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両親についていろいろなパターンを用意ししましたが、良い物語を思いつかず、淡々としたストーリーになってしまいました。しかも完璧なご都合主義です。流し読みでも、読んで頂けたら嬉しいです。

 飛空艇の搬入口に来た両親。


 どうやってここを探り当てたか知らないが、実際に両親が今来ている。マサトはどこだと騒いでいる。エルザが二人を抑えているが、無駄だ。両親だと言われたら、ドックの中に入れるしかない。


 俺は今をどう切り抜けるか、脳内でギュンギュン考えた。


 脳の神経が焼き切れるくらい、高速で思考した。両親を納得させる説明を考えた。


 目を充血させ、鼻水を垂らして頑張った。


 まったく皺のない、俺の脳みそから出されたベストアンサーが、決まった。


“ジャンピング土下座”


 これしかねぇ。


 ダンジョン攻略や冒険者稼業は両親が嫌う職業だ。俺が憧れる職業なのに、両親は嫌っている。


 考えれば当たり前なのはわかる。金の為に、命を紙屑のように捨てる冒険者たち。もし自分の息子がそんな危険な仕事に就くと知れば、反対するに決まっている。俺だってそうする。


 両親に黙っていたのは、これがあるからだ。安定した職を辞め、アパートも引き払い、巨大な飛空艇を買って奴隷も買った。両親に言えるわけがない。反対されるに決まってる。


 ましてや奴隷の命を使ってダンジョン攻略だなんて、両親が許すはずがない。世間一般からすれば、クズに分類される方だ。権力と名声を持った者しかやってはいけないことである。もしかしたら俺がそんなことをしていると両親が知ったら、俺を絶縁するかもしれない。


 こうなったらプライドを捨てるしかねぇ。両親が近づいてくる。行くぞ! 


「お父さん、お母さん、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!」


 俺は飛空艇を磨いていたモップを投げ捨て、はしご車から飛び降りてジャンピング土下座を決めた。


 俺が地面に着地した時には土下座をキメテいた。両親の目の前に着地したのである。


 これは完璧にキマッタ。


★★★★


 恐怖!! 家族会議勃発!!


 両親と俺は飛空艇の大食堂に来ている。テーブルを挟んで、両親と一緒に座っている。


 俺の父親は国の門番。母は織り機のパートさん。父親は少し厳格な方だ。母はかなり甘い。どうにかして母から懐柔しないといけない状況である。


 まずは奴隷たちを飛空艇の食堂に全員集めた。その後両親に紹介した。俺が買った奴隷だと。カナルはきちんと挨拶できたが、エルザやエリーシャは問題だった。


「おう、あたしがエルザだ! マサトの一番奴隷だ!!」


「私はエリーシャ。奴隷から解放された暁には、人間を奴隷にしてやりますわ!」


 両親は何も言わなかったが、俺は頭を抱えたくなった。


 余談だが、エルザの一番奴隷発言に、カナルは黒い魔力を噴出させていた。俺は見てみないふりをした。


 両親には、奴隷購入資金の出所も説明した。驚いてはいたが、何も言わなかった。むしろなぜ今まで黙っていたかのほうが許せなかったらしい。


 報告連絡相談。ホウレンソウ。家族でも怠ったらいけないようだ。


 両親は俺の“ジャンピング土下座”の件もあり、今はそれほど怒っていない。一番初めに土下座で謝ったのが功を奏したようだ。どうやら許してくれそうだが……。


「マサト、もうお前は大人だ。お前の人生だから俺はもう口出ししない。だがこれだけは言わせてくれ」


「な、なに?」


 俺は恐る恐る聞いてみる。 


「俺より先に、いや、親より先には死なんでくれ。枕元には立たれたくないぞ」


 俺の心にずしんと響いた。父さん、すみません。


 次に母さんからありがたい言葉が。


「マサト、あなたが元気ならそれでいいわ。それに可愛い女の子たちもいっぱいいるみたいだし、楽しそうでよかったわ。まったく、連絡が取れなくなってから本当に心配したんだから」


 うぉぉぉ。なんて優しい言葉を。


 人間のクズにすみません。楽して生きることしか考えずにすみません。


 うおおおおおん。


 俺は泣いてしまった。大人になってから初めて人前で泣いてしまった。親はやっぱり偉大だね。


「あらあら。仕方のない子ねぇ


 母さんは俺の頭を撫でて、子供のようにあやしてくれた。父さんは腕を組んで微笑んでいた。


「でも土下座された時、あなたが誰だか最初分からなかったわ。だってマサトがとってもイケメンになっているんだもの。本当に私の息子か疑ったわよ」


 あ。それはレベル詐欺の所為です。



★★★


  

