神戸の美女。
「どう? 似合うでしょ?」
鮮烈なドレスを身に纏い、彼女は偉そうにふんぞりかえる。
胸元は細やかながらも、華奢な括れ。
階下には、忙しなく行き交う人々が彼女を見上げる。
よく見れば、そのような暇はなかった。
彼等は皆、一度たりとも目を合わせない。
ギラギラと魅せつけているというのに。
誰かが言った。
遥か高い極みから。
消費電力に準えたのか。
または製作費用か。
百万ドルの夜景。
高台に聳え立ち、見下ろすも。
やはり際立つのだ。
何処からともなく
汽笛が響き渡る。
更には、彼女の輝きに釣られる男達。
標識としているらしいが。
決して近付こうとはしないのだ。
波も音を立てない港。
観覧車が際立つのだが霞む。
夕闇に黄昏るカップルは
互いに頬を寄せ合う。
山頂で鍵をかけたのちに。
神の戸は。
摩耶山頂や北野にて。
若しくは、卸す風を纏う。
6の甲山。
兜の上で座りたもう。
凱歌は一先ず忘れらるる。
景色に酔いしれ、息は白む。
荘厳、華麗な電飾美。
関西屈指の風景に。
凍える心は澄み渡る。
夜空に月を携えて。
未だ尚、映える星々が。
誘う涙の旋律か。
締め付けらるる厳しさに。
くるまる毛布に癒されて。
車中はラジオが鳴り響く。
ああ、寂しくも徒然に。
うら。
六甲は今宵でさえ。
絶え絶えしき、喘ぎに満たる。
そんな事は露知らず。
彼の熟女は洩らすのだ。
皆の欲を良かれよと。
我、関さずと佇んで。
そこはさあ。
何処かは考えるなかれ。
百万ドルの夜景なり。
兵庫は兵士の倉なりて。
だが観る様は多忙なり。
今宵も皆は寝静まり。
明日を願って
灯りは点る。
明日を待ちわびて。
詩的……かなぁ?
是非、神戸に立ち寄った際は。
夜景を御覧くださいませ。