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 彼の名前は“ぶー”。


 灰色のスライムで、手の平に収まるほどの小型の魔物。地の底まで続く、地底王ガイアが治めるダンジョンから生まれた。


 古の魔法、失われた秘法をその身に持った、究極のスライム。


 その名もグラビトンスライム。


 彼の名は、“ぶー”。カナルをマスターに持ち、グランドマスターにマサトを持つ。


 人間側に立った、魔王クラスの魔物はなかなかいない。彼はその中でも最強に位置し、生み出す一撃は街を、国を、大陸を。地の底まで沈める事が出来る。


 そんなスライム界最強クラスの“ぶー”は、今日もカナルの爆乳に挟まれてうたた寝していた。


「ぶぅぶぅ。ぶぅぅ」


 すやすやとおっぱいの間で眠るぶー。


 ぶーの定位置となったその場所は、まさに最高の安眠位置。ダンジョンにいたころとは違い、水や餌は決まった時間にもらえるし、敵からはカナルが守ってくれる。カナルですら倒せない敵は、最強の主であるマサトが守ってくれる。最高の生活空間を手に入れたぶーは、野生を早くも失った。


 ぶーはみんなに愛されるスライムである。


 暴力的なエルザでさえ、ぶーを抱いて撫でまわすほどだ。エリーシャに至っては、手作りのクッキーを上げるまでとなる。


 話はそれるが、そのエリーシャ特製クッキー。マサトが食べたところ、口内に電気が走り、目を開いたまま気絶。こん睡状態になった。一日中うなされ、マサトの口からエクトプラズムが出たと言う恐るべきクッキーである。


 ぶーの消化器官は特殊なため、毒物を一切を受け付けない。ぶーは大丈夫だったが、「おいしくないからもう食べない」と、二度とクッキーを食べようとしなかった。


 ぶーはカナルの爆乳に挟まっていないときは、自由に飛空艇の中を散策できる。ぶーの楽しみの一つである。


 この前リザードマン達が、いちゃいちゃしていたのを発見した。奴隷同士で恋愛に発展したようだ。


 ぶーは興味本位からか、隠れてそのいちゃいちゃを見ていた。


 リザードマンの女の子はアイちゃん。リザードマンの男の子はゴン。結構激しく乳繰り合っている。ぶーはあれが気持ちいいのか? カナルはどうなんだろうと思案する。


 誰もみていないと思い、彼らの行為は次々にエスカレート。ぶーは「ぶひゅ、ぶひゅ」と少し興奮しながら、彼らの行為を覗き見していた。


 ところ変わって、マサトの部屋。ぶーは鍵穴からマサトの部屋に侵入すると、クローゼットの中に隠れた。侵入した時は、マサトが留守であった。ぶーはマサトが帰ってくるまで、隠れて待つことにした。


 ぶーは好奇心旺盛である。グランドマスターは何が好きなのか。何が喜ぶのか。知りたかった。


 ほどなくして、ドアがノックされた。


「マサト様。いますか。カナルです」


 おや? どうやらぶーの主人が来たようだ。カナルである。


 何度かドアをノックするが、マサトはいない。カナルが諦めるかと思ったが、違った。


 なんとガチャガチャと鍵穴をいじり始め、そして。


「開きましたね。ふふふふ。こんな鍵、開けるのなんてお手の物です」


 悪い顔をして、カナルもマサトに部屋に侵入してきた。


 マサトの部屋は艦長室なだけあり、かなり豪華である。ベッドも大きいし、机や椅子も一つ一つが高額な商品ばかり。やはり高級志向の飛空艇の為、豪華なようだった。


 カナルはマサトがいないことを再度確認した。ドアをきっちり閉め、エルザやほかのみんなが近くにいないことも確認。その上で、部屋を見渡した。カナルはきょろきょろと目を動かし、目的の物を見つけた。


 カナルはマサトが脱ぎ捨てた服を見つけたのだ。服は、マサトが一日着ていたもの。マサトの私服であった。服の中には、当然下着もあった。マサトが一日履いた、パンツも。


「マスターの、パンツ!! 汚れたパンツ!!」


 カナルはマサトが着ていたパンツ、(ブリーフ型)に飛びついた。


 手に持ち、鼻に近づけ、おなかいっぱいにマサトの匂いを吸い込んだ。


「すぅううううはぁあああああ。すうううはああああああああ」


 カナルはマサトの激臭パンツをクンカクンカと嗅いで、喜んでいた。


 とても幸福そうなカナルの顔。今誰かに見られたら、確実に破滅は免れない。


 ぶーは、カナルの異常痴態を間近に見ていた。ぶーは思った。今度マサトのパンツをプレゼントしようと。


 カナルはその後マサトのベッドに行った。やってはいけないと分かっていたが、カナルは抑えが利かない。自慰行為をしてしまったのだ。もちろん、カナルの体液をベッドに付着させるわけにはいかない。タオルを敷いて行為に至った。


