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(ゼロ、逃げるワイバーンとグリフォンは襲わなくていいぞ)


(そう、ですか)


(こっちは大丈夫だ。大亀の方へ向かってくれ)


(解りました。マスター)


(頼む)



 晶がゼロに念話を飛ばす。

そして新たな指令。

タケマツがこちらにいる現在、あっちの状況が判らない。

こちらでやることが残っている以上、ゼロに頼むのは正解だろう。



 フォックス達と別れたビキニアーマーの女戦士達。

彼女らが霧を抜けて来る前にタケマツが黒鎧のデスアーマーに戻った。

彼女達は弱くはない。

そして隷属の首輪があっても、魔力登録をしているのは晶ではない。

警戒は当然。




 再びビキニアーマーを拝む晶。

嬉しそうだがカヅキを気にしてか顔にはあまり出ていない。



「あー、君達は……名前なんだっけ?」


「あーしはジーナッス」


(方言なのか、はすっぱなのか……めちゃくちゃに聞こえますー)

(俺にも変に聞こえる)

(ジーナじゃな)


「イーマなの」


「ジーナとイーマな。俺はアキラだ、アキラって呼んでくれ。よろしくな」


「アキラッスね」


「イーマ覚えたの。アキラ」



 雨の中、晶とビキニアーマーの女戦士達が自己紹介。

暖かい地域だが、朝方は冷え込む季節。

日中でも雨に体温を奪われれば体調を崩しかねない。

寒くないのだろうか?心配になる。

晶の目線は一点集中。

なんたってボリュームが凄い。

またカヅキに怒られそう。

これも心配だ。


 オレンジ髪でアホ毛付き、三下言葉がジーナ。

ピンク髪でゆるふわ、くせッ毛の女がイーマ。

どちらもボンキュッボンで、しかも露出が多い。

お揃いの赤いビキニアーマーは似合っているが、目のやり場に困る女達であった。



「鍵、貰って来たんだろ?放ってくれ」


「ほいッス」



 晶に鍵を放るジーナ。

鍵は手に持っていたようだ。

残念ながら胸の谷間ではない。

鍵を放らせた晶、距離を置いている。

さすがに警戒を怠ってはいない。

受け取った鍵をポケットにしまっている。



(私達は知らない事が多過ぎですねぇ)

(ワシもじゃな。特に魔法関係は良く知らん)

(まったくです。あの青羽魔族が喰らった魔法陣なんかは色々出来そう)

(魔導具もですー。お宝ーって言って漁りたいですけど、どんなモノがあるか解りませんねー)

(フォックス達の持ち物か……確かに)

(時限式があるかもですし、様子を見ましょうー)

(そうしようか)

(うむ)



 カヅキは目の前の女戦士達ではなくお宝に興味を示している。

そして知識の少なさを嘆く。

タケマツも同意。

魔法、魔導具……晶達が特に疎い情報。

三人共通であった。

自分達で魔法が使えないので、疎かになっていたのは仕方あるまい。

カヅキがフォックス達の置いて行った装備品に、直ぐ手を出さずに様子をみようと提案。

晶もそれを受け入れた。



(うー、痛い)

(そりゃそうでしょう。下手をすれば腕が落ちていましたよ……)

(アキラ、身体能力が上がり頑丈になっているとはいえ装備が薄過ぎじゃ)

(うん、実感した)

(コス家の宝物庫にあった魔法の小手や鎖帷子ならサイズが合ったんでしょう?)

(合った。魔法の小手には魔力を流さないと効果が出なくてさ、攻防の中で神気を切って魔力操作するのが難しい)

(それは練習せねばなるまい)

(でも防具としてだけなら使えるでしょう?)

(うん……そうする)

(はいー。取り敢えず待つ間に治療もしてください)

(あいよ)



 脳内会議は続く。

反省点は多い。

晶は動きを阻害する装備を嫌っていた。

被弾することなく戦えていたのも良くなかった。

持っていても装備していなかった。

痛い目にあってようやく装備する気になった晶。


 そして迷宮都市で顔を覆っていた包帯を取り出した。

左腕からの出血はないが、そこへ包帯を巻いて行く晶。

ジーナが焦れったそうにウズウズしている。

片腕で上手く包帯を巻けていない事が気になるのだろう。

裏表のなさそうな女に見える。



 晶が落ち着かなそうにしている女戦士達に目を向ける。

いや視線は元々向いていたのだが、顔、目に視線が移った。

元々向いていた先は決まっている。

言う間でもない。

恐ろしやビキニアーマー。



「フォックス達は危険な魔導具や装備を持っていなかったか?俺はそんなモノを持っていたくないんだ」



 晶が女戦士達に問いかける。

彼女達の反応を見るという意味もあるだろう。

何せ仲間でもなんでもないからだ。

少なくとも今はそうである。



「武器屋防具ッスからねー、それなりには危険ッス」


「そういう意味じゃないの。きっと毒とか呪い、情報をとられるとかの話だと思うのー」


「えっと、イーマの言う通りだ。時間を置いて発動する魔導具とか困る」



 イーマ、若干とろそうなしゃべりだが、頭はとろくないようだ。

晶の言いたい事をちゃんと理解している。

それでも晶が素直に言いなおす。



「んー、どうッスかねー」


「使っていた魔導具に、アキラが危惧するようなモノはなかったと思うのー」


「使わなかったモノに付いては保証出来ないッス!」


「なのー」


「解った」


(嘘を吐いている感じではないのぅ)

