【KOSA】さんという人だったかな?」
「そ、そいつがなんだっ!KOSAなんざボクの足元にもおよばないぞっ!!!」
感情の起伏が無い口調で俺は返答する。
「へえ、それはすごい。で、こっちの話はつづくのだがね……」
トップランカーの試合の内容を説明するため、俺は不適な笑みを浮かべ、イカルガをにらむ。
「そのKOSAさんはすごかったよ。遠距離攻撃は牽制や目くらましにしか使わない。ほとんど使わない。
それどころか、猛き灼熱の断絶刃を使って、ほぼ接近戦ばっかりなんだぜ?すごいよねぇ?あれがトッププレイヤーなんだよなぁ。
いやー俺の知るフォルティスマギカは、ただ遠距離からパシパシ撃つだけ。いやーつまらないねぇー」
「な、な、なんだとおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
「あれ?オコですか?じゃあ貴方、自称トッププレイヤーですよね?できるんだよね?」
「き、きまってるだろおお!!!ボク様は最強なんだっ!それくらいできるんだっ!!!」
よし、乗って来た。こんな見え透いたバカすぎるやり方で、引っかけるのは気が引けるが親友の仇なんだからな!!!
来いよ……。必ずやってやる……。
俺は【聖なる一撃】を使用した。任意で作動させることができるまで、あと少しだ。やつが攻撃してくるまでには間に合うだろう。
【聖なる一撃】には一つ利点がある。
それは、この【聖なる一撃】を使用しても、カウンタースキルである都合上なのかはわからないが、使用エフェクトが発生しないのである。発生するのは相手の攻撃を受け返す時だけ。
この仕様なのは、いずれPvPに参戦する職業だったからなのだろうか?
「い、いくぞぉぉぉ!!!!ボクのテクをみせてやるからなぁ!!!!」
「来いよ」
うまくいくかは分からない。
でも見ていてくれレイジ。
平然と命を懸けて、俺は戦う。




