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感情の肥溜め  作者: toru
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仮面ライダーに影響された話

ルール

ここは「便所の落書き」「感情の肥溜め」

80年代ジャンプのギャグ漫画に出てくるような「アレ」で、ドリフの志村さんがバカ殿で毎回こけて突っ込んでオチになる「アレ」

そこはいろいろな感情が混じり混じって、腐って茶色くなるから、面白い話も怖い話も泣きたくなるも怒りたくなる話も悲しい話も全部混ざってる。

それで、その肥溜めは「僕専用」なので、苦情や意見は一切受け付けないものとする。

だって「肥溜め」に感情を処分しているんだもの。僕の力で全部処理したんだから、それ以上とやかくいうのはやめてくれ。

先日、「ワイドナショー」という番組で、ダウンタウンの松本さんが「AKB48のCDが大量放棄された。」というニュースをうけて、「僕らが子供の頃は『仮面ライダースナック』というものがあって、当時、多くの子供がオマケについてくる仮面ライダーのカードだけ取ってスナックは捨てていた。だからか、仮面ライダーが当時番組の中で『スナックは捨ててはいけないぞ!』と言っていたのを思い出す。」というような事を言っていた。

補足すると、「仮面ライダースナック」というのは、「プロ野球チップス」や、わりと最近で言うと「キンダーサプライズ」のようないわゆる「おまけ付きお菓子」の一種。

袋に入ったポテトチップスに加えて、仮面ライダーや怪人、共に戦ってきた仲間などがランダムに印刷されたカードがオマケとして加わっていて、僕の親父世代の人はよくコレクションをしていたらしい。


ちょっと話はそれるが、それと同じ時、仮面ライダーが「ライダーキックは、きちんと訓練をした仮面ライダーだからこそできるのだ。」と番組の中で言ったエピソードがある。

(気になった人は「Amazonプライムビデオ」などの各動画サイトで公式に配信されているので、探してみてほしい。)

今でも近所の公園で子どもたちが「◯◯レンジャーごっこ」など、いわゆる「ごっこ遊び」をするのをよく見かけるが、当時の子どもたちも自分たちの思い思いのヒーローになって、ショッカーなどの悪役になった子供たちと闘ってよく遊んでいたらしい。

ここまで来ると想像するのは簡単だが、「仮面ライダー」などの「ヒーロー役」に抜擢された子供にとっての「醍醐味」といえば「大きな声で必殺技の名前を言って披露する。」これに限る。


僕も幼少の頃、「ウルトラマンティガごっこ」をした時は、誰にも負けない声で「デュアッ!!」と言いながら、あの独特のポーズをして、技を披露したことを覚えている。


「仮面ライダー」の必殺技といえばほとんどの人がわかるが「ライダーキック」である。

ライダーキックのお決まりといえば「大きな声で『ライダーキック!!!』と叫ぶ」のは当然であるが、もう一つ「高いところから飛んで技を披露する」ことも重要だ。

「バッタの改造人間」として作られた「仮面ライダー」ということもあって、作品の中では「バッタの脚力」つまりは「ジャンプ」を活かした技が沢山あった。


中でも「ライダーキック」はその中でも一番「花形」とも言うべき技の一つであり、「ライダーが最も得意とする技」だった。

技の名前から容易に想像はできると思うが「ライダーがとにかく高いところまでジャンプをして、その落ちてくる勢いを足に集め、敵にキックをする。」という非常にシンプルなものではあるが、「ライダーが最も得意」とする故に、一発で怪人が死んでしまう事や、死んでしまう際に勢い良く爆発する様を見せられた子供たちは最も興奮したものである。

そんなライダーキック。もちろん、ライダーが大好きだった子どもたちは誰しもが真似したらしい。


ただ、子どもたちと言うのは良くも悪くも「限界」を知らないものだ。

例えば、今年27になる僕が「ライダーキックをやってみてください。」と言われたら「いやいや、それは無理ですよ。何言ってるんですか。絶対に失敗して足の骨折っちゃいますよ。」と鼻で笑って拒否するに違いない。