(そーですねー)

(もうちょっと話してみるか)

(ですー)



 危険な魔導具はなさそうだ。

もっとも仲間とはいえ奴隷に全てを見せていたとは限らない。

油断は出来ない。

タケマツとカヅキが話している女戦士達を観察していた。

まだ何とも言えなそう。



「君達が奴隷になる前はどこにいたんだ?あ、サッキュバスなの?」



 情報が少なすぎて、話す間にも疑問が湧いて来ている。

ちゃんとまとめるべき。



「あーしらはサッキュバスで合ってるッス」

「そーなの」

「ここはミナロコ共和国ッスかね?更に西へ行った所にサンヤ王国があるッス。そこから海を渡って西にある大陸出身ッス」

「そのサンヤ王国の罠にかかって捕まったのー」

「サンヤ王国からムロン帝国への贈り物として、あーしらが使われたッス」

「なのー」


「ちょ、ちょっと待って!えーっと……君達はサッキュバスで中央大陸ではなく西の大陸出身と。それでサンヤ王国に掴まりムロン帝国へ送られたと」



 ジーナとイーマ、息が合っている。

次々と情報が出て来た。

晶が慌てて話を止める。

情報の整理が追いついていない模様。

一旦、まとめている。



「合ってるッス」

「正解なのー」


「贈り物に使われたって、サンヤ王国ってのとムロン帝国は同盟でも結んでいるのか?」


「秘密同盟らしいッス」

「遠交近攻なのー」


(情報が筒抜けじゃな)

(んー、一度奴隷になったら終わりみたいな所がありますしねー)

(ふむ)

(イーマは頭が良さそうー)

(何となく解る)



 ムロン帝国を取り巻く反帝同盟。

だがその外には帝国と結んでいる国があるらしい。

複雑そう。

そして三下しゃべりが災いしているのか失礼な事を言われているジーナ。

イーマは逆に評価が上がっている。



「西の大陸ってどんな所なの?」


「これまた大雑把ッスねー」

「困るのー」


(アキラ、言われてるー)

(まぁ、無理もなかろう)


(くっ……)



 晶が気になる事を更に聞いている。

大雑把そうなジーナに大雑把と言われた。

イーマも首を傾げて困っている風。

カヅキとタケマツに呆れられている晶。

悔しそう。



「サッキュバスしか住んでいないのか?」


「そんな事はないッス、でも人族以外が多いッス」

「こっちで魔族と呼ばれる者が多いのー」

「目が三つあったり、腕が四本あったり……それから獣人も多いッス」

「暑い場所だから、寒い所が苦手な奴らも多いのー」

「あー、リザードマンや竜人もいるッスねー」


「人外魔境……なの?」



 質問しなおす晶。

西の大陸には色々な種族が暮らしているらしい。

人族ばかりの中央大陸とは大違いだ。

まぁ、中央大陸も東に行けば人族以外も多い。

ドワーフ、エルフといった有名どころは中央大陸の東側にいる。

イーマが気候についても話していた。

どうやら暑い所らしい。


 出てくる名前からどんなモノなのかを想像したらしい晶、困惑している。



「中央大陸の方がよっぽど人外魔境ッス!」

「人の心……魑魅魍魎なのは絶対こっちなのー」

「西の大陸は力が全てみたいな所があるッスからねー」

「解りやすいの」


「ほー」

(西の大陸は面白そうじゃな!)

(魔族っぽいですねー)



 色々な情報を彼女達から引き出しつつ、性格も見ていた。

そして中々打ち解けつつある。

少なくとも言葉は硬くない。

サッキュバスはみんなそうなのだろうか?

男誑し?人誑し?

聞く事、調べる事はどんどん増えていく。



(話をひとまず置いておいて、お宝回収しませんかー?)

(ふむ)

(結構経ったね。時限式はなさそうだ)

(魔力式も神気で魔力を覆っているアキラなら大丈夫かとー)

(呪いも効かんしのぅ)


(行こうか)


(はーい)

(うむ)



 西の大陸、人種の話を聞くだけでも疑問が増えていくばかり。

時間が足りない。

大亀の戦闘もある。

カヅキがそろそろ動こうと提案。

話している間にフォックス達が置いて行った物に異常はなかった。

晶が提案に乗る。



「モノを回収に行くぞー」


「解ったッス」

「はいなの」



 ビキニアーマーズに動くことを伝えた。

彼女達は素直に頷く。

晶達が彼女達の事を知ったように、彼女達も晶の事を少しは知ったのだろう。

悪くない反応。


 雨の降る中、歩き出すのであった。




(おったからー!)

