あぁ、女神さま
屋上にて。
「み〜こ〜とぉーー」
「わかったから。女神、抱きつくなって……」
「……こーみだって、ぇぐ。っつ、えぇぇん」
「ゆうな、どうにか……」
「ちゃんと、見てますから。もうちょっとでイエロー(カード)でますから」
「……っくぅぅ。私って、ぇええん〜」
「ゆうな、いまおれ動けないから。購買で、何か、飲むもんでも買ってきてくれ。後で立て替えるから」
「だめ。今目を離すとか弱い仔羊さんは狼さんに食べられちゃいますから」
「ちっとはおれを信用しろよ……。わかったよ、おれが行ってきます」
「ライチシェイクにピュアバーガー。セットで」
ピュアバーガーって、あの駅前通りの、えぇっと、あぁあの店で買ってこいって事か、うん。あそこのライチシェイクは美味しいと評判の。
「ってどこまで行かせる気だよ……。はいはい、女神さんはコーヒでいいか……」
やっぱ心を静めるには珈琲が一番だよなぁ、カフェイン入ってるし。
……はて?
カフェインって興奮作用じゃぁなか(ry
「いてっら」 「…お 願ぃ、し…ます」
以下の理由から私は本来学校内にいるべき時間帯にも関わらず、ファーストフード店に行っていました。
駅前だから、結構往復するのに時間がかかった。コーヒーが冷めないうちに、走って帰りましたよ、ええ。
「行っちゃったね、命くん」
「はい……」
「ちょっとだけ、落ち着いたみたいだね」
神海ちゃんにも、こんなことってあるんだね。
「昔は……、あんな性格じゃ……なかったんです。今だって……、おかしくなるのは、生徒会の……時だけで、本当は、とっても……内気で、やさしい子、なんです……」
へぇ〜。
確かにぶつかった時も、そんな悪そうな人じゃなかったし。
「……はは、私って、最低ですよね。はは。彼女が、言ったこと、全部本当の事、なんですよ……」
やっぱり……。
赤坂さんが話してたことって本当のことだったんだ。
「嫉妬心で、大好きな親友から、テニスを奪った。最低の、最低な……」
んー。完全に自分を追い込んじゃってるよ。ここは、私が何とか、できるかなーぁ。
「彼女が、本当にテニスが好きだったなら、続けてたと思いますよ。どこも怪我してないし、上手いんだったら、一人でやったり、また新しいペアを組んだりしたりして続けていたと思いますよ。
多分、彼女は本当はテニスが大好きだったのと同じくらい、もしくはそれ以上、あなたが好きだったんじゃないですか?」
「はっっつ、ぁぁぁ……」
「神海ちゃんも、辞めちゃったんだよね。
本当にテニスだけが好きなら、罪悪感なんて目も向かないはずだよ……」
「でも、私は……。本当に、テニスを」
「ぅうん。二人ともテニス、大好きだったと思うよ。
私が言いたいのは、二人はとってもお互いのこと……。
……もう一度、やり直せるんじゃないのかな。
もう、いちど……」
「……はいっ」
これで、私の役目は終わったよ。じゃぁ私は今日は疲れたから。とにかく疲れたから。眠れなくてもいいから、主電源、切るよ。
「ちょっと、……今日は、色々あって、疲れちゃった……。
…っふはぁぁぁ、ちょっと眠らせ…zzz」
往復して。シェイクが更に良い具合にかき混ざった。裁きの声が聞える、あの、断罪の。
よくあの三人はバトってくれているものだ。普段ゆるい部活だがこういう時にはやっぱり、団結力は強い。(一人即戦力にならなかったおれも含めといてくれよ)
おれは全くもって何もできなかったことが悔やまれる。驚くべきほどに、無力だった。
ふわふわと宙を舞っている錯覚に陥った。ひたすらに何もできず、ただその状態が心地良いとさえも思って、しまったよ。
勿論、女神さんにも早く元気になって欲しいし、砂月ともまた仲良くやって欲しいと思ってる。
ただ、人間の弱い部分を見れてちょっと救われたような気がした……。
昨日まで完璧だと思ってた人たちの、もろい部分が少しだけ心地が良かった。劣等感が少しずつ、別の何かで満たされてゆく感覚が、感覚が。なんだか、人間と……。
「tっぁぁっぁああ。
!?
