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「てめぇがあたしの新しいご主人様か?」


 竜人「エルザ」。彼女が竜闘気の使い手らしい。


 見た目は悪くない。ベリーショートの髪型に、ボーイッシュな中性的な顔立ちをしてる。肉体は引き締まっているが、カナルのように筋肉が発達しているわけじゃない。細マッチョって言う感じだ。もちろん出るところは出ているがね。


「もう一度聞く、あんたがあたしの主か?」


「おう、俺がエルザのご主人様だ」


「ふん!!」


 瞬間、エルザを拘束していた鎖がちぎれ飛ぶ。


「なんだと!」


 奴隷商人ロイドが叫ぶ。


 エルザは鋼鉄の鎖を引きちぎると、俺の方を向いて近づいてくる。


 え? 何? まじ? 俺はオロオロ。


 エルザはにやりと笑って言った。


「耐えられるかい?」

 

 エルザから拳が飛んできた。


 比較的大ぶりのモーションだったので、ダンジョンで鍛えられた肉体が自動で対応した。


 俺は間一髪で避けた。体全体で避けた。ムンクの叫びのように、ひょろっと避けた。


「おおぅ!? 避けた?」


 エルザは避けた俺にびっくりしている。ただの一般人だとでも思ったか? 俺は趣味でダンジョンに潜っている男だ!


「ご主人様!!」


 カナルがすぐに駆け寄ってくる。


「てめぇ……。あたしのパンチを避けたな……しかも不意打ちの一撃を」


 なんだかエルザが俺を見て驚いている。不意打ちって言っても、俺に見えるようにパンチの溜めを作っていたじゃないか。


「もう一発だ」


「は!?」


「ご主人様!!」


 再度パンチが飛んで来る。今度はさっきより早い。カナルの脇をすり抜けて俺に当たるコースだ。まさかカナルもまた殴ってくるとは思わず、俺を守るのが遅れたようだ。


 直撃するかと思われたが、俺はまたムンクのように避けた。いや、もう少し分かりやすく言うなら、海に流れるワカメのように避けた。


「!!……てめぇ、まぐれじゃねぇのか」


 レベルが30を超えたおかげか、俺の動体視力は相当上がっていた。避けられたってのも、ほとんど運だが、彼女の動きがなんとなくわったのだ。


「エルザ!! 何をしている!! お前たち、エルザを取り押さえろ!!」


 俺たちのやりとりをぽかんとしてみていた商人ロイド。ようやく我に返ったようで、周りに控えていた護衛にすぐ命令する。男達は呪令印の影響か、バネ人形のようにエルザにとびかかる。


「取り押さえろ!!」


「黙ってろ」


 エルザの拳から雨のようにオーラの弾が飛ぶ。弾が当たった護衛たちは壁に叩きつけられ、全員一発でノックアウト。


 あららー。そんな技を持っているのか? 俺には相当手加減していたようだ。


「な!! エルザ! いきなりどういうつもりだ! 今までの恩を仇で返すつもりか!!」


「お前らに恩などない」


 エルザの体から迸るオーラ。多分竜闘気ってやつだろう。俺にも見えるくらい、赤いエネルギーが吹き上がっている。まともにエルザを拘束しないから、こうなってしまった。これは商人のミスだな。


 これは非常にまずい展開なんじゃないか?


「ご主人様、下がってください」


 カナルが庇うように俺の前に出る。おおっ、普段はドジで人見知りのカナルが頼もしく見える。


「下がってろ。同族は殴りたくない」


「下がるのは貴方です」


 カナルとエルザ。二人の視線がバチバチとぶつかり合う。彼女らの背景に竜と虎が見えるほど、バチバチいっている。


 いったいなぜこうなった? エルザは何がしたい? 俺は彼女らに割って入ろうとしたが、始まってしまった。


 先に仕掛けたのはエルザだった。目にもとまらぬほどの右ストレートを放った。今度は本気だったらしく、俺の反応速度を超えたパンチだった。


 カナルはエルザの放ったパンチを、素手で受け止めた。


 バチィッという衝撃音が響く。カナルは竜闘気を使えないため、負けるかと思ったがそれは杞憂だった。カナルは魔力を手の平に集中させ、シールドのようにしてエルザの拳を受け止めていた。エルザの竜闘気のパンチがしっかりと防御されていた。


「あたしのパンチを止めた? しかもこれほど高密度な魔力操作を……」


「つい最近出来るようになりました。ダンジョンでいきなりレベルが上がったもので」


「ダンジョンでだと?」


「ご主人様と一緒にいると、レベルが面白いように上がるので、高度な魔力操作も出来るようになったのです」


 おいおい。それは初耳だぞ。


「へぇ……そうかい」


 エルザは俺を見て舌なめずり。そのしぐさがやけに妖艶だった。


「なんにせよ、一日に三回もあたしの拳が防がれたのは初めてだよ。しかも違う相手にね」


 俺は防いでない。たまたま、偶然に、うまく避けられただけだ。


「面白そうだ。なぁあんた。あたしのご主人様になってもらえないかい?」


「エルザ!! お前は商品なんだ!! 分を弁えるんだ!! いくらお前でも、この商会の最高戦力には手も足も出ないだろう!! いい加減その態度を改めるんだ!!」


 ロイドがカットインしてきた。


「クラウドや、ファウストか……。確かに勝てないな。でもさ、今ここにはいないだろ? あいつらは一瞬でお前の前に駆け付けられるのか?」


「…………。エルザ、もう少し聞き分けが良ければこの方にお売りしても良いかと思っていたが……」


 奴隷商人ロイドは何か懐から取り出そうとする。エルザはそれを見て目の色を変える。瞬間、エルザから濃密な殺気が放たれた。まずい、ロイドを殺す気だ。


「ロイド! 俺はこの子を買うぞ! だから争う必要はない! 大丈夫だ!! 俺が買う!」

 





 



 


  

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