(物の確認は後じゃ、急ぐぞい)


(カヅキ、カード化よろしく)


(お任せあれー)



 タケマツが拾い集め、晶が手に取り、カヅキが物をカード化。

晶とタケマツの後ろで茫然とその様子を見ているビキニアーマーズ。

西の大陸でもアイテムボックス系は珍しいようだ。

晶、カヅキのはちょっと違うけれども。


 ひょいひょいっとカードが量産されていく。

特に事故は起こっていない。

フォックス達が置いて行った物に危険物はなかった模様。


 お宝大好きカヅキが嬉しそう。



「さて、大亀の所に行くぞ」


「了解ッス」

「はいなのー」



 晶は彼女達に告げ走り出す。

タケマツの足が一番遅い。

それに合わせて走る一行。

それでもそこらの兵士では追いつけない速さ。


 その間にも質問が飛び交っていたり。

西の大陸の話だけでなく、フォックス達の事も話題に上っていた。


 雨は止んでいない。







(ゼロ、どうなってる?)


(もうすぐ……いや、終わったようです)


(おぉっ!やったか!)


(はい……残念です)


(えーっと、今度違う所で狩りをしような)


(はい!)



 遠くに大亀の陰が見えた。

晶がゼロに念話を飛ばす。

晶の問いかけに答える間にも決着がついた模様。

ゼロが終わったと言いつつ残念がっている。

そして晶の口から出た言葉は次回の狩りについてであった。

ゼロの残念という言葉……エル達が勝つという事を疑っていない晶、ゼロが仕留め損なったという意味にとっていた。

ゼロからの元気な返事、間違ってはいなさそう。



「勝ったみたいだな」


「でっけーッスね!!」

「大亀なの」


(大亀の魔力が小さくなっていきますー)

(誰が終わらせたのかのぅ……)



 晶達の走りは止まらない。

大亀の姿が次第に大きくなっていく。

ジーナが大亀の大きさに驚いている。

フォックス達は大亀を見ていなかったようだ。

そしてカヅキは観察を続けている。

タケマツは誰が仕留めたのかを気にしていたり。

タケマツも大亀と戦っていたのだ、どれだけ大亀が厄介で倒しにくいか解っている。

だから気になるのも当然。



 大亀の側に複数の人。

どう見ても多い。

戦う者が増えたのか、終わったから人が集まったのかは定かではない。

確かに戦闘は終わっていた。



 フローラ、エルの姿も見えた。

ノックを筆頭に脳筋ズも健在。

ただ……鎧ズが倒れている。

鎧がひしゃげて地面に……。



(お、グラム、ロック!)


(やられてしもうたか……)

(あらー)


(すみません)

(戻る)



 鎧の側に霊体が佇んでいた。

グラムとロック、牢獄から連れ出した霊体。

リビングアーマーとしてはやられていたが、霊体は無事。

晶は彼らを格納した。

壊れた鎧も回収。



「やられた」


「これは……」



 鎧を隠すように立っていたエルとフローラが晶に話しかける。

フローラは鎧の中身がない事に驚いている。

解る者もいるだろうが解らない者もいる。

フローラは気づかなかった方だ。

エルは知っていた。

瘴気でアンデッドと解ったのだろう。

戦っていて鎧から響く音で判った可能性も高いがヴァンパイアロードのエルなら気付いて当然。



「右前足だけか!」

「おいしい所を持って行かれたぜ!」


「くっそー!!」

「こんな大きい足をぶった切ったのです、十分かと」



 鉄腕兄弟、それからノックが悔しそうにしている。

シーベルは満足そう。

どうやら脳筋ズが大亀を倒した訳ではなさそうだが、戦果はあった。



 離れた所に『反帝十傑』の仮面紳士が見えた。

彼は大剣使いに肩を貸している。

負傷しているようだ。

若い剣士もいる。

変態も……。

空から魔法使い組も降りて来た所であった。

ゴーレムは未だ大亀の頭を横抱きにしている。


 そんな彼らを大勢の兵士達が囲んでいた。

歓声とともに。

大亀を仕留めたのは『反帝十傑』の誰かという事だろう。

彼らの顔には疲労の陰があったが、誇らしげであった。

変態が若い剣士ヴィクトルに抱き付こうとして逃げられていたり。

笑い声も混じる。


 本当に戦いは終わった。



「お疲れ様」

「凄いですね!」



 ハンナ達が晶達の所へ来て声をかける。

デルマは称賛の声だ。

ハンナは晶達を労ってはいるが目はビキニアーマーズを捉えたままだ。

ある程度は調べがついていて情報部隊としては逃せない獲物。

そういう事に違いない。

そのビキニアーマーズはエルを凝視していた。

一応魔族という括りでは同類。

ただ格が違うのだろう。

エルは大物だった。



 戦いが終わった安堵か、これからの面倒ごとを思ってか、晶が溜息を一つ。


 まだ雨は降り続いていた。




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