「ごめんなさいマスター。でも、好きなんですぅうううう!!」


 絶頂してしまった。


 ぶーはそれをじっと見ていた。


 その後カナルはすっきりした顔で部屋を出て行った。


 ぶーは、カナルが変態だと言うことを改めて認識したが、スライムにとってそんなことはどうでもいい。優しいカナルがいてくれれば、ぶーにとっては変態など二の次であった。 


 ぶーは、毎日が新鮮だった。ダンジョンにいたころとは雲泥の差である。


 彼は地上に持ってこられた時から大半の力を使用不能になった。魔素密度が低い地上では、ぶーの持つ魔法が使えない。


 空気中に漂う魔素。その魔素に直接働きかけ、大魔法を繰り出せるグラビトンスライム。


 魔素の低い地上では、グラビトンスライムの本来の力が出せない。もともと体内に魔力を多く持たないスライム種は、体外から一時的に魔力を補充して、魔法を放つ。


 体が巨大なヒュージスライムや、天使の使役獣、ホーリーメタルスライムなどは別だ。小型のスライムは多くの魔力を持たない。グラビトンスライムもそれにあたる。


 現在のぶーは、本来の力を失いただのペットと化している。頭はとても良いスライムなので、自分が可愛がられていると知っている。カナルの頭に乗ったり、触手でペタペタと体を撫でさすると、カナルは喜んでくれる。ぶーは主人が喜ぶことを率先してしていた。


 そんなぶーだが、ある日突然転機が訪れる。


 飛空艇が急激に高い魔力密度を持ったのだ。ドックの外にすら魔素が充満するほどに。


 ぶーは気づいた。“牧場部屋の主”がやった。


 ダンゴ虫型のモンスター。“オリハルコンミリピード”だ。かの魔物も災害をもたらせるほどの種。遂にコアの発動魔力を満たしたか。


 巨大な魔素と魔力に包まれた飛空艇。


 ぶーは知っている。この高揚感を。


 ぶーは経験している。この魔力密度を。


 これは純度の高い、ダンジョンコアの魔力だ。


 何度かカナルに連れて行かれて、牧場部屋に入ったことはある。そこにはダンゴ虫の魔物、 オリハルコンミリビードがなぜかいた。


 彼? 彼女? その魔物はフルーツや穀物と一緒に、魔石をいっぱい食べていた。ぶーよりもいっぱい食べていた。


 マサトからも何度か魔力補給してもらったようで、体内に保管されたダンジョンコアが発動権限を満たしたようだ。


 コアは、見事に発動し、飛空艇は、「ダンジョン」と化した。


 ダンジョンとは、洞窟や迷宮だけを差さない。ダンジョンとは、一種の絶対領域だ。


 領域内は自由に作り変えられ、魔力があれば生命すら誕生させられる。


 マサトの飛空艇「シルヴァリオン」は、ダンジョンと化した。


 その時に覚醒するグラビトンスライム。

 

 ぶーは、古代の重力魔法を取り戻した。


「ぶぅううううううううううううう!!!!」


 重力魔法の発動により、飛空艇は浮いた。何千トンもある飛空艇は、確かに浮いた。


 エンジンをかけていないのに、飛空艇はふわりと浮いたのだ。当然中にいるマサトやエルザ、エリーシャ、奴隷全員が無重力状態になった。


 ぶーの間近にいたカナルは、重力魔法とグラビトンスライムの加護を受ける。カナルは莫大な魔力向上により、竜闘気の発動に成功させる。


 あまりに高い力の奔流。竜闘気を超えた闘気は変質し、カナルの最適な力に変わった。


 重力闘気。カナルの発動した竜闘気の神髄だった。


 カナルはその時、竜人のトップランカーに入った。戦闘能力で言えば、まさにワンマンアーミー。軍隊レベルの力が個人で操れるようになった。


 のちにカナルとぶーはこう呼ばれる。


 重力を操りしスライムと共に歩む、天竜騎士と。


 余談だがその天竜騎士カナル。晩年は主人が好き過ぎすぎて、主人の激臭パンツを常に持ち歩いていた。その事実を知るのは、相棒のぶーだけである。




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