二話 転生、いきなり森の中。
久しぶりの投稿です。
肥沃な大地の霊力を感じ、パチっと目を開ける。
上体を起こして周りを見ると、無数の木が視界に入ってくる。ここは…森の中か。暇潰しに読んでいたウェブ小説では定番だったな。
両足に力を込めて立ち上がり、手で服についた砂を払う。そしてぐっと伸びをした。
心なしか、いつもより体が軽い。これが底上げの効果ってやつなのかな。
「よし、それじゃ…」
周りに生き物の気配がしないことを確認し、集中して自らの中に意識を向ける。すると、胸の中心を起点として、そこから透き通るような何かが全身を循環している感覚を覚えた。
どうやら霊力の廻りは問題ないようだ。それどころか、以前より総量が増している気がする。
体に異常がないことがわかったので、今度は自分の格好を見てみる。
無地の白い半袖シャツに、茶色いベルトで締めている七分袖の灰色のズボン。黒い靴下と運動用のスニーカー。
死ぬ寸前までは夏だったので、地味で目立たないラフな格好をしている。
いや、俺の髪灰色だった。しかも両方のもみあげに霊力が暴走しないように御守り《おまもり》のアクセサリーをつけてるから、外出するときはそれはそれは目立ってたな。
俺の外見は適当に切り揃えられた生まれつき灰色の髪に、友人曰くそこそこ整った顔立ち。瞳の色も灰色だ。身長は175センチくらい、長年地獄のような生活で鍛えてきたから、結構筋肉はついている。
浮世離れしたこの外見に、学校のやつらは大半が薄気味悪いと言って近寄ってこなかった。気にも留めなかったのはあいつくらいだ。
ああでも、文化祭で(友人に強制的に)一度だけ女装させられたときはかなりヤバかった。男にしては髪が長いし、整っているのベクトルが女顔寄りみたいだから、物好きな女子生徒にいじられまくった。おのれ友人、あの時腹抱えて爆笑しやがって。
……なんか一人語りしてたら悲しくなってきた。
「森の中で何やってるんだろう、俺…」
地面に両手両膝をついて項垂れていると、ブルブルとポケットが振動した。
入っていたスマホを取り出し、立ち上げる。すると、一通メールが届いていた。
『拝啓、親愛なる龍人くんへ。
やあ、このメールを見ているということは、目を覚ましたんだね。良かった。
突然だけど、重ね重ね謝罪する。
直前に手元が狂ったみたいで、間違えてその世界で前人未到と言われている秘境に転移させてしまった。ポンコツな神でごめんね。
お詫びの印として、君に案内役の下級神をつけることにした。そちらの世界のことも全て知っているはずだから、バンバン質問してやってくれ。
あと、言い忘れてたことが二つほど。
君のスマホ、そちらの世界に合わせて少しいじらせてもらったよ。マップとか。
それと、その世界にはステータスと呼ばれるものがある。頭の中でステータスオープンと念じると自分のステータスが確認できるから、やってみて。
長々とすまない。それじゃあ、第二の人生を謳歌してくれ。
君の親愛なる友人、伊邪那岐大神』
メールを読み終わるとともに、思わず額に手を当てる。
色々言いたいのをぐっとこらえ、代わりにため息をつく。
さて、これからどうしようかと考えていると、不意にスマホの画面が真っ暗になった。
何事かと持ち上げてみれば、今度は真ん中にゲージのようなものが表示されている。
一体なんだ、これ?
…まあいいや。とりあえず、今はステータス確認をしてみよう。
「ステータスオープン」
そう呟くと、脳内にリストのようなものが浮かんできた。
ーーーーーーーーーー
皇 龍人 17歳
種族:人間
レベル:1
職業:陰陽師
装備:戒めの髪飾り
ステイタス
HP:1000 MP:3600
体力:1200 腕力:1000
耐久:900 俊敏:1300
精神:1400 知力:1500
称号スキル
【創世神の友】
行動スキル
なし
固有スキル
【魔術】
ーーーーーーーーーー
ふーん、これがステータスか。まだレベルは一、と。ま、この世界に来たばかりだし当然だ。称号スキル?ってのは…とりあえず保留で。【魔術】…多分、皇ノ術がこの世界ではそういう風に認識されているんだろう。
その後も調べて聞いてみると、ある程度のことがわかった。
レベル:強さの値のようなもの。魔物や高レベルの相手と戦うと経験値が入り、上がっていく。
HP:生命力を数値化したもの。ゼロになると死ぬ。
MP:魔力を数値化したもの。ゼロになると魔法を行使できなくなる。
体力:そのまんま。多ければ多いほど長く行動できる。
腕力:そのまんま。高ければ高いほど攻撃した時より大きなダメージを与えられる。
耐久:頑丈さのこと。高ければ高いほど持久力がある。
俊敏:いかに素早く動けるかを数値化したもの。長距離を全力疾走すると伸びることがある。
精神:そのまんま。これが低いと状態異常(混乱や酩酊など)になりやすい。
知力:そのまんま。低いイコールバカ。
要約すると、こんな感じだ。
あとは、これがどれだけ通用するかだな。もしかしたらこの世界の人間の方がもっと強いのかもしれないし、逆に俺が普通より強いと言うこともあり得る。
要検証、だな。