疲れてるのか、おれ」
頭から熱ーーいコーヒーをぶっかぶる。頭から湯気がたち、それらは次第に消えてゆく。
それにしても熱いな。うん熱い。まあ、しょうがないか。これでおれも正気に戻ったわけだし。
驚くべきほどホットな今のおれを、だれが止められようか?(いや、だれにも止められない。反語)
しばらくして体裁を整えてから、屋上へ向かった。
ガチャりっと勢い良くドアを開けるて、言いました。
「お待たせ〜」
「あっ、おかえりなさい」
「うん、まだ眼が赤いけど、一応回復した訳な。
ゆうな、は眠っちゃったか」
「はい。
……くんくん。なんか、命くん、コーヒーの匂いが」
その様子がちょっと面白くて吹き出してしまいそうだ。
「くっうっ、そんなにくんくんっとかがなくても。
うん。コーヒー買ってきたよ」
屋上のベンチに腰をかける。屋上にはベンチが二つあるのだが、隣の一脚はゆうなが気持ち良さそうに寝転がっているため女神と同じ側に腰かけた。
「そうじゃなくて、命くん本体の方からです」
本体?
あぁ、さっきコーヒーかぶったからか。一応それなりに対処したんだけど、女の子の嗅覚は鋭いなぁ。
「ん? あぁ……」
まぁ、コーヒーぶっかぶりましたっていう理由を、どう説明しようかな……。
「本当ですって。……ほら」
女神がぐっと距離を寄せる。
目はちょっと腫れているが、何だかその仕草がいつものキャラとちょっと違っていて、そのギャップが何とも可愛かったり、何なり。(←変態)
おれの腹に顔を近づけ、匂いをかぎながら、女神の顔はおれの上半身のラインを、優しくなぞるように沿っていった。
「分かったから。そんなに近づくなってば」
お互いの目線と目線が触れ合った。ちょっとの刹那、お互いに見詰めあっていると、再び女神はおれから発せられるコーヒー香の波源の探知を試みる。
またしばらくおれの身体をスライドする。
「あぁ〜。
見つけましたー。匂う場所、発見です。
命くんの髪からコーヒーの香りが…」
頼む、なっ。
あのな、こんなことあんまり考えたくはないんだけど。今、目の前にすっごいカップの豊…(自主規制)、爆…(同様にして)があるわけですよ。で、おれもやっぱりね、あの……、目を、つぶらざるを得ないのですよ。
神海はふっくらとして、ぽわ〜っとしてて、それでいてなんだかまっすぐなところもあって。
(注:暫くこのような意味不明な文章が続きます)
普段は優しいけど頼れる姉さんキャラで。でも、ちょっと弱いところもあって……。女神とか、からかった名前で読んでも、飽きずにツッコミを返してくれるし。そういうところが、ちょっと可愛くて。
愛嬌は絶やさずに、誰にでも表裏無く、あの女神の微笑を……。
こんなおれでさえも……。
「……ぷっ。目、開けて良いですよ」
へ……? いいんすか?
