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ダンジョン攻略第三回。
ミノタウロスや竜人、エルフが来る前に、一度潜ることにした。
今回も俺は潜ることにした。カナルをリーダーにして奴隷だけで潜ることもいいのだが、俺も潜る。ダンジョン攻略は危険が伴うが、自分と向き合う良い場所でもある。今まで惰性で生きてきた俺には、一番の充実を与えてくれる場所かもしれない。
まぁ何より、俺がいなけりゃこいつらの飯は、誰が作るんだって話だ。食料の管理がまるで出来てないからな。
ちなみにスライムの「ぶー」だが、こいつはカナルの胸の谷間が定位置になった。その為、ダンジョンにもちゃっかりついてきている。何の役にも立たないが。
そうして潜ること2日。転移門を使って300階層を潜っていた時だ。
「モンスター イル」
リザードマンのザイツが手を上げて止まった。
彼は前衛もこなすが、斥候として探知能力が一番高い。モンスターの反応を確認したんだろう。
俺たちはザイツの言う通りに停止した。
「カド、マガッタトコロ、イル」
今は入り組んだ洞窟の中にいる。すでに攻略された場所ではあるが、宝箱に関しては常にランダムで出現するし、レアモンスターもランダムでの出現だ。なので攻略された場所でも稼ぐことは稼げる。
俺たちはソロリソロリと、進んでいく。洞窟の角を曲がった所から、首だけを出して見てみる。
「なんだあれは」
見ると、大空洞の中モンスターとモンスターが戦っていた。
俺たちパーティーとそのモンスターたちとの距離は300メートル以上離れている。それなのに魔法攻撃による轟音がここまで響き渡っていた。
俺は瞬間に悟る。これはやばい魔物だ。超高レベルモンスターだ。
「そ、そんな! あれはリッチ!!」
カナルが言った。リッチ? なんだそりゃ。一般人から抜け出したばかりの俺は、魔物に詳しくない。
「リッチって? どんな奴だ? レベルは?」
「リッチはアンデッドの王です。レベルは1000超え。準魔王級の魔物です! あれはこんな浅い階層にいるはずがないのに……。ここから速く逃げましょう!!」
カナルは言うが、その準魔王クラスのモンスターと戦うモンスターがいる。それはいいのか。
「じゃぁ、あの骸骨? リッチだっけ? そいつと戦ってるモンスターはなんだ?」
「戦っていると言うよりも、ただじっと防御しているだけに見えますが……」
「カナルは分からないのか?」
「分かりません。巨大なダンゴ虫みたいに見えますね」
なんだか分からないな。ダンゴ虫は丸くなってじっと動かない。対して骸骨の方はなんだか杖を持って、魔法をぶっ放している。
炎や氷の玉をぶつけまくっているが、ダンゴ虫はまるで効いていない。うずくまって動かない。
一体何をしているんだ?
「全員、帰還玉の用意。あのダンゴ虫、気になる。連れ帰るぞ」
「え?」
カナルをはじめ、リザードマンも全員、目が点になる。何言ってるんだコイツ。
「あの、マスター?」
「動かないだろ? あの虫。だから一旦連れ帰る。もしかしたら高く売れるかもしれん」
金になりそうなら、連れ帰る。今回のダンジョンでは、金目のものがほとんど手に入っていない。一応魔物の素材だけでも数百万の価値にはなるが、これでは利益が少ない。黒字ではあるが、やっぱりいっぱい儲けたい。
「マスター!! リッチは桁が違います。多分我々がここに隠れていることもすでに察知しています! 襲ってこないのは、我々に興味がないからです! 出て行ったら、瞬殺されます!!」
カナルは珍しく声をあげた。どうやら、リッチは超危険らしい。まぁ見たらわかるよ。あの魔法の数々。
地形が変わってるしな。雷の魔法なんて初めて見たよ。食らったら即死だな。
しかしあのダンゴ虫まるで堪えていないな。魔法が効かないのかもしれない。
「カナル、俺には秘密道具がある」
「秘密道具?」
「竜の息吹という、一回だけの消耗アイテムがある」
ドラゴンのブレスを一回5秒間だけ放てる、恐ろしいアイテムがある。これは高級魔道具店で売っていたものだ。俺の切り札として買っておいた。
腕輪型で、呪文を唱えれば発動できる。すでに発動キーは設定済み。後は起動するのみ。
実はこれ、一個1000万もするとんでもないアイテムだ。
「そ、そんなものが……」
5秒間だけだが、その威力は本物。起死回生の一撃として、このアイテムは人気がある。金を持っている冒険者は必ず装備すると言われている。
「本当は身代わりの指輪が欲しかったんだが、こいつは一個1億もしたからな。5秒タイプの竜の息吹を買った。10秒タイプの奴は4000万だったから、こいつも無理だったけどな」
俺は自慢げに言った。
「それでリッチを足止めすると?」
「威力は上級ドラゴンの息吹に相当する。属性は火炎。多分だが、さすがの奴も足を止めるはずだ」
「上級ドラゴン……。確かに、リッチと言えど防御しなくてはダメージを負うレベルですね」
アンデッド系は炎に弱いと聞く。いかにレベルが1000と言えど、防御魔法を使うはずだ。その間は攻撃が来ない。ダンゴ虫を鹵獲するチャンスだ。
「じゃぁやるぞ。俺がカウントしたら行くんだ」
「分かりました。貴方達も良いですか」
無言で頷くリザードマン達。初めて死が近い戦闘だ。彼らも覚悟を決めたようだ。
俺はタイミングを見計らい、10秒のカウントをする。リッチは肩で息をしながら、魔法を放ち続けている。ダンゴ虫は微動だにせず、じっと丸くなったままだ。
そのままでいろ。そのままだ。よし!! リッチの魔法が途切れた!!
「ようし、今だ!!」
俺たちはバッと飛び出た。すかさず竜の息吹を発動、リッチに向けて照射した。




