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9

 俺たちは豚商人の案内で、スライムがいる小屋に来た。完全に馬小屋だ。どうやらこの馬小屋にいるらしい。


「ここです」


 俺はそこでスライムをみた。うず高く積まれた藁の上に、そのスライムは鎮座していた。


「ぶー、ぶー。ぶー」


 ぶーとだけしかいわない、灰色のスライム。手に収まるくらいの小さなスライムで、饅頭のような形をしていた。


「今は寝ているようです」


 寝ているのか? 目玉がないから全然わからん。ただ、饅頭みたいで可愛いのは分かった。女の子が好きそうな奴だ。


 カナルを見ると、目をウルウルさせてスライムを見ている。よっぽどスライムが好きなんだろう。


「このスライムがそんなに高価なのか?」


「あーいや、先ほどの20億というのは語弊がありまして」


 どういうことだ?


「20億ほどの潜在価値があるというだけで、実際の価格は1000万程度が良いところです。買いたたかれれば500万でもあり得ます」


「どういうことだ?」


「通常のスライムよりも弱いんですよ。超重力下の地底で力を発揮できるスライムでして。今は体を維持させるだけで精一杯みたいで」


 なんだ? 弱いのか?


「本来なら重力魔法という、失われた古代魔法を使うスライムなんですが、地上ではまったく使えないようでして。幼体ということもあり、普通のスライムより弱いです。多分木の棒でぶっ叩けば死にます」


 おいおい。そんなに弱いのかよ。スライムは物理無効が唯一の特性だろう。それがなければただの粘体生物だろ。


「国の研究機関が800万で買うと言ってきたんですが、孫からの贈り物でしたし、一応育てて、しかるべき相手に買ってもらおうと思いました。本当、一時期は大騒ぎになったんですが、このスライムの実態を知るや否や、みんな興味がなくなりまして。20億の価格は暴落しました」  


「んじゃあ、20億なんて最初に言うなよ。びっくりしただろ」


「申し訳ありません」


 豚商人は頭を下げる。


「じゃあいくらならいい? うちのカナルはとてもスライムが好きなようだ。大切にすると誓うし、誓約書を書いてもいいぞ」


「では、スライムに今までにかかった費用と、価値を考えまして、1000万でいかがでしょうか?」


「分かった。あんたがそれでいいなら、買おう」


「ありがとうございます」


 豚商人は頭を下げた。最初の態度が嘘のようだ。うーむ。こいつはいい奴なのか悪い奴なのか。それともタダの豚か。まったく分からん。


 俺たちがそんな会話をする中、カナルは灰色なグラビトンスライムを凝視していた。感動しているようだ。


「ぶー。ぶー」


 ぶーと言っているな。どうやら寝ているそうだし。まぁそれだけだ。人畜無害そうなスライムだし、とても戦闘には出せないだろう。飛空艇の中で大切に育てて終わりだな。


★★★


 俺たちはスライムを購入し、飛空艇に戻った。


 リザードマン達もすでに飛空艇に戻っており、感心なことに掃除をしてくれていた。


「オカエリ」


「マスター、オカエリ」


 可愛いくお帰りと言ってくるリザードマン達。笑顔っぽいので、街で十分に英気は養ってくれたようだ。


「ゆっくりしていてくれ。飯はあとで俺が作ろう」


 リザードマン達は「メシ!」「マスター、メシ、ウマイ」と言っていた。


 そういえばいつの間にか俺が飯係になっていた。ダンジョンにいた時もそうだ。まともな飯を作れないこいつらの代わりに、俺が飯を作ることになった。それが今までずっと継続している。


 一人暮らしの長い俺は、料理は得意だ。別にずっと作ってもいいが、面倒な時もある。これは料理が出来る奴隷を買った方がいいか。


 よし、次のダンジョンで金を儲けたら買うことにしよう。


「カナル。スライムは何を食べるんだ」


「何でも食べますが、肉が好きなようです。後は魔力の高い魔石です」


 肉と魔石ね。そうか。俺はスライムを見る。


 いつの間にかカナルの胸の中に納まっていたスライム。カナルの巨大なおっぱいの中にスライムは収まっていた。ぬくぬくとスライムはうたた寝しているようだ。


 俺は思った。


 なんということだ。


 俺ですらその谷間に入ったことないのに、今日来たばかりのお前に先を越されるとはな。やるなスライム。


「魔石か。ならこいつはどうだ? 飛空艇の燃料になる、合成魔石だ。かなり良質の奴で、そこらの魔石よりも純度が高い魔力がある」


 俺はたまたまポッケに入っていた魔石を、カナルに渡す。


 するとスライムは、カナルが手に取った魔石に気づいたらしい。いきなり起きて騒ぎ出した。


「ぶー!! ぶー!!」


 ちょうだい、ちょうだいと騒いでいるようだ。


「はいはい。今あげますからねー」


 カナルは子供をあやすようにスライムに言った。


 出会ったばかりだと言うのに、このスライムは警戒心がないのか? なぜこんなになつくのだ。 


「ぶぅーー」


 スライムは細い触手を伸ばし、カナルから魔石を受け取った。魔石は体全体でスライムが取り込み、消えてなくなった。


「ぶぅうう」


 スライムは大きな声を出した。満足したようだ。少女のような鳴き声なので、ちょっと甲高くてうるさいが。


「ご馳走様でした」


 カナルが代わりに言った。うーむ。スライムも案外可愛いかもしれん。俺も使い魔として買ってみるか?

 

 強いスライムはいっぱいいるみたいだし。よし、今度俺も買おうっと。



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