閑話1-1
本日、閑話三作。
飛ばしてもらっても大丈夫。
閑話1-1
《とあるワイバーンの呟き》
外へ行っていたヤツが騒ぎながら戻って来た。
あいつは弱いからよく騒ぐ。
敵襲?違う様だ。
ふむ、良く判らないが美味そうなモノを見つけたって所か。
あいつの事で動くのは気に入らないが美味いモノは喰いたい。
他のヤツラも行くつもりらしい。
ノソノソと動き出している。
どいつもこいつも食い意地が張っていやがる。
結局、群れの全てが動いていた。
取り分が減るのが気に入らない。
ちゃんと喰えるんだろうなぁ?
まぁ、弱いヤツラを蹴散らせばいいか。
俺に勝てるヤツはいない。
そう思ったら、少し気が晴れた。
何だ、直ぐ近くだったのか。
縄張りの足元だとは思わなかった。
何せ最近は遠くまで行かねば喰うモノが少なくなっていた。
よもやこんな所に……騙されたか?
騒いでいたヤツを睨む。
ヤツは未だ騒ぎ立てながら先頭に立っている。
弱い分際で。
ボコボコにしてやろうかと思った時に、力ある存在がいる事に気が付いた。
力ある存在、すなわち美味いモノだ。
どうやらヤツは嘘をついてはいなかったらしい。
命拾いをしたな。
ふむ……穴の奥にいるのか。
俺が怖くて隠れているのだろう。
ふふっ。
我先に穴へ首を突っ込もうとしているヤツラを押しのけてやった。
強い者が一番偉い。
俺が最初に喰わなくてどうするというのだ。
俺は穴に首を突っ込んだ。
穴の中にいたのは喰いでのない小さなヤツだった。
俺はがっかりした。
一口、二口ではないかと。
俺が全て喰うのだから、この後で群れのヤツラと一戦交える事になるな。
めんどくさい。
そう思った。
ふっ、恐れおののいておるな。
無理もない。
俺が相手だからな。
だが逃げ場はない。
さっさとこっちへ来て喰われろ。
来ないなら穴を広げて行くまでだ。
俺は首を動かす。
何か投げてきよった。
痛くもかゆくもない。
悪あがきをしよってからに。
むっ、力が消えた……目の前のヤツはいるのに。
不思議な事もあるものだ。
今更、美味い事を隠しても遅いぞ。
俺はオマエが美味い事を知っているからな。
また何か投げようというのか。
無駄な事を……。
さすがに終わらせたくなった。
確かに終わった。
一瞬、目が熱くなったと思った。
そして俺は違うモノになっていた。
「お、おう。俺がマスターだ、わひゃるか?」
そう問いかけられた。
俺は頭を下げる。
了解の意味だ。
どうやら俺は目の前の男、マスターに作られ支配されるモノらしい。
マスターとは何かで繋がっている。
そこから知識、情報が流れてくる。
あぁ、世界は広いのだな。
私は生まれ変わった。
いや死んでいるのだけども。
マスターに付き従うモノ。
それが私。
名前も頂いた。
ゼロ。
強き空のモノの名前らしい。
私はマスターのために戦うのだ。