school days
「これから、生徒会総会を始めます。
まず最初に、会長及び諸委員長の委任を行いたいと思います……」
全校生徒1500人ほどが講堂に集結し、直接民主制、つまり挙手する。議題は様々だが、会計中心になる事が多い。拡声器の音が妙に耳障りだった。
「新委員長挨拶」
「今学期委員長に就任した、赤坂砂月です。よろしくお願いします」
一斉に拍手喝さい。
(たとえだれであろうとも)新委員長就任を快く思わないのはわが校天文部の定めだろう。
なんやかんやで、45分弱が経ち、いよいよ時が来た。It is time to go.
大丈夫だ、こちらには女神さんがいる。
無理いってお願いしたら、快くお供してくれた。
「ええと。今学期天文部の活動報告、及び会計報告を行います」
「待ってください。実質的になんら活動を行っていない集団を部活動と認める事は出来ません」
いきなり、アウェーの洗礼か。ってか、予想はしていたが……、やっぱ赤坂さん、人が変わりすぎ。
これは、……やばい。昨日のテンションで行くと、……消されるっ。
「ぐぅ……。ですが、……しかし活動報告のレポートがここにあるわけですし……」
「それは、ただの専門書のコピーです。苦労しましたよ、原本が絶版だったんで、隣街の図書館まで行って事実確認をしてきました」
ざわざわ、とどよめきの声が聞える。おい、そうなのかよ。ひでー部活だな。マジかよ、早く潰せよ。いいぞ、委員長。
など、全くもって理解不能な宇宙語が聞えるが、私の耳はそれを右から左へ受け流す。
「しかし、こちらとしても活動は行っているわけです」
「うるせー。おまえら貴重な予算を何だとおもってる。そんなくだらねー部につかうくらいだったらうちの部によこせ」
じゃあ、うちも、うちもと次々にわだかまりが広がる。いっそのことダチョウ倶楽部みたいに、じゃあうちの部にって言ったら、どーぞどーぞって皆さん引いてもらえませんか?
「静粛にお願いします。今発言権がある者は天文部関係者と委員会代表のみです」
「とりあえず、会計の予算案は?」(会計委員長)
「はい。8万円になります」
ふざけるな、それだけあればボール何個買えると思ってる。と野次が飛んだらしいのだが
私はこの人たちが話す言語を全く理解できない。
「一応、文化部なので聞いておきますが。文化祭での催し物は?」
「プラネタリウムです。綺麗ですよ。ちなみに会計予算の大本はこれです」
「だいたい? もう一度正確にそれにつぎ込む予算を教えて下さい」
「はい、ぇえっと、ですね。6万円弱です」
「弱? さっきから日本語のあいまいさをうまく遣おうとしていますが、予算案は学校の経費に関わる重大な決定事項です。変更があった場合は随時受け付けますので、正確にお願いします。」
「あと、変更があった場合はレシートなど証明できるものを持ってきてもらえると嬉しいです」(会計)
「だいたい、文化祭用の即席プラネタリウムだったらもっと低コストで済むはずでは?」
「それは、……あの。えーと」
知っているからこそなおさら反撃ができない。
「いえ、あのですね。文化祭と言うのは、文化部にとって一年に一回の魅せ所です。わが校に入学を希望する中学生、保護者の方々もきっと訪れます。一番安くすれば、もう少しだけ価格を抑えられるのです。しかし、私達はもうちょっとだけ質の高いものを提供し、既委員会生(全校生徒)も含めよりいっそう学校への興味を集めていただきたく……」
「綺麗事なら、誰にでも言えます。私は活動及び予算会計のずさんさを指定しているのです」
「…ぐぅ……」
ぐぅの音しか出ない。いずれそれも、もしかしたら部も、消えてしまう。
「は、い、ぶ。は、い、ぶ。は、い、ぶ…」
もう、四面楚歌。特に運動部の腹のそこから響き渡る、声が邪魔だ。
首を振って、ゆうなをみると、がっくりと再起不能状態。なみだが瞳の表面まで覆っていて、今にも流腺が壊れそうだ。おい、大丈夫か。ハンカチで目をおさえてやる。
振り返って女神さんを見ると、微かながら、笑って、る。
「いいかげんにしなさい、砂月」
え?……は? とりあえず女神さんが起動したのは分かった。
「……神海。むかし馴染みだからって容赦しないわよ」
再び え?……は?