「ぃえいえ。
私、この胸のせいで、男子からいやらしい目つきで見られるのが、あんまり好きじゃなくて。中学生の頃から、ずっと肩身の狭い思いをしてきたんですよ。
でも、命くんだったらなんかそんなこと、どうでもいいかなって。他の男子とは、ちょっとだけ違うかなって……」
汗、々の谷間におれFREEZE
「違うところって?」
「無理して目をつぶってるの見てたら、なんだか、ちっちゃい子供みたいで、おかしく見えて。
あんまり、真剣にぎゅってしてるもんだから、だんだん可哀想に思えてきちゃって……。
よしよし、ぼくー、よく頑張ったね。えらいぞ〜。良い子いい子だぁ、なでなで」
「……からかってますよね? 完全に」
「むうぅ〜。まぁ、結構面白かったので良しとします」
良しとされた。
「あの、おれ、こう見えてもドジだから、コーヒー、頭からぶっかぶちゃって」
「ふふっ。本当に、ドジっ子ですね〜。それで、他に何かあったんですか?」
「えっ?」
「だって命くん、最近、ちょっと……。ううん。だいぶ、辛そうな顔してるから」
そうか、おれも疲れてるのかなぁ……。なんだか、最近どうも調子がおかしくて……。自分が自分から抜けていって、操り人形の様に他の誰かに動かされているみたいだよ。
悲しみも、絶望も、感覚もなく、ただ何かに流されるかのように。
「今度は、命君が、泣いてもいいんですよ」
女神さんは鎖骨のあたりにおれの顔(のでこの辺り)を優しく引き寄せた。
天使や、この子は天使。いや、女神か。なんだか、柔らかくて、やさしいな。
やっぱり、女神さんって不思議な人だな。
おれっ、おれ…。
「っっ。ぁぁっっっっっ。ぅああああん」
つい、頭がぼーっとして、心の曇が少しだけクリアに晴れていく気がして、気が付いたら。
女神さんを抱きしめていた。
「……ホントウニ、ドジッコデスヨネ」
「へ?」
「ウシロデスヨ、ウシロ……」
「淘汰ぁー、そんなんじゃ死なないって」
「そ〜か、命は名前の通り生命力だけは凄まじくしぶといから文化包丁じゃ死なないよなー。ごめんごめん。う〜ん。じゃぁぁ、ふふふふふふふふ、ぁあははははは。クレー射撃部から一丁借りてくるか」
「ぁあ。hahaha! ya only to shoot this nerd.
淘汰、ゆっくり行ってきていいよ。その間にたっぷり調理しておいてあげるから」
「……。割りと早く終わったな。いや〜よか」
「ふぁあああああ。みことく〜ん。だめだよ〜、ゆうなが寝てると思って、神海ちゃんに手を出しちゃ……。
ぁは、あはははははははははははははははは。」
「もしもーし? 話、通じてますか?」
やばい、金属バットを持った天文部員三人に囲まれた。勢い(想像を遥かに絶する)にのまれて足がすくみ、地面にへたりついてしまった。三人は円形におれを囲み、こちらがそれを見上げる。分かるか?、この恐怖が。尋常じゃないぞ。
わかるかぁーー。
「ぉい。落ち着けって、誤解だって。な?
みんな、眼がおかしいよ。正気に戻ってくれ、一生のお願いだから。ねっ」
「命くんの一生のお願いは、この前使っちゃったでしょーー」
「主文、被告人 水上命を極刑に処する」
「控訴します……。ってぎゃぁぁああああくぁwせdrfgtyふじこlp」
「……す、ス…ピード…執…行」
「ぉおおお〜い。例のブツ拝借してきたぞ〜」
「待って、それはまじでやばいって……」
いや、それふつーに本物だろぉおおおぉぉおぉおおおおおおおおおお
「たあああああすすううううううううけええええええええてえええええええええ」
キァラクター詳細紹介
南 神海
みなみ こうみ
東桜高校テニス部→天文部
17歳。高校ニ年生。
性格:やさしい
特徴:髪は長く、結っている。
男子からの人気も非常に高く、願えば週で1ダースの男子とデートできるとの伝説がある(初期設定)。
打ち解けてある程度仲良くなると、特別にフラグがたたなくてもでれでれ出来る。
どこにでも顔が利く。
ハヤテのごとくのマリアさんを意識して作られたキャラクター。
「砂月、また、一緒にテニスしようね……。約束だよ」