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ドラゴンがつがいで欲しいという描写を変更。ただドラゴンが欲しいと変更。他、矛盾を修正予定。魔物商会にはランドドラゴン以外もいます。22話の話しではランドドラゴンしかいない風に見えますが、違います。後で修正します。
竜舎に来たが、今は俺とピルグの二人だけだ。
カナルとスライムたちだが、一足先に帰ってもらった。スライムの世話で買う物があるだろうし。
竜舎だが、この商会で一番巨大な建物だった。
それは巨大な塔のようである。まっ白く、一見すると灯台にも見える。
竜舎に入ると、一階部分は厩舎(馬小屋に近い)なのだが、2階部分から違う。
竜舎は巨大な円筒形となっていた。
円筒形の竜舎は、最上階までが吹き抜けになっていた。上を見上げると、ガラス張りの天井が見え、そこからは青空が見えた。
俺は吹き抜けになった塔を見上げ、一言呟く。
「すげぇ」
塔の中を、竜が飛んでいた。螺旋を描いて、俺の上を飛んでいたのだ。圧巻である。
「ここが我が商会最大の売り。竜の巣です」
竜の巣だと?
おいおい。ランドドラゴンだけじゃないのか? 飛竜もいるぞ。
「マサト様。帝国の市民として、失礼とは思いますが伺います」
「なんだ?」
「ワイバーンは国の管轄というのはご存知ですよね?」
国の管轄? え? ちょっとまて。確か一般人でも飛竜は買えたはずだが。
「そうなの?」
「ああやはり。聞いておいてよかったです。やはり勘違いされていましたか。ワイバーンは国の管轄。他の飛竜種とは別です」
「他の飛竜種は良いのか?」
「問題があります。まず懐きません。捕まえても、ワイバーン以外は飼えないでしょう」
「ワイバーン以外は懐かないのか? 飼うのは難しいってことか?」
「そうです。ワイバーンが国の管轄なのも、人間に懐きやすいからです」
そうだったのか。ドラゴンには憧れていたが、雲の上の存在だから、あまり知らなかった。
「鉄竜騎士団をご存知ですよね? 初代皇帝が創設した騎士団です。あのワイバーンは我が商会のものです」
へぇぇ。結構すげぇんだなこの商会。竜が売りだったか。スライムじゃないのね。
ああそういや、竜で思い出した。
この前ザイツが空を見上げていたな。
『ワイバーン。オレノアコガレ。“ドラグーン”、ユメデス』
遠い目をして、ザイツはワイバーンを見ていたな。
「一応聞くぞ。俺なら飼えるか? どうだ?」
「マサト様に限らず、誰でも難しいでしょう。一応、ワイバーンに次いで懐きやすい“ヴィーヴル”はいます」
ヴィーヴル? よく分からんが、そうか。憧れだけでは難しいんだな。
父さんが門番で一生を我慢しているのも、鉄竜騎士団に入れなかったからかもな。父さんは意外と剣が上手い。兵士班長の名は伊達じゃない。兵士になった以上、ドラゴン好きの父さんが、鉄竜騎士団を目指さないわけがない。
多分、才能がなかったんだ。
「マサト様、ランドドラゴンを見ませんか? 一階にいますので」
ピルグは、ワイバーンを見続ける俺にランドドラゴンを勧めてくる。
「ランドドラゴンは大人しく、タフです。マサト様にお勧めですよ」
おいおい。優雅に飛ぶ竜を見せておいて、地竜だと?
こいつ、狙ってやってんのか?
「飛竜を見せろ。ワイバーン以外にもいるんだろ? 人間に懐かない奴でも構わない」
ピルグは俺の言葉に苦笑した。
「そう来ると思いました。だから最初に飛竜を見せました。我が商会に、お見せしたい暴れ馬がいます。もしかしたらマサト様なら手なずけられるかも」
「そいつはどこにいる?」
俺は不敵な笑みを浮かべた。
★★★
そいつはいた。倉庫の奥にひっそりといた。
ヴィーヴルという種だ。ワイバーンよりもずっと大きい。三倍以上ある。コウモリの翼に、鋭い鉤爪。ワイバーンよりも邪悪な顔つきをしている。
ヴィーヴルは頑丈な鉄格子に入れられ、両翼と両足を鎖につながれていた。
「こいつは怪我をしていてここに来ました。怪我が治ってから買い手を探したのですが、見つかりませんでした。赤字ではありますが、こいつはもう野に放とうかと思っています」
そうか。怪我をしていて捕まったのか。殺されずに済んだのは、ヴィーヴルだからか? 冒険者なら素材を取るのに殺すからな。
俺は鉄格子に少し近づく。
するとヴィーヴルは「グルルルル」と唸り声をあげる。
おお、すげぇ唸り声だ。めちゃくちゃ怖いぞ。
ハイヒューマンになったからと言って、俺がこいつに勝てる保証はない。本当に飼えるか様子を伺おう。
「もっと近づくぞ」
「ええ。私は無理ですが」
おい。お前は魔物使いじゃないのか。ここの商会のトップとして、それはどうなんだ。
よく見ると、ピルグはガクブルで冷や汗を垂らしている。体臭がすごいことになっている。
「ピルグはここにいろ。行ってくる」
「死なないでください」
縁起でもないこと言うな! この豚!
