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 奴隷商館で数々の種族と契約し、誓約書もきちんと書いた。今回は前回よりも数が多いので、奴隷たちが手元に送られてくるのは、10日以上かかるとのことだ。


 はぁあぁ。やっと終わった。まさか奴隷を買うのがこんなに難航するとはね。まぁいいさ。面倒くさいことも終わり、俺とカナルは街で買い物を楽しむことにした。


 今回の奴隷購入だが、用意していた資金よりもずいぶん安く済んだ。竜人エルザが安く手に入ったことが大きい。俺は大目に食料と、奴隷たちの服や下着、消耗品を買っていった。カナルもみんなに必要な物ということで、食料品店ではカートにたくさんの肉を乗せていた。


 一通り消耗品も買い終わり、娯楽品や嗜好品をみんなの為にしこたま買うことにした。玩具店やアクセサリー店、魔道具店をはしごする。これがいい、あれがいいとカナルと相談しながら買っていたが、俺はふと思った。


「カナル、予定よりも金が余ったんだ。カナルも好きな物を買っていいんだぞ」


 するとカナル。太ももをこすり合わせて、もじもじしだした。


 上目づかいに俺を見てくる。巨人とも言うべきカナルの身長。歴戦の戦士を思わせる肉体は、まさに勇者。それなのに、可愛い顔で俺を上目づかいに見てくる。その破壊力は俺の心を射抜くには十分だ。


「高い物でも大丈夫だよ? 何が欲しいんだ?」


 えっと。あの、でも。などと言って、なかなか切り出さない。どうやら最初から欲しいものが決まっているようだ。


「なんだ。欲しいものがあるのか? あまり高いとすぐには買えないが、買ってやるぞ。言ってみろ」


 飛空艇が欲しいです! なんて言われたら、どうしよう。二隻目はまだ考えていない。いずれは買うかもしれんが。


 カナルは意を決したように言った。


「ペットが欲しいです」


 ペット? ペットって、ペット? 使役獣とかじゃなくてか? 俺の愛牛、アイリちゃんみたいなやつか? そうだよな、牛は可愛いよな。ペットとして最高だ。


「一応聞くが、本当にペットだよな。ただの動物だよな。使い魔じゃないよな」


「あ、動物じゃないです。そうなるとペットじゃないかも。多分使い魔です」


 うん? 多分、使い魔? 犬や猫じゃないのか? 欲しいのは魔物か?


「何が欲しいんだ」


「えっと。……その。うん!!」


 デカい体で握り拳を作った。大きな胸がバルンバルン揺れた。何かを決心したらしい。


「恐れ入りますが、申し上げます!! す、ス、スライムが欲しいです! ずっと、ずっと前から欲しかったんです!!」


「………………え?」


 すらいむ?


★★★


 俺とカナルは魔物商館に来ていた。


 奴隷商館でもよかったが、使い魔専用の魔物は、専門の魔物商館がいい。


 魔物商館はかなり小汚い建物になる。デカい倉庫にたくさんの牢屋を設置しました。そんな感じのところだ。


 売られる魔物たちはかなり危険な種類が多いので、調教師も必至だ。全員殺されないように、装備をがっちりとしている。


 俺たちは魔物商館に来て、スライムがいないか聞いた。


「あー、いるよ。いっぱい。どんな種類がいいんだ?」


 太ったハゲの商人。パイプを吹かし、煙をブハーっと吐いている。客に対してかなり態度が悪い。目つきも悪く、かなり感じが悪いが、こいつがこの店のオーナーらしい。


「金属系で、出来ればホーリーメタルスライムがいいです」


「ホーリーメタルか……。希少種だな。あんた、“通”だね」 


 なに? “通”とはなんだ?


「“通”だなんて。私はただスライムが好きで調べこんだだけです。実際は飼ったこともありません」


「ふぅん。そうかい? でも最初からメタル系で、ホーリーメタルを言ってくる奴はなかなかいないぜ」


 なんだか分からない会話をしている。俺が完全に置いてけぼりである。


「カナル。ホーリーメタルスライムってなんだ?」


「なんだ。お仲間さんはホーリーメタルスライム知らないのか」


 お仲間。カナルと俺は仲間か。まぁ、そうだな。俺も今回はスーツじゃないし、軽鎧の格好だ。冒険者仲間と思われても仕方ない。奴隷の証し、隷属の首輪もカナルにはつけていない。高価な奴隷契約、魔法印が体に刻まれているから問題ない。


 多分、奴隷の首輪がなかったから、カナルを一般人だと思い込んだんだろう。竜人は今や人間の生活圏で生活しているからな。街では滅多に見ないが。


「そそんな、仲間ではなくご主人様です」


「あ? じゃあなんだ。こっちの若い男はあんたの奴隷かい? 隷属の首輪がないが」


「ちち、違いますよ!! こちらの男性は私のマスターです!! 奴隷じゃありません!!」


 カナルはあわてて訂正する。


 俺がカナルの奴隷か。夜、ベッドの上ではそういうプレイもいいかもしれない。未だにカナルには手を出していないし、そろそろ手を出そうかな?