ただ、子どもたちにはそんな分別などつきはしない。誰しもが「俺がやる。」といって、ライダーの真似をするように「ジャンプ」して、「キック」をしたに違いない。

それだけで済めばいいのだが「限界を知らない子ども」たちは、一つ「ライダーたちとの違い」を知る。「ライダーはもっと高いところまで飛んでいた。きっと自分の身長どころじゃなくて、なんメーターも上に飛んでいたはず。でも自分たちはそんなに飛んでいない。足1個ぐらいだ。そんなんじゃ、ライダーと同じ技じゃない。」と。

そんな子どもたちは何をするかというと、少なくとも自分たちが「これならライダーと同等の威力が出せるだろう」という高さの家の塀や屋根に登り、そこからジャンプして「ライダーキック」を披露しようとするのだ。

だが、もちろん大概は着地に失敗。ぐらいならいいが、中には骨折する子もいて、当時の新聞には「ライダーキックを真似して怪我する子続出!」という記事までが出たぐらいに社会問題になったらしい。

それを見た当時の制作スタッフは「これ以上怪我する子が出てほしくない。」と思ったのか、わざわざ台本に取り入れ、当時、主人公を務めた藤岡弘さんに「ライダーキックは訓練を積んだライダーしか出来ないんだ。」というようなセリフを言わせたらしい。

当時、それだけ「ライダー」は子どもたちにとって大きな影響を与えていたのだ。


で、これを書いている僕も実は子供の頃「仮面ライダー」の影響を大いに受け、当時、骨折ほどではないが、痛い目にあっていたのをこのニュースを見て思い出した。


話は変わるが、ちょっと勘の良い人なら「お前は今年27歳なら『ライダーの世代』じゃないだろう。」と突っ込みたくもなるだろう。


解説をすると、仮面ライダーは1989年に「仮面ライダーBlack RX」という作品を最後に、10年以上の間、テレビでの放送が休止される。

(その代わりに、いわゆる「Vシネ」や「映画」などで新作が作られていた。)

また、「キューレンジャー」などの「スーパーヒーローシリーズ」は、今でこそ「日曜の朝」という「子どもたちが見やすい時間」に放送されているが、僕が保育園に通っていた頃は、なぜか「金曜日の夕方5時」という中途半端な時間に放送されていた。

当時僕が通っていた保育園は「夕方4時」に放課となる。放課と同時に家に帰れば、焦るでもなく余裕を持ってテレビを付けることが出来たろう。

ただ、専業主婦である母親は自分の中で「夕飯の準備がある程度できたら子どもたちを迎えに行く」というルールを持っていたらしい。

当時の思い出をそのまま書くので、確認も何も取っていないが、母親が「夕飯の準備」大体終えるのが「夕方5時」。それから迎えにいって、先生と連絡のやり取りをし、返ってくるのが「夕方6時」。

もう家に帰ってくる頃には「スーパーヒーローシリーズ」は終わってしまい、テレビには男女二人のキャスターが椅子に座って、真面目にニュースを読んでいる光景が写っていた。

だからこの頃の事を振り返ってみても「スーパーヒーローシリーズ」もそんなに見た覚えがない。「歯抜けになって数話」を見た程度だと覚えている。


そんな僕を寂しく思ったのかわからないが、母はたまに近所のレンタルビデオショップに一人行き、「スーパーヒーローシリーズ」などの子供番組を数本借りてきてくれることが多々あった。

だけれど、考えてみてもほしい。僕は「歯抜けに数話程度ヒーロー番組」を見たことがあるが、僕の母親は「ヒーロー番組」を見ることもなく、僕がテレビを見ているのを尻目に、夕飯の支度をしていた母親だ。もちろん「子どもの好み」などわかるはずがない。だけれど「子どもに何か見せてあげないとかわいそう。」そう思ったのか、母親は「自分が子どものときに見ていて、面白かったもの」というヒントを頼りにしたのかどうなのか、良く「仮面ライダー」を借りてきていた。