「グルルルルルル」
お前はお前で唸るなよ。怖いだろ!
俺は鉄格子のすぐそばまで来て、手を伸ばせば触れる距離まで来た。ヴィーヴルは俺を見つめて唸ったままだ。
「お前が欲しい。一緒に来ないか? お前に乗りたがってるやつがいるんだ」
「グルルルルゥウウウオオオ!!!」
うお! すげぇ声! 突然吠えたぞ!
「グウオオオオオ!!!」
俺が気に食わないのか吠えまくるヴィーヴル。そしてそれに恐れるピルグ。
「ひぃ!」
情けない叫び声を上げるピルグ。彼は俺の遥か後ろで尻もちをついていた。
「グオオオオオ!!」
これはとんでもない咆哮である。拘束している鎖がちぎれそうだぞ。
もしかして拒絶されたかな?
「どうしてもだめか? 大空を飛びたがってる奴が、二人ほどいるんだが」
「グルルルルルル」
俺を睨んだまま唸っている。こりゃ無理かな。ワイバーンは知らんが、こいつは完全に野生だ。人間が従えられる生物じゃない。ワイバーン以外が売れない理由、分かったよ。
分かったけど、諦められない憧れってのもあるんだよ。
今、俺は夢を次々に達成している。お前もその礎になってもらうぞ。
「マサト様! やはり人間に手のおえる代物じゃありません! 怪我をする前にこちらへ!」
「人間には手におえない? 人間ねぇ」
面白れぇな。
ちょうど俺は人間じゃない。
ハイヒューマンだ!
元ごみ処理業者舐めんなよ!
「ピルグ!! 鎖を解くぞ!! 離れろ!!」
「…………は?」
俺はピルグの返事を聞かぬまま、体に力を込めた。今の俺ならこの程度の鉄格子、破壊可能だ。魔力操作も少しずつ出来るようになっている。なんとかなる!
「解放するが、暴れるなよ!!」
俺は魔力を込めた手刀で、鉄格子をたやすく破壊。ヴィーヴルの拘束を解く。
「グウオオオ!!」
ヴィーヴルは拘束から解き放たれる。羽根を広げ、自身の体を確認している。その後俺に視線を移すと、「グルルルル」と唸ってくる。
「もう一度言うぞ! 俺についてこい!」
俺も内心ガクブルだ。本来ならこんな化け物、俺が倒せるわけがない。本来なら。
「マサト様! ブレスが来ます!」
なに? 遥か後ろで物陰に隠れ、ピルグは俺に言った。
直後、ヴィーヴルの口から火炎弾が吐かれた。俺の体よりデカい火炎弾だ。直撃したらただじゃ済まない。
俺は火炎弾を避けようとするが、後ろにいるピルグに当たる。避けられん。ならば!
「うおおおおおお!!」
俺は全身に魔力をみなぎらせ、火炎弾に突進。蹴りを喰らわせた。
「オラああああああ!!!!」
蹴りを食らった火炎弾は爆散。倉庫に火の粉が飛び散った。
「ひぇぇぇえええ!!」
ピルグが慌てふためいている。
「こうなりゃやけだ! 喧嘩で勝負を決める! 行くぞ駄竜!」
「グオォ?」
よく分かっていないヴィーヴルに、俺は突進。体格差は歴然だが、俺のレベルは伊達じゃない。多分ドラゴンのレベルを超えている。
「オラ!」
俺は結構本気で殴った。ドラゴンのどてっぱらに。
するとどうだ。何百キロとあるヴィーヴルが、吹っ飛んでいくではないか。地面と平行に壁まで吹っ飛んでいくヴィーヴル。壁に激突して、血を吐いた。
「グオオオオオ!!」
やべ。やり過ぎた。まさかここまでの威力が、俺の拳にあるとは。
壁に激突したヴィーヴルはまだまだ動けるようだが、俺を見て大人しくなった。
お? いけそうか?
「もう一度言う。俺と来てくれないか? どうしても嫌だってんなら、空を飛んで故郷に帰れ。追わん」
ヴィーヴルは俺をじっと見ている。これは行けるか? 喧嘩後の和解ってやつだ。
「グゥオ」
ヴィーヴルは俺に向かって頭を下げてきた。
やったぞ! 案外いけるもんだ!
「グルルル」
「ふふ。これでお前も俺の家族だ」
「す、すごい」
ピルグは腹の贅肉をタプンタプンと揺らし、俺に驚いていた。
★★★
俺は飛空艇に帰った。
ヴィーヴルに乗って。
飛んで帰って行ったら、当然みんなが驚いた。ドラゴンが攻撃してきた! 襲撃だ! などとエルザが騒いでいた。
俺がヴィーヴルから降りて、「ただいま」というと、リザードマンのザイツが走り寄ってくる。
「王よ、マッテイマシタ」
と、訳の分からん単語を吐いた。
ザイツは俺を見て、泣いて喜んでいた。




