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『くそう、このクソ虫が!! ダンジョンコアのクローンを喰うとは!! せっかく主より賜ったダンジョンコアの分体を喰うとは!! 最悪だ!! 主になんと言えばよいか! くそ! 死ね! 吐き出せ!!』
リッチは怒り狂っていた。ダンジョンコアの分体、「コアクローン」を食べられて。
コアクローンは、コアのレプリカだ。本物ではないが、それに近い力を持ったコアだ。いろいろと制限はあるが、ダンジョンコアのクローンとなると、神の領域に達するアーティファクトだ。
それを「オリハルコンミリピード」が食べてしまったのだ。
このオリハルコンミリピード。リッチがダンジョンコアで生み出した魔物だった。魔力が切れた時の盾にしようと思って、高いダンジョンポイントを使って生み出したのだ。
オリハルコンミリピードは、あらゆる物理を無効化する。打撃、斬撃、衝撃と、物理属性は完全無効。魔法に関しても空間切断系など、一部を除いて無効化する。完全に盾役の魔物だ。
盾役ではあるが、暴食というスキルを持っており、食べた物を自分の力にすることもできる。オリハルコンミリピードも、準災害級指定の魔物。案外強いのである。
いかにリッチと言えど、古代魔法の深淵、空間魔法と重力魔法、時魔法などは使えなかった。これらはリッチを超えたモンスターたちが所有するユニーク魔法だ。まだリッチのレベルでも使えないものだった。
『はぁはぁ。もう魔力がない。どうやればこいつを殺せる!! 腹の中からダンジョンコアを早く取り出さねばならん!! くそう!!』
オリハルコンミリピードは雑食である。何でも食べる。そしてなんでも自分の力に変換できるのだ。リッチはそのことを忘れて、彼を放し飼いにしてしまった。それがそもそもの大間違いであった。
『キューキュー』
オリハルコンミリピードは好奇心旺盛である。臆病で警戒心が強いが、好奇心旺盛なのである。彼の前に強い魔力反応があれば、食べてしまうのは仕方がなかったのだ。
『くそおおおおおお!! この虫がぁぁぁああ!! 吐き出せぇえええ!!!』
リッチが魔力切れを起こし、魔法を打てなくなった頃。マサトたちは襲い掛かった。
『へ?』
リッチはあまりの怒りと焦りで、マサトたちが近くにいることに気付かなかった。
魔力切れを起こしても、マサトたちの存在に気づかなかったのである。
マサトは竜の息吹を発動した。リッチが大嫌いな炎属性である。
普段ならば魔力障壁を一瞬で展開できた。毛ほどの傷もつかなかっただろう。
『な、え、ちょっと。うそ?』
リッチは防御することは一切できなかった。もともと防御能力は低いリッチだ。
エルダーリッチなどの上位個体ならばダメージを防いだかもしれない。良質の鎧や、炎無効の装備をしていれば大丈夫だったかもしれない。
今回は違った。
深層から逃げ出したオリハルコンミリピードを、裸足で捕まえに走ったリッチ。それはパジャマ姿で外を出歩くようなもの。
物理無効のボロマントのみを装備していたリッチは、炎属性のブレスを防げなかった。
『う、うそだあああああ!! この私がぁぁぁぁあぁあああああ!!!』
リッチは死亡した。あっさりと死んだ。魔力を生命エネルギーに変換するスキルも、彼は使えなかった。魔力が尽きていたからだ。起死回生のスキルもリッチは使えず、あっさりと死んだ。
★★★
「え? なんか死んだ? え?」
リッチが死んだぞ。簡単に死んだんだけど。
「な、ななななな!! そんな馬鹿な!!! リッチが死んだ!!!」
カナルは驚いている。
リザードマン達も驚いていた。彼らもリッチの強さ位は知っていたのだ。
それを俺があっさり倒した。竜の息吹一発で。
「リッチって弱いのか?」
「桁外れに強いですよ!! 確かに生命エネルギーと防御能力は低いですが、信じられないほどの魔力と、魔法攻撃があります! こんな簡単に死ぬはずが……」
俺がなんだか唸っていると、急に体がモリモリと盛り上がった。
「うが!! なんだ? 痛い!!」
いきなり全身に引きつる。肉がちぎれるような痛みが走る。
「この痛みは!! これはもしかしてレベルアップか!? しかしなんだこのレベルアップは!! 痛い!! うが!!」
「マ、マスター!?」
俺の体が作り変えられていくようだ。ものすごい速度で筋肉が収縮を繰り返す。全身が痙攣しているようだ。筋肉がそこかしこで攣っているいる。さらには体中から魔力があふれ、髪がどんどん伸びた。
「ぐああああああああ!!!」
俺はあまりの痛みで地面をのたうちまわる。胸をかきむしり、暴れまくった。
「ど、どうしましょう? みんな! どうしようコレ!!」
カナルはリザードマン達に相談するが。
「コレ、タブン、レベルアップ」
「クラスアップ」
「シュゾクヲ、コエル」
リザードマン達は何か知っているようだ。
「どういうこと?」
「リザードマン、タマニ、ドラゴン、ナル」
「レベルアップスルト、ナル」
カナルはリザードマン達の言葉を聞いて気づいた。
急激なレベルアップによる、クラスアップ。肉体が変化するときに起こる激痛は、すさまじいと聞いたことがあった。リザードマンは、ドラゴンを祖とする種族。度重なるレベルアップにより、彼らはまれにドラゴンに先祖返りすることがある。
多分ご主人様は、急激なレベルアップで苦しんでいるんだ。これは、どうしようもない。ご主人様が耐えてくれなければならない。
「ぐあああああああ。頭が割れるぅううううう!!!」
俺はのたうちまわり、丸くなっているダンゴ虫にぶつかって止まった。
俺はその後気絶した。




