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都市伝説の謎は恋とともに  作者: 林 雅
都市伝説か現実か
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第一話

 この世には本当に宇宙人や異世界人、幽霊なんかが存在するんだろうか? もし、存在はしずに、そんな存在の話は全て映画や漫画のような創作だとするなら…。そんな事を考える俺が住んでいるこの広い世界がとてつもなく小さく思えた。昔の人達は地平線を見て、その先に何かがあるのかを考えていたかもしれない。そして、そこから新しいものが見つかっていった。でも、今の俺達はインターネットを見れば、この道の先に何があるかなんて簡単に分かってしまう。それはこの世界が小さくなったっていう証拠なんじゃないだろうか?


 俺がこんな事を秋の暖かい色に染まった綺麗な景色を無視して考えているのには理由があった。それは最近になって爆発的に広がり始めていたある都市伝説のせいだった。異世界の住人がどこから入ってきたかは知らないが、この日本のどこかにいるというものだ。その異世界人の耳は長く、この世のものとは思えないほど綺麗で豪華な金色の瞳を持っているらしい。そして、そのことから、その異世界人はネットの中でエルフと呼ばれている。


 また、どこかの研究所がエルフたちを捕まえて、情報を隠しているなどの陰謀的な要素もこの都市伝説が一気に広まった原因だと思う。

誰が作ったのか、それとも本当なのか分からないこの都市伝説は今、この日本で、特に若者の間で話題の元となっていた。


 侵略されるんじゃない?

 なんで来たんだろう?何が目的なんだ?

 どこから来たんだ?


 そんな疑問の声がネットでは騒がれていた。

 だが、俺が疑問に思ったのはそのエルフだけではなく、エルフ達に反応する人達に対してもだった。


 何故、皆は異世界人が攻めてくると思うのか?

 何故、皆は異世界人に敵対心を持つのだろうか?


 たしかに、映画とかでは宇宙人や異世界人がこの地球に来る時というのは侵略を目的に来る事が多いと俺も思う。でも、もしかしたら異世界人たちは何かを救いに来たのかもしれない。もしかしたら、俺達に何か新しい技術を伝えに来たのかもしれない。

 

 そういう事を多くの人が考えられなくなってしまっている。それが俺がこの世界が小さくなっていると感じる原因の一つでもあった。


 俺はこんな事を一人の時はよく無意識に考えてしまう。高校からの帰りの道はいつも一人で毎日自然と考えてしまう。頭がいいと思われたいからなのか、それともただ単に考えてしまうのか、俺が何故考えるのさえ分からなかった。そんな俺を冷たい風が肌を切り裂くように通り過ぎ、俺は我に返るとともに学校指定の紺色こんいろのコートに首をすくめる。時間が経つにつれて寒さは増していき、秋の終わりと冬の訪れを心身ともに感じられた。


 この時間帯、俺が今歩いている小道には滅多に俺以外の人を見ない。だから俺は一人になってしまう。それが、普通だと思っていた。しかし、今日は違い、前からは俺達の頭上から降り注ぐ赤と黄色の葉には合わない、白い服を着た人がうっすらと見えた。

 

 誰だ? いつもだと人はあんまり通ってないはずなんだけど…。


 心に浮き出る好奇心は俺の歩く速さを少し早くさせた。前から歩いてくる人には不自然だとは思われないように、少しだけ。

 俺がその人に近づいていくにつれて、その人がまっすぐ歩けていないことが分かった。目が見えていないような感じではない。疲れているというか、すぐに力尽きそうな人の歩き方だ。


 もう少し歩くと、俺はその人の違和感に気づいた。肩よりも長く伸びたつやのある綺麗な黒髪からは横に伸びた耳が見えたからだ。

 しかし、その人はその長い耳の存在を忘れさせる程に綺麗な顔立ちをしていた。

 素直に言うと一目惚れだった。疲れた顔でもその人の美しさは今まで会ってきた女の人を軽く凌駕りょうがしていた。

 

 俺とその人がすれ違う時、心臓が高鳴ることで俺は自分が本当に一目惚れをしたのだと実感した。一目惚れなんてするはずがない。この道で今日のようにそう頭で呟いていたのは一週間前だというのに、俺は今日見知らぬ人に恋をしてしまったんだ。


 俺達が横並びになった瞬間、俺はその人に声をかけることは出来なかった。初めての一目惚れだからだろうか?突然の感情が口を塞いでいるかのように、喉元からは一切の音が漏れることも許さなかった。

 

 「あ、あの…」


 やばい、声かけちゃった。変な声で…。

 すれ違った後、今の言葉が俺が力を振り絞って出せた唯一の言葉だった。


 俺が声をかけても、その人は振り向きはしなかった。というよりも、俺の声が聞こえていない様子といった方が正しいと思う。

 その人は千鳥足で歩いていく。一歩一歩フラフラと歩いたかと思えば、力が抜けたように倒れてしまった。


 え、まじか、大丈夫かよ…。

 俺はすぐにその人に駆け寄り、肩を揺すりながら声をかけた。


 「だ、大丈夫ですか?俺の声聞こえてますか?」


 その人には起き上がる気配はないどころか、反応する気配もない。


 やばい、どうする俺? 


