4
数日して奴隷たちは送られてきた。飛空艇が停泊してるドックの入り口に、彼らは並ばされた。
「彼らの健康状態は良好です。最後に奴隷を確認していただき、お引渡し完了となります」
奴隷たちを運んできた奴隷は、俺が店で見たことない奴だった。多分宅配や営業での、外回り専用の商人だろう。
奴隷商人がどうぞ確認してください、というので、俺は彼らを一人一人確認した。素人の俺が、奴隷の何を見ればいいのかはさっぱりわからん。ただ血色は良いので、健康なのは確かだろう。俺はもらった書類にサインをして、商人に返した。
「ありがとう。問題ないですね」
「そうですか。このたびは我らの商会をご利用くださりありがとうございました。次回もよろしくお願いします」
恭しく挨拶すると、次の仕事があるのか、商人はさっさと帰って行った。
後に残ったのは、横一列に並んだ奴隷と俺のみ。
奴隷だが、一人はもうすでに名前も知っている。竜人のカナルである。
女の子でありさらに身長が高く、がっしりとした体つきが特徴だ。顔は体に反して童顔で可愛い。特質すべきは、俺の顔が完全に埋まるほどのおっぱいをお持ちなことだ。俺は奴隷に嫌われたくないので、優しく接するつもりだ。その後は、あの手この手で甘やかして、いつかベッドインを目論んでいる。このとんでもないロケットおっぱいを楽しまずして、何が奴隷か!!
次に5人のリザードマン達だ。
彼らは足や腕、首といったところに硬い鱗が生えている。男は胸や背中にも鱗がある。女の子はないみたいだ。
男は完全にトカゲ顔だが、女の子はいくばくか顔が人間に近い。目もクリクリで可愛い。彼女らも結構スタイルが良いので、いつかはベッドインするつもりだ。俺に種族の違いなど無意味だ。変態の俺にかかれば、獣姦だって出来るはずだ! …………いや、出来る、のか?
リザードマンたちは結構怯えていて、何をさせられるのかビクビクしているようだ。
彼らは「オレタチ、ナニスレバイイ」と言っていたが、とりあえず自己紹介をさせた。
女の子の二人は「アイ」と「リン」という。男の子の三人は「ゴン」「グルッド」「ザイツ」といった。年齢は全員20歳程度とのことだ。男と女の違いは分かるが、あとは顔が似たり寄ったりだ。見分けがつくまで大変そうだな。名札でもぶら下げてもらうか。
竜人の「カナル」だが、改めて特徴をあげよう。彼女は頭に一本の角が生えており、肌は青い。胸は爆乳で、お尻はむちむち。とてもエロッちぃ体をしている。カナルはリザードマン以上にオドオドしているので、俺からすれば楽に接することができる。強気でプライドが高い女の子よりかは楽だからだ。
「俺の名前はマサトだ。普段は主人かマスターと呼べ。では、お前たちの部屋に案内する。ついて来てくれ」
俺はドックに停泊している飛空艇に入る。奴隷たちも全員ついてこさせ、飛空艇の中を案内した。
「リザードマン。お前たちの部屋はここだ」
俺は居住区画の、倉庫に来た。彼らが寝泊まりできるように、二段ベッドを用意し、倉庫に並べて置いた。倉庫には椅子や机、人数分のウッドチェストとロッカーを用意した。一応簡単なカーテンで一つ一つのベッドを仕切れるようにもしてある。
「オオオオオ!!!! ベッド!! ツクエ!!」
なにやらリザードマンたちは騒いでいる。どうしたのか。部屋が気に食わなかったのだろうか?
