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俺は2000万ほどの大金を使って、リザードマン5人と、竜人のカナルに武器や防具を用意した。
2000万でも安い方の装備らしいが、防御に特化させたので、彼らの死亡率は格段に低い。
俺もがっちりと装備を固め、後方支援に徹することにした。
最初は奴隷たちだけでダンジョンに挑ませようと思った。不労所得を得るにはそれが一番だからだ。
最初はそう思ったが、あまりにそれは鬼畜過ぎる。世の金持ちたちは平然とそれをやってのけるが、俺は良心が許さない。だから一緒に行くことにした。慣れるまで俺が後ろから指示を出す。俺の方針はそれで行くのだ。
チキンな俺だが、優秀な奴隷たちがいるのでいくばくか心は軽い。俺はこの国の名所、七大ダンジョンの一つ、竜のアギトに来ていた。
竜のアギトはとても歴史深く、未だに攻略されていないダンジョンだ。地球の中心まであると言われるこのダンジョンは、5000階層は超えると言われている。転移門も未だに800階層までしかない。攻略は永久に不可能だろうと言われている。
特需、と言われるダンジョン。
魔物が無限に湧き、素材が剥ぎ取り放題。宝も無限に湧く。その代り毎日冒険者や騎士が死ぬ。力自慢の一般市民も挑戦できるため、死者は毎日100人以上出ている。国内外問わず人が来るので、死者が出ても国民の数はさほど減らない。人が生まれる数の方がはるかに多いからだ。
さて、長い話はさておき、奴隷たちとダンジョンにもぐった俺だが、予想以上の結果が出た。
それは悪い方か、良い方か。
結果は。
1億シリル相当の宝を得た。たった一日でだ。明らかにビギナーズラックだが、運も実力のうちである。
ダンジョン内で俺らが魔物を討伐して、素材や魔物肉で得た収入は50万。俺と奴隷たちで人数割すれば大した金額ではないが、宝箱から得た金銀財宝が当りだった。
レアメタルと言われるルーンミスリルのインゴットが入っていたため、金額が一億まで跳ね上がった。
毎日潜っても宝箱にありつけない奴らには悪いが、宝は見つけたもん勝ちだ。
最初のダンジョン攻略で緊張したが、みんな無事に帰ってきた。金も手に入った。俺は最高にラッキーな男である。これまでの人生でアンラッキーはなんだったのかと問いたいくらいだ。俺は調子に乗って、奴隷たちと酒場で宴会をあげてしまった。近くのテーブルに座っていた冒険者も巻き込み、朝まで泥酔コース。
リザードマンは酒に弱いのかすぐに酔っぱらってダウンし、カナルはエール酒のひと口で寝ゲロを吐いた。俺は近くの冒険者に朝まで酒をおごり続け、食って飲み続けた。酒場の迷惑などお構いなしである。どうやら俺が一緒に飲んでいた冒険者達はドワーフで、酒にはめっぽう強かった。
宴会をあげてから、そのまま朝になってしまった。店主からは怒りの咆哮とばかりに、全員に水をぶっかけられて、叩き起こされた。
いつまでたっても帰らない俺たちに酒場のオーナーはカンカンになっており、いつの間にか俺たちは寝てしまっていたようだ。店主は朝まで俺たちに付き合ったようで、目の下にクマがある。俺はすみませんすみませんと平謝り。
朝までいて申し訳ないと伝え、30万ほどの金を握らせた。本当は俺たちが汚した床やテーブルを、掃除などして手伝えばいいのだが、俺を含め全員二日酔いで気持ち悪い。ここはニコニコと金で解決させてもらった。
一緒に飲んだドワーフたちとは酒場で別れ、今度はダンジョンで会おうと約束した。
ぐでんぐでんになった奴隷たちを引きずって、飛空艇に帰ってきた俺。シャワーを浴びてベッドに突っ伏すと、次の日の朝まで起きなかった。どうやらそれは奴隷たちも同じで、彼らも寝続けていたようだ。
それからさらに翌日。
ようやくまともになった俺とリザードマンとカナルに、成功報酬として50万ずつボーナスを出した。リーダーのカナルには特別100万だ。これで好きなものを買えと言った。
奴隷たちは目を丸くしていたが、俺が絶対に使えというと、泣いて喜んでくれた。
第一回、ダンジョン攻略は大成功。宴会だけは控えることを誓い、資産を増やして、次に備えた。
★★★
俺は数日休みを挟んだ。飛空艇での暮らしに奴隷たちを慣れさせる為だ。まだまだチームワークがなっていないので、一緒に生活することは大切だ。
10日ほど休日を挟み、第二回のダンジョン攻略に向かうことにした。俺がリザードマンの顔と名前を覚える頃には、かなり仲良くなっていた。
高級ホテル並みの飛空艇の中は、彼ら奴隷も満喫したようで、皆に笑顔が増えた。これなら良い結果を残せそうだ。士気も高いからな。
第二回のダンジョン攻略。俺はさらなる安全を考えて、全員に高いアイテムを買い与えた。一個100万シリルという額だ。
そのアイテムは帰還玉。あらかじめ帰る場所を玉に記憶させ、地面に叩き付けて割る。すると玉に刻まれた魔法が発動して、転移して帰れるという物だ。俺は危なくなったら躊躇せず使えと言っておいた。
リザードマンたちはこれにも感激していた。なぜマスターはこんなにも高価なものを俺たちに買ってくれるのかと。今まで魔物というだけで蔑まれてきたのに、俺たちに優しくしてくれるのはどうしてだと。
俺は笑顔で応えたが、内心は腹黒い。
君たちリザードマンが死んだら、俺は死ぬからだよ。それは直接的、社会的にもな。金づるがいなくなるんだ。大切にもするさ。まぁ本当は彼らが俺の目の前で死ぬのが我慢ならないんだけどね。やっぱり、慕ってくれる奴に死なれるのは嫌だしね。
★★★
ダンジョンに潜ってから、早三日が経過した。
俺が後方支援と指示プラス飯係だ。みんなの食事バランスを考えて俺は今日も飯を作る。
今回は一日で宝箱発見は出来ず、ダンジョンに潜りっぱなしとなってしまった。用意している食料もそろそろ底をつきそうである。今回はろくな結果は残せないが、仕方ない。俺はみんなの無事を考えて、撤退を考えていた。
だがしかし。
深部200階層というところで、宝箱を発見。これにも金銀財宝が詰まっていた。もういいだろうと言うことで、すぐに転移門で地上に帰還。太陽を見た時はホッとした。
俺たちは帰還したその足でギルドの買取カウンターに直行。宝箱の宝石類を売り払った。
換金額は2億に達した。ビギナーズラックも二回続くと、運だけではない何かがあると思った。俺は、今人生のピークにいるのかもしれない。
とにかく、俺は踊って騒ぎたい気分になった。俺が騒ぎたいのを我慢していると、後ろの方ですでに奴隷たちは騒いでいたが。ああそうだ。当然だが、このあと彼らにはまたボーナスを渡すつもりだ。彼らが一番頑張ったのだからな。
俺はまた資産を増やすことに成功した。たった数か月前まではただの一般人だったのに、今は大金持ちだ。成金とは怖いな。
金を得たことで身の破滅しないようにせねば。俺は奴隷たちの命を預かっている身だ。
ちなみにだが、深部200階層に向かう頃には、一般人の俺もレベルが30近くまで勝手に上がってしまった。後方支援だけだというのに、俺は中堅冒険者並みのレベルになっていた。今までは普通の体型だったが、かなり筋肉質になり、腹が六つに割れた。何もしていないのに、かなり筋肉質になった。