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 俺は飛空艇の生活に慣れ、飛空艇のライセンスを取る学校に通いはじめた。学校についてだが、さして面白いこともなかった。金さえ払えば大抵受かる。チームでの集団試験などはなく、完全に個人授業だった。


 俺は金がなくてできなかったことを次々と実現していく。子供時代に夢想していたことが現実になり、俺は最初戸惑った。最初だけな。


 人間は贅沢にはすぐに慣れる。貧乏には慣れないが、贅沢に慣れるには一週間もあれば十分だ。俺の心はすぐにデカくなっていった。



★★★



 さてさて。


 金のある生活にも慣れ始めた今日。


 俺はかねてより計画していた、奴隷を買うことに踏み切った。俺調べでは、「フォルトゥーナ商会」と呼ばれる商会が良いらしい。事業を手広く広げているが、奴隷商から始まった歴史ある商会らしい。なので、奴隷に関してはピカイチだとか。


 そんで俺は今、フォルトゥーナ奴隷商館の中にいる。


 スーツをビシッと着込んで、出来る男みたいにアピールする俺。商館に入るとすぐに奴隷商人が寄ってきて、丁寧に案内された。


 そのまま商談するための個室に招かれると、美人なおねいさんが紅茶を持って俺の前に差し出した。とてもきれいな人だ。胸に値札があることから、この人も奴隷なのだろうか?


 テーブルを挟んで向かいに座る奴隷商人。若い青年で、高そうなスーツを着ていた。なにやら手には分厚い本を持ち、まっすぐに俺を見ている。


「お客様。本日はどのような奴隷をお考えで? 私からは、一押しの奴隷がございますがどうでしょう」


 奴隷商人の青年は、言うや否や手に持っていた本を俺に見せた。強引なセールスだが、口調と行動が柔らかいので、すんなりと本を受け取ってしまう。


 本をめくってみると、顔写真と値段が書いてある。どうやら奴隷のカタログだったらしい。


 カタログを見ると、きれいな女性が写っていた。若い娼婦らしい。


「この者は借金奴隷でして、身元もしっかりしています。金を稼ぎ、奴隷解放までは最低30年の契約です。肉体的な性の奉仕も可能ですので、おすすめですよ」


 俺は商人から説明を受け、ごくりと唾を飲み込む。


 肉体的ご奉仕か。この子を買えば素晴らしい毎日になりそうだな。 


 しかし。


「すまない。私の欲しい奴隷は別なんだ。私の望む奴隷は戦闘奴隷だ。出来るだけ屈強な男たちが良い」


 地盤が固まるまで、性奴隷はおあずけだ。ただれた生活になってしまうと、ダンジョンに行く気も失せてしまう。


「かしこまりました」


 商人は俺の言葉を聞くなり、すぐにわかりましたと言って、カタログをめくった。


「失礼とは思いますが、お伺いします。もしやお客様はダンジョン攻略を奴隷にさせるつもりでは?」


 カタログをめくりながら、商人は俺の狙いを言い当てる。


「ええそうですが、どうしてわかったのですか?」


「実は他にもそのようなお客様はたくさんいますので、すぐにわかりました。では、こちらのような奴隷はいかがでしょう? 竜人で、力が強く頭もよいです。お値段が少々張りますが、宝を持ち帰ったり、魔物の素材収集には最適でしょう」


 俺は竜人の写真を見る。


 うむ。いかにも屈強そうな男だ。強面で、肌は青く、細かい鱗が目立つ。金額は5000万シリルという破格の値段。それほど強い奴隷なのだろう。一人で5000万だから、2人では1億になる。これは桁が違うと俺は思った。


 奴隷を買って金儲け。下調べは入念にしたが、やはりここまでの値段だと足がすくむ。何せ俺は低所得者の代表格だったんだ。


 飛空艇を買って金銭感覚が少しぶっ壊れてきたが、やはり貧乏性はそう簡単になおらない。


「買えないわけではないが、リスクが大きすぎるな。もう少し安い奴隷はいないか」


「ダンジョン攻略は戦闘能力が一番重要になります。安く竜人以外となりますと、魔物奴隷という線も良いでしょう。こちらです」


 商人が見せたのはリザードマンだった。完全にトカゲの顔をした魔物だ。一応言語も喋るくらいに頭が良い種族なので、捕まえたリザードマンは人間の命令を聞ける。価格は500万からだった。竜人の10分の1だ。これは魅力的だな。