「ええ。どうぞ」
「このぼろぼろの改竄未遂会計予算報告書で、全校生徒の過半数の承認とろうっての?」
「天文部の文化祭の催しものはまだほかにもあります」
「え? そんなでまかせ今頃認められるはず無いじゃない……」
「屋上の開放や豚汁の配布。その他学園ライブとして音楽部と合同して、あの有名ロックグループKingsを連れてきたいと思いま〜す。お望みなら、水着ショーもやっちゃいます〜」
ざわざわと、さっきとは明らかに違うどよめきが聞えた。流石女神さんだ。
「そ、そんな。ばかな、とっさのでまかせよ、そんなKingsなんてくるわけ……」
「あら、知らなかった? ドラムのヒデ、この高校出身なのよ。依頼したら、この高校には大変お世話になったからって。快く引きうけてくれたわよ。友情でね。そしたらチームのみんなもヒデが行くならって」
「そんな、……。だったら、水着ショーなんて破廉恥な事、出来ません」
「だったらって……。
破廉恥って。相当ウブなのねー。水着ショーは生産会社からの依頼があって
知っての通りうちの学校って水泳部をはじめとしてスポーツで優秀な成績を修めているから、送られてくるモニター商品(主に競泳用、時々遊泳用)があとをたたなくて……、
それでいっそのこと中小規模の会社と連携してショーをやろうかって水泳部とかスタイル良い女子に話を持ちかけたら、OKが出ました」
「そ、そんな……」
いつのまにか風向きがかわっている。(以下、聴衆の声を抜粋)
ねぇ、Kingsだって。絶対承認しようよ。
いいよな〜、水着。
俺は神海さんの水着姿を是非とも。
「いいですよ。私も参加しましょうか」この一言で、完全に勝敗は決したな。
「では、承認を取ります……。天文部の予算会計案を承認する人は挙手をお願いします」
分かってはいた事だが、完全勝利。不可決者は、女子若干数。男子のおおむね10%。
やりましたー!
読者のみなさんついにやりましたこれで風前の灯だったこの物語も天文部の予算案と活動報告が承認されたことで部の存続が確立され執筆し続けることができました強制終了を阻止することができました故にまたゆる〜い部活動を続けることができるわけですよこれが〜やっぱり生きているって素晴らしいですよねそうともあなたもやっぱりそう思いますよねみずかみみことは今日やっとその実感を得ることが
キィー、
と独特のあの金属音が響いて、その殺那、僕達が共有していた空間は沈黙に包まれた。
「……、よ、ね。そ〜よねー。あは、あはははははははははははは……」
ん?
ナンデスカ?
いきなり笑いだした砂月さん。(さっきまで放心状態だった自分の事は棚上げ)
「………ちょーっとい〜ぃ。神ぉ海ぃ?」
「あらー、何かしら? もう承認は終わったわよ」
「……昔話、しなーい?」
「どうしたのぉ? 冷静さを失うなんてあなたらしくはないわね。
今は生徒会総会中でしょう。個人的な事を話す場所じゃないでしょ?」
流石、余裕がある。でも、ちょっと顔色が、一瞬だけ悪くなったと感じたのは。おれだけだろうか。
にやり。と不気味な口元の微笑みを女神さんは受け取った。
「……私達、今はこんなんだけど……、昔は息ぴッたしだったわよねぇ〜」
「やめなさい……」
「テニスやってた頃、いつもダブルスで地区大会の優勝候補だったじゃない。
調子良いときは、全国に何度か顔も出して。
高校に入学した時も、期待の新人として、どんどん上達して行ったわよね」
「やめて、……」
命令形でなくなってしまった。声はか弱くなってしまい、明らかに動揺している。
外野は止めるものが現れるどころか、こぞって聞き耳を立てている。何とか、しなくては……。
「今じゃどっちもがテニスを諦めた……。ねぇ。どうしてだか、わかる? 水上くん」
「えっ……」
この問いかけに、応えてはいけない。そう本能的に分かったが、拡張器からの声は続く。
「秋の練習大会が終わって一区切りついた頃。パートナーが何を思ったのか、相方に嫉妬しちゃって。
私が、ドロップショットが上手い男子の先輩にちょくちょく教えてもらってたこととか、相方の方が若干テニスの技量が優れていることとか。
初めはねちょっといたずらをする気分だったらしいけど、その先輩に、私のでまかせの噂流してね」
「ぁぁあああああ。やめてー」
「その噂、どんどん人から人へ伝染していってね。その子、遂にどこにも居場所がなくなっちゃったの」
「ぃやぁぁあああ。許して……」
何とかしなきゃ。なんとか。でも、どうすれば?