「こちらは私の主、マサト様です」


 モジモジしながら、カナルは答える。


 ぽかんとする商人。


「おい。もしかして聞くが、まさか、あんた竜人の奴隷?」


「そうです」


「ま、マジで?」 


「そうです」


 顔面蒼白になる魔物商人。はげた頭が青くなった。


「す、すいませんでしたぁーーーー!!」


 なんだなんだ。魔物商がいきなり土下座しだしたぞ。意味が分からん。さっきまでのデカい態度はどうした。


「大貴族様とは知らずになんと無礼を!! 申し訳ありません!!!」


 大貴族だと? 俺が?


「なにとぞお赦しを!! どうか、どうか今までの無礼、どうかお赦しを!! ここの魔物は好きなだけ持って行って構いません!! お赦しを!!」

  

 好きなだけ持って行っていいだと!? なんという太っ腹だ!! なんだか知らんが勝手に俺を大貴族と勘違いしている!! よし! 今がチャンスだ!! 契約さえすれば、こっちのもんだ!


「ふむ。俺に無礼を働いたのは赦してやる。俺は寛大なのでな」


 俺は偉ぶって言ってみた。


「ははぁーーーーー!!!」


 魔物商が地面に頭をこすり付ける。


 うーん。なんか気分が良いぞ。奴隷商館の時はこんなことなかったんだけどな。多分、向こうが貴族の顔をほとんど知っていて、俺が貴族じゃないってすぐにわかったんだろうな。


「で? ホーリーメタルスライムはいるのか」


「い、いません」


「ならどうするのだ魔物商。うちの子が欲しがっているんだ。ん?」


 俺は腕を組んで偉そうにしてみた。


「も、申し訳ありません。ホーリーメタルスライムは希少種で滅多に手に入りません。ただ!! ただ!! うちにはホーリーメタルよりも希少種がいます!! 運よく昨年仕入れに成功したんです!!!」


「それはどんなスライムだ」


「グラビトンスライムの幼体です」


「ぐ、ぐ、グラビトン!!! スライム!!!!!」


 カナルは驚きすぎて尻もちをついた。


 なんだそりゃ。グラビトンスライムってすごいのか?


「商人、私は魔物に詳しくない。説明せよ」


「は! そのスライムは超重力化の地底に住むスライムです。七大ダンジョンの一つ、地底王が住むと言われるダンジョン、「ガイア」にいます」


 ガイア。俺たちが挑んでいるダンジョンとは別のダンジョンだ。西の最果てにあると聞いているが定かではない。


「ガイアでは魔物の質が高く、攻略がまともに進んでいないダンジョンです。そこで高位の冒険者がグラビトンスライムの子供を手に入れてきたんです。滅多に出回らないスライムで、とても価値があるスライムです。それを俺がコネで手に入れました」


「話しを聞く限り、ものすごく高そうなスライムだな」


「はい。一匹20億します」


 20億!? ふざけているのか!! 


 小さな国を買収できるレベルだぞ!! どんな奴が買えるんだ!! まさかこの豚商人、20億も持っている金持ちか? 嘘だろ、こんな汚い建物で魔物を売っているんだぞ。20億持っているはずがない。


「お前が20億で買ったのか?」


「いえ! 違います。20億などという大金は持っていません」


 ならどうしたというのだ。


「その捕まえた冒険者は私の孫でして、祖父の私に譲ってくれました」


 なんだと!! この豚に孫が!? そんな年齢だったのか? この豚!! 一体何人の女を孕ませやがった!!


 孫がいたことも驚きだが、それもこんな豚にタダで高価なスライムを!? 


 世の中どうなってやがる!! 腐ってるぞ!!


「私の孫は私に似ず、とても強い冒険者でして。ランクは最高のZなんです。自慢の孫ですよ」


 なんだか急に孫の自慢話になってきたぞ。この豚の孫が最高の冒険者だと。驚きの事実が次々と降ってくる。


「もういい。そのスライム。さすがにタダではもらえん。一億でどうだ。さすがにそれ以上は出せん」


「マ、マスター!! 一億だなんて!!」


「あ、いや!! お金はいりません!」


「もういい。だまして悪かったが、俺は大貴族じゃない。ただの成金だ。かしこまる必要はない。頭をあげくれ商人」


 へ? という顔になる豚商人。


「悪かったよ。申し訳ないが、そのスライム、一億でダメか?」


 貴族じゃない? そうなのか。ああよかった。首をはねられるかと思った。商人はホッとしていた。


 俺は思った。無礼を働いただけで首を刎ねる貴族。どんな奴だそれは。極悪すぎるぞ。そんな貴族はすぐに国民に淘汰される。


「あ。えーと。とりあえず、そのスライム、見てみますかい?」


 商人は俺への態度が軟化したが、それでも敬語を使ってきた。金持ちというのは認識しているようだ。


「すまんな。とりあえず見せてくれ」


「へい」

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