「一応申し上げますが、魔物奴隷にはリーダーが必要となりますので、必ずパーティーには指揮能力のある者を入れてください」


 リーダーには指揮能力者か。仕方ないな。やはり俺がダンジョンに行って指示を出すべきだろう。俺もダンジョンには憧れがあったし、行ってみたい。


「私からは、やはり竜人がおすすめです。彼らほどダンジョン攻略に長けた種族はおりません。一応カタログの写しを何枚かお渡ししますので、ご参考までに」


 商人はカタログの写しを俺にくれる。見ると、何人かの竜人が写っていた。全員5000万越えの値段だ。それだけ強いのだろうが……。


 そこで俺はカタログの端に、メスの竜人を見つけた。


 お? この子、可愛いぞ。俺の好みの顔だ。肌は青いが、おっとりした可愛い顔をしている。値段も3500万か。竜人にしてはかなりやすいな。なぜ安いんだ。俺は商人に聞いてみる。


「この娘ですか。この者は性別が女のため、戦闘力がオスと比べ低いです。低いと言っても冒険者ランクA相当ですので、とても強いことには変わりありませんが。ただ、女であるため、月経がネックです。毎日最高の力を発揮できるわけではありません」


 月経。生理か。そりゃ女の子だもんな。当たり前だな。   


 ふむ。可愛いし、3500万だ。リザードマンを指揮させるのが良いだろう。リザードマンを5人買って、この子を買えばよい。装備などもあるし、これくらいの値段で抑えるのがベストだろう。


 他にも色々と話を聞いて検討したが、結局リザードマン5人と、竜人の女の子を買うことになった。


「では一度面会しましょう。最終確認です。今リザードマンと竜人を連れてまいります。こちらでしばしお待ちを」


 個室から商人が出ていくと、数分経って戻ってきた。商人の後ろには、俺の目当ての女の子がいた。


 まぁいたにはいたが、俺の予想を超えていた。


 大きいんだ。


「こちらが竜人と選らんだリザードマン5人です」


 リザードマンはカタログで選んだ女の子2人に男の子3人。女の子は後衛で、罠の解除も出来る有能な子たちだ。男の方はバリバリの脳筋タイプであった。全員筋肉ムキムキなのである。身長は俺と同じくらいで、1メートル80センチくらいか。


 リザードマンは別に良いが、この中で異彩を放つ女の子が一人。


 モジモジと太ももをすり合わせて、商人の後ろに隠れるようにして立っている女の子。隠れるようにしてはいるのだが、あまりの巨体さに、まるで姿を隠せていない。


「この子はかなりの恥ずかしがり屋でして……。名前はカナルと言います。彼女は戦闘になれば勇猛果敢なのですが……」


 ちらちらと商人の背中から、俺のことを伺う竜人の女の子。国が運営するきちんとした奴隷商館だからか、血色はよい。健康状態はよさそうだ。


「カナル。お客様の前ですよ?」


「でも……」


 可愛い顔とは裏腹に、体はとても太ましい。筋肉がムキムキだが、出る所はむっちりと出ている。


「商人、少し近づいてみるぞ」


「ええ」


 商人は俺の前にカナルを押し出す。俺は押し出された彼女に近づく。


 ビクッと震え、その場で直立不動になる竜人の女子。名前はカナルだったか?


 俺はカナルの目の前に立ってみる。彼女のお腹あたりに、俺の顔が来る。この子の身長はゆうに2メートルを超えているようだ。

 

 俺はカナルを見上げた。


 見上げると、二つの双丘が邪魔をして、顔が見えなかった。二つの双丘は天を衝くがごとく、上を向いたりっぱなおっぱ〇。

 

 ……素晴らしい。体が大きぎるのが難点だが、それを除けば俺の好みドストライク。買いだ。


「全員でいくらになる」


「諸費用を込めまして、6300万シリルです。お振込みになられますか?」


「ああ頼む。あと、この子たちに服を何着かもらえないか? 貫頭衣一枚では連れて歩くのが恥ずかしい」


「それはご心配なく。サービスで服をお付けします」


「そうか。助かるよ」


 俺は商人とやり取りをして、奴隷契約を結ぶ。魔法印という印が胸のあたりに刻まれたが、痛くも痒くもなかった。


 奴隷たちは後日、馬車で俺のドックまで送られてくることになり、俺は飛空艇の中に家具をそろえて待つことにした。


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