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「そうかー空は楽しいかー」


「ぴー!」


「気持ちいいし、眺めもいいよな!」


「ぴー!」



 ぴよこを見つけてから二日目、ゼロの背中に乗って飛んでいる晶達。

ぴよこは空が好きらしい。

小さく未熟な羽をパタパタさせている。

とても嬉しそうだ。

その様子を見て晶も嬉しそうにしている。

もちろん、ぴよこの位置は晶の頭の上ではない。

座った晶の体の前、両手の中である。

大事にされていて何より。



「ゼロは速く飛べるよなー」


「ぴー」


「時速百km以上出てると思うけど……判らん。俺がバイク乗りだったら判ったんだろうけども」


「ぴ」


「昔、原付に一回乗っただけだしなぁ」



 独り言マスターはひよこ相手に語る人へ進化した!

でででん。



(マスター。この先に川、湖があります)


「お、じゃーそこで休憩しよっか」


(はい)


「ぴ」



 ゼロの報告に休憩を指示する晶。

ぴよこの声は返事なのか判らない。

晶が何か言うと反応しているのは間違いない。

母親?父親?に声をかけられて嬉しいとかだろうか?



「みんなでメシを食べようなー」


(はい)


「ぴー」


「ぴよこが雑食で助かったよ。卵の殻も食ってたけどオークの肉も食ってたもんな」


「ぴ」


「鶏だったら穀物なんかだったよな。小石も食ってた気がする」



 どうやらぴよこは何でも食べるらしい。

その事に晶は安心していた。

自分では鶏を飼った事がないからである。

ただ田舎の爺ちゃんの家、その近くの人が飼っているのは見かけた事があった。

そこで地面を突いていたのを見て爺ちゃんに聞いたら小石を食ってるんだとの返事。

へー、食い物がいっぱいあっていいよな。なんて事を思ったのを思い出したらしい。

もっとも鶏のひよこに似ているが蛇の尻尾から判るように魔物である。

参考にはなるまい。







「くっ!にゃろめ」


(水場に生き物は付き物でしたね)


「そういうこったな」



 湖の側へ降り立った晶一行。

固まった体を解していると魔物に襲われた。

そこでの会話である。



「ぴよこはそこを動くなよ!」


「ぴー!」



 ぴよこを頭の上に乗せて戦う訳にもいかずパーカーのフードへ入れていた。

解っているのか解っていないのか、ぴよこの声は楽しそうな声に聞こえた。

大物かも知れない。



「これこそチュートリアルで出るべき相手なんだろうけど……」


(初めて見ました)


「しかも大きい。めちゃくちゃ大きい」


(そうなんですね。私といい勝負です)



 晶達が戦っている相手はスライムであった。

薄い緑色。

こんもりと盛り上がってはいるが、平べったく伸びてもいた。

ホットケーキの上の面が丘の様になっている。

そんな感じだ。

そして大きい。

ゼロの言う様にゼロに近い大きさであった。

ゼロは頭から尻尾の先までで十m前後。

スライムはゼロの胴体ほどの大きさで体積もありそうに見えた。

艶のある外皮。

ズリズリと這い寄って来る。

速度は人の歩く速度に近い。

鈍重に見えるが意外と速い。



(マスター、腕は大丈夫ですか?)


「あぁ。焼け爛れたけど、もう治ってる」


(厄介ですね)


「膜の中、あの水っぽい体は酸みたいだ」


(ジュオッと嫌な音がしてましたね……)


「ひと当てしてみようってのは考えなしだった。先に何かぶつけてみれば良かったよ」


(これも経験なのですね)


