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 気づくと知っている天井が見えた。


 俺の部屋だ。


 首だけ動かすと、すぅすぅと寝息をたてる女の子が見えた。しかもいい匂いが鼻につく。女の子の甘い香りと、石鹸の匂いだ。


 カナルであった。

 

 おお。ついに俺はカナルと一線を越えた!! 

 

 なわけない。


 多分添い寝してくれただけだ。


 俺は現状確認の為、起きてみる。ベッドからそっと出ると、俺の体はおかしなことになっていた。


 度重なるレベルアップによって細マッチョになっていたが、今はそんなレベルじゃない。なぜか身長が伸びて、顔も若返ったようだ。少年のように幼い顔立ちをしている。仕事に疲れた25歳の顔じゃない。


 完全に20歳、いや18歳くらいの幼い顔立ちだ。幼くも、イケメンの顔になっている。本当に俺なのか? しかもとても良い体格に筋肉。体がとても軽い。


 なんだこりゃ? 本当に俺か?


 よくわからないな。そうだ。レベル測定してみよう。


 高い金で買った、レベル測定水晶があるんだった! 


 俺は部屋の隅に置いてある水晶の前に行くと、手を置いた。丸い青水晶で、ひんやりしている。


「よっと。どうかな?」


 水晶を覗き込む。そこへふわっと現れる数字。


 レベルが出た。


 レベル627。


 ん?


 俺は目を疑った。水晶が壊れたのか? 確かこの水晶は推定800まで測定可能な超高級品だったはずだが。


 俺はもう一度、そっと水晶に触れた。


 レベルが出た。


 レベル627。


 でえええええええええええ!!!!


 レベルがおかしなことになってるぅううううう!!!


 俺は頭を抱えてわちゃわちゃと踊り出す。


 どうしようコレ、はぁーどうしよ。


 俺はハッとなる。ションベンしたい。


 トイレに行こう。


 俺はトイレに行って用を足した。


 ちょっと落ち着いた。


 うん。散歩に行こう。冷静になるんだ。


 俺はカナルを起こさないように、着替えてからそっと部屋を出た。


 飛空艇の中は静まり返っている。どうやら深夜のようだ。みんな寝ているんだな。


 俺は飛空艇のハッチを開け、外に出る。飛空艇ドックの中もシーンとしていた。どこかからか、フクロウの鳴き声が聞こえてくる。

 

「満月か? 良い夜だな」


 俺は少しばかり金を持って、町に向かった。深夜でも営業している雑貨屋はあるからな。


 俺は街の郊外にあるドックから、繁華街に向かう。


 俺は水銀灯が照らす街道をトボトボと歩きながら、体がどうなっているか確認してみた。


 まずはジャンプ。


 びょーん!


 軽く20メートル以上跳んだ。


 まじかよ! 俺は今、空を飛んだ!!


 しかしすぐに落下が始まる。ぐんぐん地面が近づいてくる。

 

 やべーーーーー!!!! 着地どうしよう!!!! 足が折れる!! 着地!! ちゃくちぃいいいい!


 ドン!!!


 地鳴りのような音を立てて俺は着地した。足には何の負担もない。強いていうなら皮靴が一発で壊れた。


「…………」


 俺は無言になる。


 これは人の域じゃない。


 俺はおもむろに、足元の石ころを拾い。街道沿いに生える木に向かって投げてみた。


 石ころは弾丸よりも早く飛んでいき、チュインという音を立てて、木を粉砕した。そのまま後ろの木も貫通し、3本目の木も粉砕すると言うところで、小石が砕け散った。


「ぐう」


 ぐうの音が出た。


「魔術が使えなくても最強になっちまったな」


 貴族や才能があるものは魔法が使える。一般市民でも使える人はいる。ただ俺は使えなかった。だから普通の企業に就職した。冒険者は最初から諦めていたのだ。


 魔力があって魔法が使えない人は、総じて体内で魔力を消費させる。いわゆる身体強化である。大体の一般人が勝手にこれを覚えて、使用している。この世界で生きれる程度に。俺もそうだった。


 なのに俺は変わった。戦闘奴隷を買ってから変わった。いや宝くじが当たってからか。


 一般人だった俺は、彼ら奴隷のおかげでレベルアップ。雑魚の息の根を止めるとき、最後にブスッとさせてもらっていた。それで強制レベルアップである。


 俺は強くなっていた。いきがっていたわけじゃない。今もそうだ。


 俺の心はまだ変わっていない。なのに体が変わり過ぎた。


 どうするべきかな。あと少し金を稼いで隠居するべきか。このまま金を稼ぎ続けるか。奴隷の世話だって、金さえ貯めればどうとでもなるんだ。無理して稼ぎ続ける必要はない。


 俺がしたかったことは、仕事をせずに飛空艇で世界を旅したい。隠居したかったのだ。


「でも俺は」


 こんなに充実していることは今までにない。楽しいんだ。生きるのが。


 もう少し、頑張ってみよう。そうだ。もう少しだけ。



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