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陰陽師の異世界騒動記〜努力と魔術で成り上がる〜  作者: 月輪熊1200
一章 遥か高き果ての森
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三話 魔力を使ってみよう。

 

  ステータスも確認できたことだし、次は霊力を使ってみるか。一つだけ桁が高かったから、少し気になる。


  再び霊力を呼び起こして、いつも訓練でやっているように全身を循環させる。

  すると、少しずつ肉体能力が高まっていくのを感じた。同時に、俺の体から灰色の光が吹き上がる。

  皇流鬼闘術基本の型、″天日てんじつ〟。朝日のように段々と力が昇っていく様を見て、開祖が名付けたらしい。

 よし、問題なく起動できるな。


  次は、霊力の調整をしてみる。

  皇ノ術にはいくつかの種類があり、今のように体に霊力を巡らせ身体能力を上げる″陽道ようどう〟、札などの媒介を通して強力な式神や現象を引き起こす″陰道いんどう〟の二つに大きく分けられる。

  今回は得意な陽道を実感することにする。陰道はあんまり得意じゃないんだよなぁ。なかなか綿密な式神を編むことができない。

  簡単な術式だったら足し算をするみたいに組み立てられるのだが。

  爺ちゃんにも、

「どうして儂以上の速度で術式展開できるのに、それが札の回路構成に向かない」

 とよく言われた。


  それはともかく、今からやるのは、″陽道〟の基礎の基礎、″昇天しょうてん〟。段階をつけて、少しずつ体のリミッターを外す強化術式。

  ″昇天〟を起動した途端、すっと頭の中がクリアになる。五感が鋭くなり、全身の筋肉が引き締まる感覚を覚える。これも問題なさそうだ。よし、このまま段階を上げていくか。


 循環率10%………問題ない。


 循環率20%………問題なし。


 循環率30%………まだ大丈夫だ。周りに生き物がいる気配はないし、もう少し出しても大丈夫だろ。


 循環率40%………あれ?いつもならここら辺が限界値の筈なんだがな。底上げされて、多少総量が増えてるのか。


 循環率50%………これでやっと全体の半分ほど。おかしい。まだまだいける気がする。


 循環率60%………待て待て、すでに俺のキャパを20%もオーバーしてるぞ!?


  慌てて昇天を解除し、体の中を走っていた霊力を魂の中に戻す。灰色の光は消え、精神の高揚が収まっていく。

  ふうーっと息を吐くと、腕組みをして考える体勢に入った。


  状況を整理してみよう。

  最初に、まだ細かい調整をできない俺は昇天の変換効率もだいたい1割きざみにしかできない。そして普段・・の俺の霊力の総量は爺ちゃんの4割といったところだ。鍛錬での循環の段階は爺ちゃんを基準にやっていた。

  なのに、それをやすやすと超えて強化術式をできている。感覚では60%くらいまでだった筈だ。

  つまりあと俺の限界分がまるまる残っているということで…

  とすると単純計算で、俺の霊力は2.5倍に跳ね上がっているということになる。


  …結論。増幅しすぎだろ!


  暴走しないよう御守りが補助してくれるからまだいいが、下手したら肉体の方が耐えきれずに崩壊を起こすぞ。

  いや、確か体の方も色々底上げされてるんだったっけ。それもどこまで耐え切れるかわからんから、試すのはまた今度にするか。


  とりあえず、今は地球での限界で練習しよう。霊力は使い切ると体が動かなくなる。もしも近辺に危険な生物がいたら目も当てられない。

  陽道にも色々とあり、打撃に霊力の衝撃波を乗せる″空波からなみ〟や皮膚の表面を霊力で覆い、肉体の強度を上げる″龍鱗りゅうりん〟などがある。


  まずは″空波〟から。

  腰を引き、左足を前に、右足を後ろに踏み込む。そして腰の回転を軸として魔力を纏わせた右拳を、打つ!


「ハッ!」


 バギャァァァァ!!!!