「そういうこった。痛い経験は身になるからな……ここで終わらなければ、さ」



 大きいスライム。

晶はメガスライムと呼んでいた。

メガスライムから距離をとって対峙する晶達。

既に晶がメガスライムをぶん殴っていたらしい。

狙い通りに爆散はした模様。

だが代償は大きく、収穫はすくなかった。

爆散した部分をメガスライムが吸収していたと思われたからだ。

少なくともメガスライムが痛がったり嫌がったりした様子はなかった。

一定の速度で距離を詰めてくるだけだった。


 晶とゼロは戦いの最中ながら情報の共有と反省をしている。

教育も兼ねているのだろう。

敵を見つけたら倒す。

今までこれ一本で来ているゼロに情報の大切さを示すつもりもある様だ。

中々どうして、やる時にはやる男。

転んでもタダでは起きない。

長尾晶はそういう男であったらしい。



「そりゃ」



 ゼロを後ろで見学させ、晶は投石に移った。

肉弾戦しかないゼロには厳しい相手だと思ったのだろう。

そして遠距離攻撃。

ちゃんと反省している模様。



「っち。一点集中でダメージが固まってる。そのまま突き抜けてるっぽいな」



 どうやら投げた石はメガスライムを貫通しているらしい。

大きな体の一部を通り抜ける石。

体も削れてはいるだろうが効率が悪い。

晶はそう思っていそうだ。



「魔物は魔石を持っているよな?」


(強い魔物や長生きしている魔物は持っていますね)


「あいつは持っていると思うか?」


(持っていそうですね)


「それを壊すか」


(それしかないかも知れません)



 晶とゼロは相談している。

敵が高速移動しなくて遠距離攻撃もしてこないから出来る芸当である。

距離に気を付ければ何とかなりそう。

そして魔石の破壊を決める晶。

晶はこうも思っていた、魔法があれば効きそうだなと。

無いものは無い。

出来る事をやるしかないのだ。



「やって見るか」



 晶は、そう呟いて辺りを見回す。

小さ目な石をいくつか見つけて拾っている。



「数で勝負だよな。散弾ってヤツだ」



 魔石が見えている訳ではないので手当たり次第にいくらしい。

確かにそれくらいしか出来そうにない。



「うりゃ」



 あいも変わらず、気の抜けた掛け声。

そして振りかぶって投げた晶から小石がいくつも飛んだ。

野球なら速球と言っていい。

それでも石を砕かないために力を抑えているはずだ。

超人晶。


 バシュッといった音がいくつも聞こえた。

投石はメガスライムに当たっている。

当たってはいたのだが、メガスライムの動きは変わらない。

ズリズリと這い寄って来ている。

攻撃が効かない相手が這い寄る……ちょっとしたホラーであろう。



「止まらないか……効いているか判らないってのは不安になるな」


(ですね)


「うーん。これはあれだな」


(何でしょう?)



 晶のこれはあれだなが出ました。

あれですね。



「戦うのは止めよう。世の中平和にいかなくっちゃね!」


(えっと、つまり……)


「逃げるぞ!空へヨロシク!!」


(……はい)


「ぴ」



 水場はここだけではないと判断。

緊急に大量の水が必要な訳ではないので正しいかと。

いい勉強になった事でしょう。

命も無事ですし。

ただゼロは不服そうです。

戦い命なのか、強いマスターに逃げて欲しくないのかは判らない。

指示に背くつもりはない様ですが……。


 晶にも得手不得手がある模様。

これは特殊な例という気もします。

まぁ、後がなければ死力を尽くして戦うのでしょうね。

たぶん。


 晶はゼロの背中に飛び乗った。

ぴよこも一緒である。


 そして大地から離れる晶一行。

メガスライムはまだ蠢いていた。

この湖の周辺はメガスライムの縄張りなのだろうか?

厄介なヤツがいたものである。



「……む」


(どうかしましたか?マスター)


「ぴ」


「んー、戦わないといけない理由を見つけちゃったかも……」


(戦うのですね!)



 晶達は湖を上から見下ろしていた。

そして晶の発言。

厄介そうな敵がいるのは解り切っている。

それなのに逃げる決定を覆すほどの理由。


 戦う気になってくれたマスターの判断を喜ぶゼロ。




 戦う理由……それは一体何なのか?晶は何を見つけたと言うのか?



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