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ダンジョン攻略は1か月ほど休みにした。
休みの間に訓練や戦闘時の連携や役割を決める。週休二日で、奴隷たちには訓練をしてもらう。俺は俺で彼らが訓練する間は飛空艇学校へ行く。ライセンスを取得するからだ。
学校へ行っている間は飛空艇の掃除や管理は奴隷たちに任せた。俺がきつい仕事を渡さないからか、奴隷たちは活き活きとしている。彼らにとって、どうやら俺は良いマスターらしい。この程度で良いマスターなら、俺はいくらでも奴隷を買うつもりだ。
俺と奴隷たちは思い思いにすごし、休みも終盤に差し掛かった頃、俺は決めた。
「カナル。悪いが今日一日だけ、俺の護衛を頼みたい。大金を持ち歩くからだ。頼む」
「もちろんです、マスター」
最初と比べてかなり態度が軟化したカナル。一緒にダンジョン攻略して、同じ釜の飯を食ったのがかなり大きい。俺を信用してくれているようだ。にこっと笑った笑顔が可愛い。
このまま押し倒してしまいたいが、築き上げた信用がなくなるので、それは辞めておく。それに押し倒すよりも、俺が張り倒される。カナルの身長は2メートルと少し。俺の身長は1メートル80くらい。体格差があり過ぎて、ビンタでも食らった日には、俺の首が飛んでしまう。
「マスター。それでどこまで護衛を?」
「ん? ああ。今日は奴隷商館へ向かうぞ。後は買い物をして帰る」
「奴隷、商館、ですか? まさか……新しい奴隷を? 私たちは、もう、いらない?」
カナルはいきなり泣き出しそうになった。
「ち、違う!! 今回はまた人を増やすんだ。毎日ダンジョン攻略できるように、交代でダンジョンに行くんだ。それに飛空艇を飛ばせるライセンスを持っている奴隷も欲しいしな。お前たちは絶対に手放さなさい」
それを聞いたカナルは胸に手をおいて、ホッとしていた。
「さて、行くぞ」
「はい!」
俺はカナルを伴い、王都の奴隷娼館に向かった。俺が初めて言った奴隷娼館だ。
相変わらずでかい建物で、30階以上の巨大なビルである。ここに何人もの奴隷が収容されているのだろう。
俺は奴隷娼館のエントランスに行くと、すぐに奴隷商人が寄ってきた。見ると、前回取引した商人だった。
「おや? あなたはマサト様。奴隷のカナルをお連れですね」
商人は営業スマイルを浮かべた。俺の事を覚えていてくれたらしい。たくさんの取引相手がいるだろうに、よく覚えていたな。商人の鏡だ。
「ああ、また買いに来たよ。それと、言いにくいが君の名前を教えてもらえないか? 名前を覚えるのが苦手でね。もうわけないが」
「ああ、私はロイドと申します。しがない奴隷商人です。一応この店舗の副店長を務めております。店長は営業で大体が外回りで、今は不在です。店長が不在の間は、代行で私が店長を務めております。金額の融通など、少しは私の采配で行えます。よろしくお願いします」
ロイドはそういって、俺に頭を下げた。
うむ。出来た青年だ。俺より少し若いが、仕事は出来る奴だろう。
俺は前回取引した場所に案内され、いつものように美人の奴隷さんから紅茶をもらった。今回はカナルの分もある。カナルには出された茶菓子を与え、食わせた。おいしそうにもぐもぐと食べている。
「随分と大切にされているようで、安心しました。カナルの装備も良質のものですね。持っている盾もミスリル製だ。かなり高価なものでしょう」
それは当たり前だ。カナルは大切な稼ぎ頭だ。可愛いうえに強い。死んでもらっては困るし、何より死んだら俺の心が許さないだろう。
「当然だ。カナルは良く働いてくれる。今回も良い奴隷が欲しい。戦闘奴隷と、飛空艇の免許を持っている奴隷だ」
「ほう、飛空艇の免許ですか。飛空艇をお持ちなのですね? 大きさはどの型でしょうか?」
「中型の飛空艇だ。一応大型に近いサイズだ。戦闘艇ではない。分類は高速輸送艇だな」
「さようですか。ならばちょうどよい奴隷がいます。借金奴隷ではありますが、種族はエルフで腕も良いです。プライドが高いのが難点ですが、きっとよい仕事をしてくれるでしょう」
エルフ。ついに俺にも来たるべき時が来たか。エロフともいわれる、エロの権化、エルフ。こやつらはどの種族の男にも犯される不遇の種族だ。(俺調べ)
エルフならちょっと高いんじゃないか?