  ″空波〟が当たった瞬間、目の前にあった木が粉々に吹き飛んだ。衝撃波は止まることはなく、木々を薙ぎ払い、どんどん先に突き進んでいく。

  やがて500メートルほど先で、何かの「ギャンッ!!!」という悲鳴とともに″空波〟が消えた。


 《おめでとうございます!レベルがアップしました!ステータスを確認してください!》

 《おめでとうございます!行動スキル【流動Lv1】を習得しました!》

 《魂に蓄積された記憶を検索中…》

 《おめでとうございます!行動スキル【流動Lv10】にレベルアップしました!》

 《レベルカンストボーナス!全ステータスに100プラスされます!》

 《おめでとうございます!行動スキル【流動Lv10】は固有スキル【龍鱗】に変化しました!》

 《おめでとうございます!通常スキル【身体能力強化Lv1】を習得しました!》

 《魂に蓄積された記憶を検索中…》

 《おめでとうございます!通常スキル【身体能力強化Lv10】にレベルアップしました!》

 《レベルカンストボーナス!全ステータスに100プラスされます!》

 《おめでとうございます!通常スキル【身体能力強化Lv10】は【身体能力超強化Lv1】に進化しました!》

 《おめでとうございます!通常スキル【体術Lv1】を習得しました!》

 《魂に蓄積された記憶を検索中…》

 《おめでとうございます!通常スキル【体術Lv5】にレベルアップしました!》

 《おめでとうございます!行動スキル【格闘技Lv1】を習得しました!》

 《魂に蓄積された記憶を検索中…》

 《おめでとうございます!行動スキル【格闘技Lv4】にレベルアップしました!》

 《おめでとうございます!固有スキル【魔術】を習得しました!》



  あまりの威力にぽかんとしていると、頭の中に明るい女性の声が何度も響く。

  しかし、それに反応することはできず、ただただ自分のやったことに現実味を持つことができなくて、拳を振り抜いた体制のまま固まった。


「………………………………………………………………………………………はっ!?」


  ようやくこちら側に戻ってくる。体感時間で、おそらく十分はフリーズしていたと思う。


「さて…」


  いろいろと頭の痛くなることが起きたわけだが…

  まず第一に、俺の″空波〟。あそこまでの威力は地球ではあり得なかった。明らかに霊力の伝導率が上がってる。

  伝導率とは、有り体に言えばどれだけ術を強力に、そして素早く行使できるかだ。

  そもそも、陰陽道とは自然のことわりに干渉する術である。

  魂を介して世界の仕組みにアクセスし、霊力という自らの命の力を使って限界を超えたり、特殊な媒体に生命を宿したりする。

  陽道は自らの魂との繋がりを強靭にし、入れ物である肉体を強くするもの。

  陰道は八百万の神々に祈りを捧げ、自然現象を引き起こすもの。

  当然神々には自我があり、どんなに小さな下位神でも人を選別する権利がある。

  いかに自然に気に入られ、頼みを聞いてもらえるかで霊力の伝導率は決まる。

  まだ爺ちゃんに遠く及ばない俺では、せいぜい半径5メートルにいる神霊にしか命令は聞いてもらえない。

  しかし、目測した限りでは500メートル以上〝空波〟は飛んで行った。

  しかも、どうやら何らかの生き物を倒しレベルアップしている。通常は牽制程度の威力しかない〝空波〟で、だ。

 

「一体、どういうことだ……?」

 

 ーーウフフ…

 ーーアハハ…


「ーーーッ!?」


  ばっと体制を整え、周りを見渡す。

 しかし、何も出てくる気配はない。

 …なんだ、今の笑い声?


  しばらく警戒していたが、笑い声はもうどこからも聞こえないので、緊張を解く。霊力を使って近辺を探ろうとしたが、すぐに頭を振ってやめた。


「…いつまでも考え込んでても仕方がないか」


  ステータスを確認すれば、ある程度のことがわかるはずだ。

 

「ステータスオープン」


 ーーーーーーーーーー

 皇 龍人 17歳

 種族:人間

 レベル:3

 職業:陰陽師

 装備:戒めの髪飾り

 ステイタス

 HP:1800 MP:4400

 体力:2000 腕力:1800

 耐久:1700 俊敏:2100

 精神:2200 知力:2300

 称号スキル

 なし

 通常スキル

【身体能力超強化Lv1】【体術Lv5】

 行動スキル

【格闘技Lv4】

 固有スキル

【魔術】【龍鱗】

 ーーーーーーーーーー


「……は?」


  たった一回のレベルアップで大幅に強化されたステータスに、俺は間抜けな声を上げた。

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