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エルザやエリーシャ、ミノタウロスたちの部屋割りが決まった。
エルザとエリーシャは個室。ミノタウロスの男子と女子は、潜水艦にあるような寝台を一人ずつ用意した。寝台にはカーテンがあり、プライベートは守られる。ここはリザードマン達と同じつくりだ。
個室だが、とても狭い。机とベッド、クローゼットがあるくらいで、人が二人入れば身動きが取れないほどだ。この個室はまだまだ数がある。いずれリーダーや役職をつけた、リザードマンやミノタウロスたちが入る予定だ。
俺の部屋だが、艦長室である。当然である。かなり広く、キングサイズのベッドが余裕で置いてある部屋だ。未だ女の子を連れ込んで、チョメチョメしたことはない。実に残念な限りだ。
飛空艇の管理や、細かいルール、仕事の割り振りをみんなで決めた。リーダーにはカナル。副リーダーには仕方なくエルザである。飛空艇の管理リーダーにはエリーシャを置いた。
リザードマン達は飛空艇の機械的なメンテナンスを担当することになった。それにはエリーシャが面倒を見る。他、飛空艇を停泊させるドックまでの管理が、彼らの仕事となる予定だ。
ミノタウロス達は牧場部屋や、雑用、調理場を任せた。彼らは俺とカナルで面倒を見る。カナルは最初こそ人見知りでシャイだが、実は何でもそつなくこなす女の子だった。優秀である。指揮能力も高い。実にリーダー向きだった。
エルザは完全独立機構。というよりも、戦闘以外何もやらせられない。チームプレイがとことん出来ない奴だった。家事が出来ないし、家畜の世話もおおざっぱ。機械のメンテなど不可能。唯一の適性が車両の運転技術だ。乗馬やドラゴンの騎乗が出来るようで、彼女は運転技術が高いようだ。
いずれエルザには飛空艇の操舵をやらせるつもりだ。そうなると、飛空艇の操縦ライセンスが必要になる。仕方ないので学校に通わせることになる。短気なエルザだから、学校で問題を起こさないか心配だ。
仕事や役割を決めるまでに少々時間がかかった。彼らの適性を見ながらの作業の割り振りだったからだ。ダンジョン攻略は一時中断となった。
エルザは戦闘が出来ないのがストレスなのか、ドックの中で筋トレを常にしている。あとは俺が常に襲われる。カナルも訓練と称して喧嘩をさせられるようだ。エルザは俺に対して特に遠慮がなく、突然背後から蹴られたり、竜闘気の実験台にされる。
俺は戦闘のド素人だが、レベルが高いのでエルザを軽くあしらえた。不意打ちで殴られても対処可能だ。圧倒的な反射能力と運動性能で、エルザを一方的にボコボコに出来るのだ。俺も俺でエルザの武術を学べるので、いつでも襲い掛かってこいと言った。訓練になるからね。エルザはその言葉が嬉しかったのか、俺から一本取ろうと必死だ。
「あたしがマサトに一回でも勝ったら、一個だけ何でも言うことを聞いてもらうからな!」
「いいよ」
そんな約束を交わしたが、未だに俺は一回も負けていない。ここ最近ずっと襲われているが、一発ももらっていない。飯を作っている時や、風呂に入っている時でさえ襲ってくるが、負けていない。エルザに何度も俺の痴態を見られているが、エルザはそれでも殴りかかってくる猛者だ。寝込みだけは襲うなと言ったので、それ以外はトイレ中でも襲ってきやがるから大変だがね。
余談だが、小便をしていた時にエルザが乱入してきた事がある。もちろん俺は一物を出しっぱなしで対応する羽目になった。当然小便の途中だから、止めること出来ない。殴りかかってきたエルザの拳を止めた時、俺の小便が勢い余ってエルザの顔にかかってしまった。割とびちゃびちゃと。
「うぶ! あぶぶ!! な! なにしやがる! ションベンを止めろ! あぶぶぶb」
「止めろって言われても止められん。急に襲い掛かってくるお前が悪い。食らえおしっこビーム」
調子に乗ってエルザに向かって放尿。エルザに対して俺の恥はいつの間にか消え去っていた。なぜかエルザにはオープンにチンコを放り出せる。
びしゃびしゃと顔面シャワーを浴びるエルザ。
「うわぁあああああああ」
エルザは俺の小便まみれになり、半泣きでシャワーを浴びていた。
「ううう、穢された。このあたしが。このあたしが……」
ちょっと調子に乗り過ぎた。いくらボーイッシュで男の子っぽいと言っても、エルザは女の子だ。これは悪いことしたなと思った時、背後から悪寒を感じた。振り向くと、カナルが立っていた。
「ボクもマスターのトイレ中に襲ってもいいですか?」
キラキラした目で俺を見ている。特に股間を。
「…………やっぱトイレ中は止めて」
カナルは俺の言葉に目を見開いてびっくりしていた。なぜびっくりする。
「そんな!! マスターのおしっこ!! そんな!! ひどい! エルザばかりずるい!!」
意味が分からないよ? 俺のおしっこ? カナルさん?
◆◆◆
10日ほど経過し、俺は飛空艇のライセンスをようやく取得できた。時間を見ては学校に行っていたので、ようやく取れた。
ライセンスと言っても、中型一種という物で、金さえあれば一般人でも余裕で取れる物だ。別に誇れるものではないがね。
ギルドからも連絡があった。リッチのマントがオークションで落札できたとのことだ。どこかの研究機関が落札したらしい。
値段は6億に到達したと報告があった。ギルドに出頭するように手紙が来たので、近々ギルドに行かなければならない。
ギルドマスターのクソじじいに会うのは気が引けるが、金のためだ。行くしかない。
もうダンジョンに潜らなくても良いくらい金が集まったが、エルザのこともあるし、俺の力もどれくらいか試したい。数日後にダンジョンに行くと奴隷たちに伝えた。
いろいろとひと段落がつき、問題が一個ずつ解決されていった。明日はギルドに行こうと思っていたら、忘れていたように、さらなる問題が降りかかってきた。
俺ははしご車を使って飛空艇の外壁を磨いていた。リザードマン達も一緒だ。中型の飛空艇はとてつもなく大きい。俺はモップを使ってせっせと飛空艇を磨いていた。
そこへカナルが声をかけてきた。
「マスター、お客様が来ています」
「客? 客って?」
「マスターの知り合いみたいですが」
倉庫街の、こんなデカいドックに? 住所を移したことはまだ友達には言っていないが。はて誰が来た
? まさか俺に恨みをもった奴らか?
「人間の女性と男性です」
「女性と男性?」
「はい。マサトはここにいるのかと声を荒げています」
え?
「おいこら! ここはあたしらの家だぞ! 勝手に入ってくるな!!」
なんだかエルザが遠くで騒いでいる。ドックの搬入口、シャッター付近だ。
「マサト!! どこにいる! ここにいるのか!!」
「マサト、お母さんとお父さんよ! いるの!?」
ゲッ!! 父さんと母さん!? ヤベェ!!