「マスター、アリガトウ!! コンナイイトコロ、スメル、オモワナカッタ!!」
リザードマンたちは全員感激している。そうか、喜んでいたのか。ならばよかった。ただの倉庫を改造しただけだが、それだけで喜ぶとはな。小さな丸い窓が二つと、全面打ちっぱなしの鉄壁なんだがな。一応空調は取り付けたから、暑い寒いはないだろう。
「あの、マスター……。ボクの寝れるベッドは……」
リザードマンがわいわい騒いでいる中、カナルがおずおずと聞いてきた。もじもじと太ももをすり合わせている。改めて聞いたが、カナルの声はハスキーな声だった。さらに自分のことを「ボク」と言ってきた。
「ボク」、と。
俺の中でカナルの株が急激に上がっていく。ボクっ娘だったとは! 素晴らしい。
カナルの大きさは2メートル15センチだ。当然リザードマンたちの小さなベッドでは寝れない。
「カナルはみんなのリーダー役をやってもらう。だからは部屋は別だ。こっちにある。リザードマンたちもついてこい」
俺は全員を連れて、カナルの部屋へ来た。
狭い居住区なので、倉庫からかなり近いが、一応全員に案内した。
「ここだ。好きに使っていい」
完全な鉄製のドアで、開けると中には四畳ほどのスペースがあった。ベッドに椅子、机と、リザードマンのところにあるものと同じである。ただ、完全な個室になっているだけだ。
「え? 個室ですか? 本当に……?」
「何を言っているか分からんが、カナルはリーダーだ。だから個室の待遇だ。リザードマン。お前たちも優秀な結果を残せば待遇はどんどんあげてやる。頑張れよ。ただ一つだけ言えるのは、大きな怪我は絶対にするな。危険だと思ったらすぐにやめろ。絶対に死ぬことは許さん。それだけだ」
リザードマンたちは俺の言葉に泣いて喜んでいた。「ヤサシイ」やら、「アリガトウ」やらいろいろ言ってくる。
なんだか変に思ったので、これまでの生活をリザードマンに聞いてみると、悲惨な人生を歩んでいることが分かった。今まで仕えてきた人間はほとんどがひどいやつで、リザードマンたちは使い捨ての駒として使われてきたらしい。親兄弟、親類縁者、みんな死んでしまったらしい。
俺はリザードマンからそんなことを聞くと恐ろしくなった。彼らは人間を恨んでいないのだろうか? 契約印があって俺は奴隷たちに殺されないが、第三者を使った暗殺はされる。こいつらがその気になれば俺の寝首をかくこともできるはずだ。俺は恐ろしくなった。
「お前たち、人間は嫌いじゃないのか? 俺が嫌いだろう?」
「イイニンゲンモ、イタ。ダンジョン、タスケテクレタ。ニンゲン、イイヤツ。イッパイ、イル」
「キライ、ニンゲン。イル。スキナニンゲン、イル」
リザードマンの女の子「アイ」と「リン」が言った。どうやら人間すべてが嫌いじゃないようだ。俺はそれを聞いて少し安心した。
「そうか。これからは俺がお前たちの面倒を見る。たくさん美味しいものを食わせてやるから、がんばれよ」
「ウオオオオオオ!!」
リザードマンは俺の言葉に涙して喜んでいた。竜人のカナルも少し喜んでいるように見える。
改めて彼らを見ると思うところがある。
彼らを死なせてはならない。幸せにしなければならないと思った。
奴隷で金儲けと簡単に考えていたが、俺は冷酷な人間じゃない。命を使い捨てに出来る人間じゃなかった。
俺は喜んでいる彼らを見ると、責任という言葉が肩にのしかかってきた。
やべー。やはり先走り過ぎたか。
やっぱり10億は細々と使いきるべきだったか? それなりの家を買って、小さな飛空艇を買う。あとは飛空艇をいじりながら、田舎で細々と暮らせば、快適に暮らせたんだ。無理をする必要はなかったんじゃ……。
「マスター。ありがとうございます」
カナルは深々と腰を折って、頭を下げた。頭を下げた時、彼女の硬い角が俺の脳天に直撃した。
俺は頭を抱えてうずくまる。うごぉおおお。
「あわわわわわ。もももも、もうしわけ、あああ、ありましぇん」
カナルは涙目で俺に謝ってくる。いきなり主人である俺にやらかしたからだろう。結構ドジっ子なのか?
「だ、大丈夫だよ。気にしないでね」
俺は頭をさすりながら赦してやる。
「す、すみません」
しょんぼりとするカナル。体が大きいが、あきらかに小さく見えるほど項垂れている。
気にするなと言って、飛空艇内を案内する。案内しながら、決意を固める俺。
まぁ、やってやるさ。ごみ回収の仕事ははもう十分にしたからな。ここからが俺のターン!!
追記だが、俺の愛牛アイリちゃんは、飛空艇の中でのんびりと暮らしている。飛空艇の一区画を散歩できるように芝生を植えたのだ。ホームセンターで安い土と芝生が売っていたからだ。
もちろん、飛空艇内に土と芝生をいきなり植えるわけにはいかない。
技術屋に頼み、床の鉄板が腐らないように改造してもらった。その上で芝生に水を撒いた後の排水システムと、新鮮な空気を取り込む排気システムを安く作ってもらった。安いと言っても、1000万単位で金が吹っ飛んだが。そのおかげではあるが、飛空艇の中に簡易的な牧場部屋の完成である。
アイリちゃんはその牧場部屋にて、のんびりと生活している。おかげで飛空艇の管理が少々大変になったが、それはそれでいい。アイリちゃんのためだ。
うもー。