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場面は戻り、真っ白に燃え尽きわけもなく、宝くじ当選からあっという間に一か月が経過した。
宝くじ売り場の結果から、俺は銀行にすぐに行き、念のため当選の確認をした。どうやら当選は間違いないようだ。当然、当選していたのでお金が振り込まれることになった。すぐには振り込まれず、本物の宝くじなのかどうかなど、金が振り込まれるまでの確認作業やらなんやらで、お金をもらえるのは二週間以上先になるようだ。
俺はその間普通に仕事をして、本当に金が振り込まれるのか待ってみた。
一か月が過ぎた頃、金が振り込まれたと連絡が来て、見に行ったら振り込まれていた。
本当に、10億シリルが振り込まれていた。
やべー。
どうしようと思った。
本当にやっちまった。
俺はひとしきり唸っていると、前々から思っていたことをしようと思った。
俺のしたいことは、大きく分けて三つある。細かいことを除けば、大きな三つの夢がある。
まず一つ。仕事辞める。
これに尽きる。
仕事からの解放。死ぬまで休日。なんという最高の響きだろう。
俺は金が振り込まれた翌日、辞表を出して仕事を辞めた。
退職金は100万シリルという金だった。10年以上頑張って働いたのに、退職金は100万だけ。当選金の10億と比べると、悲しくなる。
夢二つ目。飛空艇を買う。
庶民の夢、飛空艇。いつかは飛空艇。みんな夢見る飛空艇である。
飛空艇は公共の交通機関として大型のものがあるが、個人で所有する金持ちは結構いる。飛空艇のディーラーも当然あり、VIPしか入れない。
飛空艇は、ドラゴンをペットにするくらい、あこがれの存在なのだ。
ちなみにだが、俺には飛空艇を飛ばす免許がない。学校に行かなければならない。まぁ、どうせ俺は滅多に運転しないだろうけどね。奴隷に運転させるから!
そう。俺の奴隷である。
夢の三つ目だ。
仕事は辞めた。焦ることはない。奴隷は最後だ。次は飛空艇を買おう。
★★★
飛空艇ディーラーに行くと、良い飛空艇がすぐに見つかった。
中古で型は古いが、きちんと整備された飛空艇が在庫としてあった。名前は「シルヴァリオン」。スピードは個人で持てる飛空艇の中でかなり早いという。中型だが、定員100名を超える大型に近い船だ。うーむ。最高にかっこいい。
金額は、2億シリルだった。飛空艇を置いておくドックも合わせて購入したので、3億を超えてしまった。それでも俺の資産が揺るがないのがすごいところだ。まだまだ預金があるからだ。
もちろんこのまま使い続ければ金はなくなる。飛空艇の維持費も馬鹿にならない。毎年の税金だって高いんだ。
だから、奴隷なのだ。
順を追って説明しよう。
奴隷は愛でるだけのものではない。金を生む金の卵でもあるのだ。
この世界にはダンジョンというものがある。どんな者でも一攫千金を得られる、奇跡のような場所だ。その一攫千金を得る為に懸けるのは、自分の命。
命を懸けて宝を探すのだ。
金持ちはそれを奴隷にやらせる。
不労所得を得る為に。
俺もそれにあやかろうと思う。なに、最初は慣れるまで奴隷と一緒にダンジョンに入ってもいい。攻略された低階層なら、死ぬ危険もないだろう。
昔夢見た奴隷で軍隊というのもやりたい。俺は金が金を生むラッキースパイラルを巻き起こすつもりだ。
★★★
高額当選から飛空艇を買った。飛空艇を停泊させるドックまで買った。
つい先日まで貧乏人だったのに、今は大金持ちの仲間入りだ。
ここまで来たら一つのテーマが生まれる。
働いたら負け。
社会の歯車となるのが、たまらなく嫌になっている。趣味の延長線上で働くことは良い。どこかの企業に属して毎日働くのは、我慢がならん。
趣味で働くのはいいが、企業は嫌。めちゃくちゃな理論だが、今はそれが俺のテーマなのだ。
かといって、いきなりダンジョンもどうなの? そう言われれば首をかしげるしかない。
分かってはいるが、一生に一度のチャンスなのだ。
俺は出来るだけ失敗しないように、情報収集をした。ダンジョンにおける宝箱の出現率とか、魔物の強さとか。
奴隷を買うにはどこが良いかとか。
俺は調べ、それから行動に移した。ここで失敗したら、二度とチャンスはないような気がするからだ。
俺はこのチャンス。逃さない。必ずやる。心に誓った。
さ、今は情報収集だ!