しかも、これは「母親の趣味」なのか、どうなのかそれとも「少しでも飽きないように色々な映像が使われたものにしよう。」と思ったのか、普通の「1本のテープに数話分のエピソード」が入ったものではなく「恐怖の怪人編」とか「技の一号ライダー編」などの「総集編」ばかりを借りてきていた。


だから僕が「一番最初に見始めたライダー」というのは、ストーリーもへったくれもなく「人が怪人に襲われます」「本郷猛が出てきて変身してライダーになります」「怪人と戦います。」「ライダーキックをだして、怪人が倒れて爆発しておしまいです。」というのをダイジェストにまとめた、昔で言う「ウルトラファイト」をちょっと引き伸ばしたもののようなものしか見た覚えがない。

ただ、「人が怪人に襲われます」という点と、ライダーがかっこよく技を繰り出すところから「ライダーはヒーロー、ショッカーは悪人。」ということはなんとなく分かったし、当然、ライダーの世界にものめり込んでワクワクしながら見ていた。


ここまで読むとなんとなく想像はつくかもしれないが、ライダーの魅力にどっぷりとハマってしまったぼく。頭にも書いたように当然「ライダーの真似事」をしてみたくなったのである。

ただ、その時僕は少し躊躇したのを覚えている。なぜなら運動神経がずば抜けて悪いからだ。

特に保育園であった「体操の時間」などは、「体操をすること」は楽しかったものの、友達と競争するとなると、いつもビリになって悔しがっていたのを覚えている。

そんな僕だから、小さいながらにも「やってみてもいいけれど、果たしてライダーのようにうまくいくのだろうか。」と疑問をもち、即座に「いくわけないでしょ。絶対。」と否定したのを覚えている。そんな時、目に飛び込んできたあるシーンがキッカケで、僕の心に「火」をつけた。


保育園が休みの日。僕は母親が台所で家事をしている後ろで一人でそのビデオを見ていた。

何話のものかは覚えていないが、テレビに映っていたのは「雪男の怪人」と闘ったシーンだった。

ライダーは怪人との激闘の末、大きな池か海に張った分厚い氷に「ライダージャンプ」と言って高いジャンプをし、立った。


氷といえば、実家の駐車場には、大きな池があり当時から緋鯉や大きな金魚を飼っていた。

池といっても、ただ単に岩でつくった大きな穴に山から湧き出てくる温度調整もされていない水を流しているだけである。

今もそうなのだが、温度調整をされていない水を流すと当然ながら寒い冬には池の上に分厚く白く曇った氷が張って、子ども一人ぐらいならその氷の上に乗ってもビクともしなかった。

僕は、金魚が好きだったので家に帰っては真っ先に池に向かって金魚の様子を眺めていたのだが、

分厚い氷が張り、「金魚の様子」が薄ぼんやりにしかわからなかった池には魅力を感じなかったので、冬になると池の事など無視をして、真っ先に家に帰ってしまっていたのを覚えている。


たまたまそのシーンを見たのは冬。僕は「ライダーキックは無理でも、ライダージャンプぐらいならできる。もしかしたら氷に池が張っているかもしれないし、そしたらライダーのように氷の上に立つことができる。」と大きな期待をして、冬にはめったに見ない池へと向かった。


僕の期待通り、池には白く曇りがかった氷が貼り、金魚たちの様子は薄ぼんやりにしかわからない。「これならできる」と思った僕は、両手をバンザイし、「ライダージャンプ!」と大きな声で叫び、池の上に飛んだ。


僕の期待では大きな池の上にはった氷の上に立ち、「よっしゃ。ライダーとならんだ。」と興奮していたに違いない。


ただ、現実はそうはいかず、僕はジャンプした瞬間に、氷を突き破って池の中に落ちた。

幸いにも池は浅く、子どもの僕の方ぐらいまでしか深さはなかったのでなんとか池を出ることが出来、大事に至る事はなかった。

だが、ほっと安心したのもつかの間。もう一つの恐怖が待っていた。そう「母親」である。

子どもがびしょ濡れになって家から帰ってくるのだ。「何かしらの事故があったのではないか。」ともちろん心配もするし、「こいつ何かしでかしたんじゃないか。そうすればしでかした先に謝罪をしなくてはいけない。」と子供を着替えさせたり、風邪を引かないようにお風呂に行かせたりする以外にもたくさんのやることがあって意外と手間がかかる。

