長めのプロローグ7
長めのプロローグ1 書き直しました。
長めのプロローグ2 加筆、修正しました。
「ただいま、お兄ちゃん。会いたかった。スッゴク会いたかった。ずっと会いたかった。ホント、ひさしぶり。元気だった?僕の事分かる?司だよ。」
一気に言った女の子は頭を擦り付けていたが、乾いた笑い声をあげている俺に不満気な目を向けた。その俺は今、見たものを処理しきれずそんな女の子の事もいきなり入って来た妹にも反応できておらず、妹は女の子と俺に苛ついた顔を向けていた。
「あんた、家族いるのに女つれ込んで何してんのよ。」
耳に入ってきた低く冷たい妹の声にようやく固まった頭が動きだした。今の俺は女の子に抱きつかれた状態で上目使いで見られている。女の子は俺の肩ぐらいに頭がくる程度の背丈でボブカットというのか金色の髪を短くしていた。着ている服は白いブラウスの上にベストの丈が伸びた様な飾りの無い白色のワンピース。膝下までのそれから見える足元は白いタイツ。
白色と金色に包まれている女の子は日の光りでさらに輝いて見えた。そして抱き締められている感触があるという事は女の子は幻覚や幽霊のたぐいでは無い。なら、さっきのあれは現実にあったんだろう。いや、まだ夢の中にいるかもしれないけど。
俺は軽く女の子の肩をたたき少し離れてもらう。
「まずは君からだ。君が話をしてくれると七歌にも説明しやすくなる。」
正直、俺もまだ消化しきれていない。説明が欲しいのは、七歌だけではない。
「君はさっき、自分の事を”司“って言ってたな。」
俺がはっきりさせたいのは、それだ。この子が司を騙っているなら、女の子だから、と優しくする事は出来ない。喜んで家から叩き出すだろう。今それをしないのは、さっきの不思議な光景が脳に焼きついているからだ。
「うん、僕、司だよ。」
「ハア~?司ぁ~?なに言ってんの?司は男の子なのよ。お、と、こ、の、こ。分かる?あんたは女の子でしょう?」
女の子の言葉に七歌が食い気味に返す。女の子がムッとした顔になる。
「ナナカねーちゃん、うるさい。」
ぼそっと呟いた。
「僕が男だなんて言われなくても自分で分かってる。全部、説明するから少し黙って。」
「なによ、あんた。女の癖にボク、ボク、って。なに?ねらってるの?」
「イチイチ、うるさいんじゃない?ナナカねーちゃんのせいで全然話できて無いんだけど。」
「ハア~?人のせいにするんだ?それにナナカねーちゃんって、あんたに呼ばれる筋合いは無いんだけど?ナナカねーちゃんって呼んでいいのは司だけよ。あんたじゃないわ。」
卓球の打ち合いの様に言い合った後、睨み合う二人の頭を叩き。懐かしい気持ちが沸き上がってくるのを感じた。
アイツも七歌と、いつも口喧嘩をしていた。俺はその度にスナップを効かせた平手打ちを二人の頭に叩きこみ。二人は同時に俺を見て膨れて。次に出る言葉は。
「この子が悪いのよ。」
「ナナカねーちゃんが悪いんだよ。」
妹の七歌を発音のおかしいナナカと言う事、タイミングが揃った言葉のやり取り。身長も性別も違うが、アイツが戻ってきた様な安堵感は張り詰めていた空気を融かした。
「七歌、まずこの子に説明してもらおう。」