「金額は3000万です。いかがいたしますか」
3000か。やはりかなり高いな。戦闘奴隷でもないし、特出した技能もちでもない。本来なら信じられない値段だが、これは仕方ない面もある。飛空艇の操縦技術は、やはり買う側からすると喉から手が出る技術なのだ。
飛空艇の操縦技術者を企業が雇うと、年間で1000万かかると言われている。しかも個人で雇うとなると、腕の良いライセンス持ちをスカウトせねばならない。実際の給料は1500万は払わなければならないだろう。こうなると奴隷を買った方が安上がりとなる。3000万は仕方ない値段なのだ。
「エルフで3000、しかもライセンス持ち。ならば買おう。即決だ。このまま戦闘奴隷も見たい」
「ご成約ありがとうございます。では戦闘奴隷の種族や年齢、能力などのご希望はございますか?」
「そうだな。種族はミノタウロス。人数は6名。リーダー役に竜人が一人欲しい」
ロイドはかしこまりましたと言って、ダンジョンに長けたミノタウロス6人を見繕ってくれるらしい。竜人に関してはきちんとした打ち合わせが必要なようで、先にミノタウロスを紹介された。
ミノタウロスは200年前までは完全な魔物だったが、品種改良と家畜化、さらには人権の獲得と、亜人としての権利を得た種族だ。
ところどころ魔物の容姿はしているが、かなり人間に近い顔をしている。体も大きく、力も強い。女の子に至っては、大きな胸が四つもあるんだ。
俺の愛牛、アイリちゃん。もともと牛が好きなので、彼女らはいつか買うと決めていた。
少しして連れてこられたのは、候補も合わせて10名ほどのミノタウロスだった。横に並ばされたミノタウロス。彼女らの奴隷堕ちの経歴は様々だが、不幸が重なっての奴隷落ちがほとんどだった。
俺は彼らを一人一人見て、軽く話し、即決で決めることにした。カナルもいくらかアドバイスをくれたので、すぐに決まった。
「次は竜人ですね? ならばこちらの者はどうでしょう」
カタログを見せてくれたのは、筋肉ムキムキの、筋肉ダルマ。もとい、男の竜人だった。顔も厳つく、体の5割以上が鱗で覆われている。かなり竜の血が濃いようだ。
俺は丁寧に遠慮する。本来なら戦力アップなので買うべきなのだが、値段が高かったのでやめた。
「彼は竜闘気の使い手で、滅多に仕入れられないのです。気が変わりましたら、どうぞお申し付けください。すぐに面会の準備を致します」
ロイドはそういうが、俺は遠慮しておく。
ほかにもカタログを見せられるが、めぼしい竜人がいない。俺がえり好みしすぎているだけだが、ミノタウロス達とはわけが違う。奴隷の中でリーダーをしてもらうのだから、人格も経歴もきちんとしたものになってくる。その上でお財布と相談だ。
「マサト様。お悩みの中申し訳ないですが、折り入ってご相談があるのです。竜人選びで決めかねているのなら、私から一人の竜人を見てもらいたいのです」
「一人の竜人?」
「問題児で、鉱山送りとなっている竜人なのですが、能力は折り紙つきです。希少な竜闘気の使い手で、容姿端麗なメスの竜人です」
女の子で、竜闘気の使い手?
「すまんが、竜人の前に聞きたい。そもそも竜闘気ってなんだ?」
「これは失礼しました。竜闘気とは、竜と竜人のみが扱える魔力武装のことです。無属性の魔力を鎧に具現化すると言われておりまして、高度な使い手は鋼鉄の鎧を魔力で生み出せるとか。さらにその能力は、人間の身体強化魔法の100倍以上と言われておりまして、竜人が一騎当千と言われるのはこの力が所以です」
ふむふむ。まったくイメージ出来んが、とてもつもなく強いってことだな? 分かったぞ。
「分かった。それで見てほしい竜人ってのは?」
「呪令印の力を打ち破り、主に大けがを負わせた、エルザという竜人です。鉱山送り故、値段は1000万でお譲りできます。奴隷を大切にするマサト様でしたら、エルザをお任せできるのではと思いまして」
1000万だと? 破格の値段だ。容姿端麗というし、一度見てみたいな。
「ここに連れて来れるのか? 俺が見に行くのか?」
「ここに連れてまいります。大丈夫です。特殊な魔導の鎖でつないでおきますので」
おいおい。連れてくるのは猛獣か? そんなに狂暴なのか?




