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いとこは聖女様。  作者: 空気鍋
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確執だらけのメインパート2

まだ、見慣れない姿の司が聞き慣れない言葉を出した。

「大神官」、「大公」、「爵位」、「貴族」、「陰謀」

意味が分かるのに意味が分からない、その言葉は俺の頭の中で踊っている。まるで英単語帳を見ながら外国人(英語の国の人)と会話しているような感じだ。

俺が黙っていると薄青いローブというのだろうか? 動きずらそうな服を着た司は両手を振って”大変“をアピールした。


「お兄ちゃん、大変なんだってば。」


俺の腕を引いて背を伸ばした司は顔を近づけ“困った顔”をしてみせた。昔は俺の胸ぐらいだった司が肩ぐらいまできている。その事にどぎまぎしながら、取り合えず頷いてみた。


「もう、お兄ちゃん。大事な話なんだよ。」


司の頬がプクっと膨らむ。少し突き出た唇に目線が向かい。

‐いや、待て。俺、今、何。

目線を意識して動かすと今度は剥き出しの二の腕や豊かな胸の谷間に目線が行き、慌てて上を向いた。

‐天井が落ち着くって……俺って……。

ぐっと目を閉じて司を離す。


「分かった、司。……いや、なにも分からんことが分かった。初めから説明してくれないか。」


‐このままじゃ不味い。なにが不味いのか自分でも分からないのが、なんだか不味い。

俺の意思に反して立っている事が出来なくなりベットのへりに腰掛け、司には離れた所にある椅子を勧める。司は不審げに椅子に座って


「セツメーかぁ。セツメー。」


しばらうなってから話しだした。


「まず、みんなに爵位を授けよう、と提案したのが大神官と4大公の一人で、大司教っていうのがミルソナ侯爵の言いなりになっているんだ。」


4大公っていうぐらいだから4人いるのか? ミルソナ侯爵が大神官を操っているのか。


「ミルソナ侯爵はポートプルー伯爵に借金(懇意)していてポートプルー伯爵に便宜べんぎを図っているんだ。」


ポートプルーってやつは金持ちなんだな。ミルソナ侯爵ってのは良いように使われている訳だ。


「ポートプルー伯爵はグフッグフッって笑うイヤなやつで、取り巻きにドミンソン伯爵とソラマチ伯爵がいるんだ。」


うんう……ん? 伯爵が三人になったな。


「ポートプルー伯爵の手下にイリキス男爵とオーディナ子爵がいてこの二人が魔王軍と戦っているのに邪魔をするんだ。」


ほうほう。男爵と子爵。


「力のイリキス男爵、技のオーディナ子爵って感じで元々、傭兵団を率いていただけあって統率力もあるし、みんな、スゴく苦労して戦っていたんだよ。」


うむ。伯爵が消えたな。


「男爵も子爵も魔王軍と戦っている僕達の邪魔をしたのにミルソナ侯爵に匿って貰っていて表に出てこないし。」


愚痴が出てきたな。


「スッゲーっイヤなやつでだろ? だから、そんなやつの言いなりなっている大神官もイヤなやつなんだ。」


おおー。成程、ここで大司教が出てくる訳だ。


「分かった? お兄ちゃん。」

「分かるかっ!」


説明を終えて得意気な司の確認の言葉に被せるように突っ込む。元々、説明するのが苦手だったが、これは酷すぎる。だが本人的には上手く説明出来ていたつもりだったようで


「お兄ちゃん、なんでわかんないんだよ~。」


その場で大きく足踏みをする。

おおー。地団駄地団駄じたんだじたんだの意味が良く分かる。てか、あの説明でなにを分かれと……。ああ、司が大神官を嫌いなのは分かったぞ。けど、司は”聖女“な訳だから大神官はいわば上司に当たるんじゃ?

司がそうやって騒いでいると


「うるさーい。なに、騒いでいるのよ。」


高校の制服を着た七歌が部屋に入ってきた。

七歌がサボりなんて珍しいな。


「七歌、お前、学校は?」

「体調不良で帰ってきた。」


七歌の顔はしかめられている。良く見ると脂汗も浮かんでいた。


「あぁ。体調不良《あの日》ね。」


女と暮らしていると日によってイライラしてるのが分かる。その日が女の子特有の日と知ったのはいつだったか……。そんな日に下手な事をすると全力で八つ当たりされるからな。確かに七歌は前回きた日から、ざっと計算して確かに、そろそろだよな、と頷く。その俺に高校指定の革鞄が飛んできた。


「なんで、あんたが計算してんのよ! しかも、なんで当たってるのよ。」


怒りに満ちた赤い顔の七歌が力任せに投げつけたという事は分かるが何故、怒っているのか。


「うわー。……お兄ちゃん、うわー。」


司も俺を凝視しながら、すすっと椅子ごと離れた。七歌も訳分からんが司まで。俺がなにをした。

理不尽な(ゲセヌ)

やがて司が大きく息を吐いて立ち上がる。


「いいですか。お兄ちゃん、これから大事な、だ、い、じ、な、お話しをします。……正座です。そこに座りなさい。」


年上ブリッコの司も久しぶりだな。

そう思いながら半ば条件反射で司の前に正座する。こんな時の司は仁王立ちで腕を組み俺を見る。小学生の頃の司は背伸びしている感じで可愛かったが実際に成長した今は威圧感が半端じゃない。七歌は司に庇われるように座って暗く見開いた瞳で俺を見ていた。


「お兄ちゃんは乙女心を分かっていません。そもそも、お兄ちゃんは昔から乙女心をないがしろにし過ぎです。……。…………。」


いや、オマエは男の子だし。


「……。お兄ちゃん、聞いていますか。」


聞き流していた俺に前屈みになって顔を近づける司。”んー。怒っているんだゾ“と言わんばかりのしかめ面と、また覗いてしまった谷間と体の奥底に響く体香カオリ

‐こ、これは良くない。……し、鎮まれ、俺の…………。俺って変態なのか? (男の子)に反応するなんて。


「司、司……ちょっと。」


黙って俺を見ていた七歌が不意に司を呼んだ。そのまま小声で言い合いを始めた。


「マズイって…………。アイツ……。さっきも胸を…………。」

「……え? ええっ? ええええっ!」


司は俺をチラチラ見ながら、やや距離をあけた。その行動と漏れ聞こえる声でなにを話しているか見当がつく。

マズイ。

七歌が俺を見て司の耳元で何かを言った。


「……ふえぇぇぇえっ!」


一際ひときわ、大きな声が司から出た。司自身も驚いたのか自分で自分の口を押さえている。七歌も”馬鹿“って顔で司の口を押さえた。

……ちゃ~んす。

この瞬間タイミングに賭ける。話しをうやむやにするんだ。


「七歌、司が大変なんだ。」


だから話しを聞いてくれ。そう続けようとしたが。


お兄ちゃん(あんた)が言うな。」


二人同時に突っ込んできて俺もその言葉には納得してしまう。

足がしびれてきて()正座を崩せない俺は項垂うなだれるしかなかった。

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