5.5
ボクは竜人のカナルと申します。
ご主人様である、マサト様に身請けしてもらってから、早一か月が過ぎました。
この一か月の間に、二回のダンジョン攻略に向かいましたが、いずれも大成功でした。
たったの二回で、億を超える報酬を手にするのは滅多にありません。マスターは神様に愛されているのかもしれません。その上、ボクたちのレベルが面白いように上がったのです。
マスターには言っていませんが、新しいスキルをたくさん覚えました。その中でも、魔力操作に関するスキルが多く、体内での高密度な魔力圧縮と解放が出来るようになりました。竜人の奥義、竜闘気に匹敵する威力を出せるようになりました。いずれ竜闘気も習得するつもりですが、今は着実に力をつけたいと思います。
初めのうちはマスターがどんな人か分からなくておびえていたけど、優しい人だと分かったので一安心です。
鞭で打たれることもないし、トイレの汚物処理とか、人殺しとかしないで済みそうです。ようやく良い主人に巡り合ったようです。これも奴隷商人のロイド様に買っていっただいたのが良かったようです。フォルトゥーナ商会はとても良いところで、奴隷たちの扱いが一番良かったからです。
今回のマスターの名前はマサト様。人族の男性です。
見た目はひょろっとした細めの人で、優しい顔つきの人です。実際優しくて、ご飯もいっぱいくれるし毎日お風呂に入れてくれるんです。リザードマンさんもみんな入るので、人数が多いです。湯船が足りないので、飛空艇の外にも仮の湯船が設置されました。ボクたちのことを良く考えてくれるマスターです。
ダンジョン攻略するために買われたので、最初は使い捨てかとも思いましたがそうではありませんでした。きちんとした装備で、ミスリル製の盾も買ってくれました。絶対に死ぬなとのことです。
こんなに良い人間がいるなら、早く出会いたかったのです。リザードマンさんたちもそうだそうだと言っていますし。
そんな優しいマスターですが、ボクが気にしていることがあります。
マスターがボクの体をいつもちらちらと見るんです。特に胸を見ています。
多分、ボクの体に発情しているだと思います。人間なのに、竜人に発情する人は滅多にいません。いくら容姿が人間に近いと言っても、肌の色も違うし、尻尾も角もあるんです。体も大きいし、マスターとは釣り合いません。それなのにマスターはボクの体をいやらしい目で見ています。
マサト様に抱かれるのは、嫌じゃないです。嫌悪感はありません。むしろ好きな方です。心の準備はいつもしていますが、マスターはボクに手をつけません。どうやらボクに気を使っているようです。
マスターは奴隷であるボクを一人の女性として扱ってくれます。とても喜ばしいことです。マスターが喜ぶことをボクはしたいと思います。頑張らなければ。
と、思っていたら、やられました。
リザードマンさんの「アイ」ちゃん、「リン」ちゃんが、マスターのお背中を流していました。
お風呂場からキャッキャウフフと声が聞こえてきました。
アイちゃんが「おっきい」やらリンちゃんが「やわらかーい」などと言っています。マサト様は「こら、やめなさい」と言っていますが、声色はやめて欲しくない感じです。
ぐぬぬぬ。
タイミングを逃したボクは、お風呂場の外で我慢するしかありません。ボクは血の涙を流しながらハンカチをギリギリ噛みました。
リザードマンは人間に虐げられて生きている種族です。マサト様に買われたみんなも少なからず、人間に恨みがあると思っていました。リザードマンさんはみんな、人間が嫌いじゃないとか言っていました。嘘だと思っていました。口ではなんとでも言えます。それなのに。
アイちゃんとリンちゃんはマスターにべったりです。
もしかしたら行為に至っているのかも知れません。人間なのに、リザードマンの女の子を愛せるなんて、さすがマスターです。
ぐぬぬぬぬぬん!
どうにかしてアイちゃんリンちゃんを出し抜かなければ。ボクに残されたのは体しかないのですから。
今度、マスターのお背中を流すために、お風呂に一緒に入りたいと思います。
ぐへへへへへ。