そうだ、コードを抜こう。これで拡声はされない。
「遂に、その子。赤坂 砂月は仕舞にはテニス部を退部してしまいました。
あははははは。さいっこーよねー。
知ってる?
その相方を退部まで追い込んだ、嫉妬深いそのパートナーのなま……」
「もう、そこらへんにしといてやれ、砂月」
要 直喜だ。どうして、ここに……。
そして、おれは、なにも、して、いない。なにも、できなかった。
「やだ。やだ〜。
だってそいつの、その子の、そのパートナーのせいで……、
大事な委員会の初仕事だってその子のせいで……
その子のせいで……。その子のせいで……」
「なぁ……。こんなことするのって、虚しくないか?
俺は、お前がこんなことをするのがひどく気に入らんのだよ」
「……。要くんがそういうんなら、止めます」
えっ?
えぅぇぇぇぇえぇ!
何が、何だか、分からない……。
会長、まだ総会が続いてるのならば一つ聞きたい質問があります。
な、ん、で?
「総会は一旦中止したいと思います。残りの議題は、また日を改めて行いたいと思います。それではありがとうございました」
極めて早口だった。
およそ1500人分のぽかん口、こんな人数のあほ顔を初めて目のあたりにした。
「……っく、っく……」
「保健室、行こうか?」
「いや、駄目だ。こんなことがあったらじきに野次馬の巣窟になる。ちょっと寒いけど、屋上に行って、鍵、閉めちゃおう」
「……っく、んぁあああああー」
「淘汰、永次、亜依も手伝ってくれ」
「……いや、俺と永次は委員長をボコッてくる」
「だめ……。駄目だ。お前たちが今、問題行為を起こせばせっかくの神海の健闘が水の泡になって……」
「じゃぁ、あいつが今やったことは、問題行為じゃないのか?
このままじゃ、揉み消されてしまうんだぜ。
?俺達、部員1人が苦しんでいるときに何もしてやれないほど強さを求めるエリート部活動だったけ?」
「…ったく。さーねぇーなー。
じゃあ、絶対に暴力を使わないこと。実力行使なんて格好つけないで、泥臭くいこうぜ。
生徒会とか何とか、公の集団は理論的な攻撃に意外ともろいんだ。非暴力主義が一番積極的な抵抗活動とガンディーさんも言ってたことだし……。
いっちょ行ってみるか」
「いや、お前はいらん」
「そうだ、バカ。
命、youは女子に弱すぎ。
Even if you are there,you cannot say anything.
(そこにいたって何も言えないだろ)」
「…お前は、屋上に行って女神さんを慰めてやってくれ。ちなみに、この隙に彼女にしちゃえ、とか考えてたらフルボッコだから。そこんとこよろしく」
「……ったく。やっぱり男子だけだと、何か印象悪いから、亜依も行く。やっぱ女子がいたほうがやりやすいでしょ。
ゆうなは、事に乗じて命が神海にエロいことしないか見張ってて」
「えっちなことしないように見張ってます」
「っておい。そんなに信用出来ないか……」
「……、ひっく。……くすっっ。……ひっく」
ちょっと笑ったな。
じゃぁ。屋上に行くか。戻ろう、俺達の原点へ……。
キャラクター詳細紹介
赤坂砂月
東桜高校第X期生徒会会長。
性格:普段は柔和。
特徴:「一応」吸血鬼の彼氏、要 直喜といろいろあるが、本作ではあまり突っ込まない。
「……なおき、くん…?」
第二話完筆にあたって。
ぃや〜。苦しいですね、展開が。
今後、あり得ないほどに話が破綻していくので、そこはご愛嬌ということで……。
(ごめんなさい)
ではでは……。