「父さん、母さん。俺、今すごい楽しいんだ。確かにダンジョンは危険だ。分かってる。奴隷を使うのも良くないことだとは思うけど、みんなと一緒にいるのが楽しいんだ。こんなに楽しいのは初めてなんだ!!」


 俺はあれから両親を説得した。口出ししないとは父さんは言うが、やっぱりしこりを残すのは嫌だ。納得させる説明は全くできなかったけど、情熱だけは伝えられた。


 結果、母さんが先に折れ、父さんが折れた。俺のこれからの行動は、すべて認めてくれる方向になった。それに伴い、定年間近の父さんは早期退職してもらうことになった。母さんはパートを辞めてもらう。


 俺の飛空艇に住んでもらうのだ。両親が近くにいれば安心だ。奴隷たちの面倒も見てもらえる。父さんは最後まで仕事をする気でいたが、俺の言葉にコロッとやられた。


「ドラゴンを飼うんだけど、父さんに世話してもらいたいなぁ。ダメかなぁ」


 父さんはドラゴン好きだ。当然竜人も好きだ。カナルやエルザは孫みたいに可愛がってくれるだろう。ならばドラゴンをプレゼントする代わりに、飛空艇に来て奴隷たちの面倒を見てもらいたい。父さんは俺のドラゴンを買うと言う言葉にすんなり了承し、母さんともども飛空艇に引っ越してくることになった。


 あぁよかったよかった。一時はどうなることかと思った。なんとか切り抜けられた。 


 恐怖の家族会議は無事終了した。




★★★


 


 家族会議終了後、マサトの母「キリエ」が帰ろうとしていた時。ちょうど一人になっていた時。


「お母様!! 待ってください!!」

 

 人見知りのカナルは勇気を出してマサトの母、キリエに話しかけた。


「あら? あなたはマサトの。えっと名前はなんだったかしら?」


「カナルです。竜人のカナルです!!」


 カナルはビクビクしていたが、思い切ってあいさつした。大きな声で。


「うん。カナルちゃんね。いっぱいいたから覚えられなかったの。ごめんねぇ」


「いえ! そんなことはありません! あの、それでですね、聞きたいことがあるんですがよろしいですか?」


 カナルはキリエに聞きたいことがあった。主人であるマサトのことである。何を聞きたいかというと。


「マサト様には女性の影が見えないのですが、今はこ、こ、恋人はいるんでしょうか? マサト様の友人関係は全く知らないのです。いるのでしょうか?」


「女性の影? 恋人? あの子に? ああ無理無理。いないわよ。友達も男ばっかりだし。最近は知らないけど、どうなんだろ? カナルちゃんが恋人じゃないの? それとももう一人の、竜人の子? それともエルフの?」


「そんな恐れ多い!! マサト様は私たちには誰も手を付けないので、誰も恋人ではありません」


「へぇそうなの。やっぱりマサトは純情な子ねぇ。そうだ。マサトの好きな料理とか、好きなことを教えてあげようか?」


 カナルは、キリエの言葉に身を乗り出した。


「ほ、本当ですか!!」


「ええ。あの子は巨乳が好きなの。マサトが子供のころ、隣の奥さんにお乳をもらっていたくらいだし」


 お乳を!?


「昔ね、私たちの家の隣にミノタウロスの美人妻が住んでいたのよ。どうやって知り合ったか知らないけど、マサトはその奥さんからお乳をもらっていたの。マサトは黙っていたけど、奥さんから言われてね。マサトがおっぱいを飲みたがるから上げたって。あの子は私が知らないと思っているみたいだけど、実は知っているの。実の息子だけど、ほんと変態よね。子供からそんなだったのよ、あの子」


「ミノタウロスですか……。今はミーナちゃんとかがいますね……」


「大丈夫よ、カナルちゃんのも、すごくおっぱい大きいもの。あの子人間よりも竜とか牛とかが好きだから。うちの夫もそうだし」


 マスターのお父さんも? 加護とかじゃなくて、遺伝的に他種族が好きなのか? カナルはマスターへの考えを少々修正した。


「今日は帰るけど、ここに引っ越すことになりそうだから、よろしくねカナルちゃん。引っ越して来たらマサトのこといっぱい教えてあげるわ」


 よし!! 言質は取った!! カナルはマサトの母を味方にした!! てってれー。


「はいお願いします!!」 


 カナルは力の限りお願いした。マサト様のご両親は本当に優しそうな方たちで良かった。

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