子どもながらにも僕は「あ、これは絶対に怒られる。」そう直感した。

だが、当然ながら母親は、家の台所で一人家事をしているのだ。家の構造からいうと、玄関から入って廊下の突き当りを右に曲がったところに台所がある。

その途中には、引き戸があって、台所に通じる居間があり、その右隣に洋服ダンスがいくつかある部屋あって、僕の服はそこにしまわれていた。

台所と玄関の距離は感覚で5mくらい。母親はすぐ近くにいるのだ。しかも見つかったらすぐに怒られる保証付き。

バレずに洋服ダンスまで行ける可能性もあるが、残念ながら僕には勇気がなかった。

ライダーで言えば「ショッカーの基地に、幾つもの罠が仕掛けられているかもしれないのに潜入する気持ち」だ。


僕は「怒られないように。」と何度も心の中で唱えながら、靴の中の水を払い、靴下を脱いで上がり、そのままつま先立ちで廊下を歩いてすでに開いていた引き戸に触らずこっそりと抜け、タンスのある部屋まで行こうとした。

この時、緊張は最高潮にまで達していて、本当に死ぬかと思った。

ただ、そんな緊張も徐々になくなった。

廊下を半分も歩いて、引き戸のところまで行ったときに気づいたのだが、人の気配がまったくなかったのだ。

僕は疑心暗鬼になりながらも、居間から台所をのぞいたのだが、お母さんどころか誰もいなかった。

その代わり、廊下の突き当りを左に曲がった奥にあるトイレから水の流れる音が聞こえていた。

どうやら母親は、というか誰かしらがトイレにはいっているみたいだ。

「これはチャンスだ。」僕は興奮しながら、その歳ながらの「マッハ速度」でタンスのある部屋へ行き、タオルで体を拭き、新しい服に着替え、お風呂場にある洗濯カゴに入れた。

これで「証拠隠滅」と子供心にガッツポーズをして、居間で「何もない風」を装って、テレビをみていた。

母親には「あ、もう着替えたの。えらいね。」と言われたが、あの時振り返ってみれば、実家の池を掃除したことはめったに見たことないのである。

毎回、山から水をひいているかもしれないが、たくさんの金魚やコイがいて、掃除が行き渡ってないからコケだって生えていたし、時には落ち葉とか小さなゴミが浮いていた。

そんな池だ。結構なニオイがすることはわかる。

もしかしたら、その「ニオイ」で母親には「こいつ何かしでかしたな」という「薄い疑惑」はかけられていたのかもしれない。


余談だが、いくつかかりてきたビデオの中の「恐怖の怪人編」は今でも頭にこびりつくぐらいトラウマになっている。

怪人がひたすらに「実験」と称して、人を殺したりする場面だけをダイジェストでまとめているのだ。オタクからすれば「あの怪人のこの技が面白くてさ。」などと話のネタの一つになったのかもしれないが、子供からすれば「殺人シーン」をずっと見せられているものだ。

それを見た夜、僕は「仮面ライダーV3」がデストロンの最初の怪人「ハサミジャガー」に壁ドンされるような形で、ハサミジャガーのハサミで何度も体を刺されているのを目の当たりにする。という夢をみた。目を開けたら、「名探偵コナン」に出てくる犯人の象徴の「黒づくめの人たち」に手足を押さえつけられ、壁に張っていた絵や写真に写っていた人たちが上下左右に動いていた。

初めての金縛りである。それから「ショッカー」や「デストロン」などの悪役が怖くなり、今でも「ハサミジャガー」が出て来る「仮面ライダーV3」は見るのに少しばかり勇気がいる。


池に関してのエピソードはあともう少しあるので、またの機会に。

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