 俺の心の中の焦りと動揺が額から汗が流れ始める。

 俺は横に倒れていたその人を仰向けにすると、 その人はまるで童話に出てくる眠りから覚めない姫のように思えた。そして、綺麗なその人はネットで語られているエルフのように俺たちよりも長い耳を持っていた。


 もしかしたら…。

 そんな気持ちと探求心が俺の右手をその人の目元に伸ばしていた。その人の瞼を開けると、今俺の目の前で倒れている人が都市伝説の存在であり、都市伝説の存在ではない事が分かった。輝く宝石のような金色の瞳。その人が俺達と同じではないと思わせるには十分なほどに美しかった。

 その美しい顔を見るとともに一つの疑問が浮かぶ。この人が人間じゃないとすれば俺は何をすればいいんだ?と。


 救急車を呼ぶ?

 この選択が俺の前にいる人が人間の場合は妥当だろう。だけど、今俺が見ているのは人間ではない、都市伝説でいうエルフっていう異世界人だ。

 救急車を呼んだとしてもパニックは避けられない。しかも、都市伝説、あくまでも噂だけど、このエルフっていう人達はどこかの研究所に追われている可能性がある…。そして、その研究所で何が行われているのかは誰も知らない…。

 考えろ!考えろ!


 俺は周りを確認しながら、緊張感で冴えない頭を全力で働かせた。

 幸いにも誰も俺たちの事を見てはいない…。

 この考えている間、時間にしては短い間だったが、俺には長く感じられた。

 

 そして、俺は一つの決断に終わった。家に連れてから考えよう、と。

 

 俺は持っていた高校のバッグを後で探しに来れるように道のはじに置いておき、その人を背に乗せ、歩きだした。

 幸い、俺は俺が通っている高校のために一人で暮らしているから問題はないし、ここから俺の家までもそれほど長い距離じゃない。ただ、人に見られなければ問題はないんだ。

 俺はゆっくりに、だが着実に前に進んだ。一歩ずつ、一歩ずつ、まるで映画の中でスパイが敵に見つからないように俺は歩き続けた。

 

 俺は力持ちなわけではない。一歩ずつ進むたび、俺は体がどんどん重くなっていくように感じられた。もう少し。もう少し歩けば俺の家だ。


「あら、恭祐きょうすけちゃん、おかえりなさい。ってその子は誰?」


 この声が聞こえた時、俺は心臓が止まってしまうのかと思った。こんなに優しい大家さんの声でこんなに苦しむなんて。もう少し、あと少しのとこで誰にも見られないで済んだのに…。

 だけど、大家さんはかなりのお年寄りだ。普段から優しいし、特に怪しんだりはしないと思う。だとしても、何も聞かないでくれ…。


「あ、大家さん、ただいまです。いや~、友達が帰ってる途中に気分悪くなっちゃったみたいで、ちょっと俺が看病してあげようと思いまして…」


 頼むから、何も聞かないでくれよ…。


「あ~そうなんか。大変だね~。それにしても、恭祐ちゃんの友達は耳が長いね~」


 大家さん! 何でよりによってその質問? それは一番聞いちゃだめな質問なんだけど!


「……。そ、それは人気なんですよ! 今、高校生の間で耳を長く見せるアクセサリが流行ってて、それをこいつも付けてるんですよ」


「あら、そうなの? 変わった流行はやりね~」


「そうなんですよね~。それじゃあ、大家さん、また明日」


「はいよ~、また明日ね〜」


「ふぅ~」


 俺は何とか切り抜けた。本当に何でお年寄りは聞いてほしくない時に何か大事なことを聞いてくるのか…。まあ、そんなことはどうでもいい。


 俺は平常心を装いながら、自分のポケットから鍵を取り出し、家の中へと入った。あまり広くはないが、二人くらいなら全然大丈夫な広さだ。

 俺は最後の力を振り絞り、おんぶしていたエルフを俺のベッドの上に寝かせてあげた。


「はぁ~、疲れた」


 ドスッという音とともに俺は床に座り込み、無意識のうちに俺口からは緊張が解けたからなのか、また深いため息が出ていた。

 

 ベッドの上で寝ているエルフを見ると、まるで普通の人間が寝ているのではないかと感じられた。いびきも立てずに静かに寝ている。違う部分は耳と瞳の色だけで、俺達とは何も変わらなかった。

 ふと、外を見ると葉っぱが散っているのが見えた。日は徐々に沈み始め、今日という日があと数時間で終わってしまうことを感じさせる。


「あ、カバン取りに行かねーと」


 俺は玄関で脱ぎ捨てた靴を履き、ドアを開く。部屋の中の暖かい空気の中へ一気に凍り付いた空気が入り込んできた。

 俺はドアを素早く、静かに閉め、両手をコートのポケットに突っ込みながら駆け出した。

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